悪役令嬢の味方をしたら追放されました

神崎 ルナ

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44.四十層

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「「「は?」」」

思わず三重奏になったあたし達と、当のセクトルさんは、


「一体、どのようにしたらそのような珍妙な推論が出来たのか、ぜひともお聞かせ願いたいものですね」


(ぎゃあああっ!! 暗黒の笑み来たぁっ!!)


「いやだってさ、こんなところで弓矢を扱うって、相当難しそうだしさ。それに何か矢の造りが似てたし」


するとセクトルさんは、ふう、とため息をついてから、


「それはまあ、矢ですからね。多少は似ていてもおかしくありません。それにダンジョン内で使用できるものとなると数が限られてます。それに、私には彼を殺害する理由がありませんが?」


「えっと、実はそこのお嬢様を憎んでた、とか?」


「どうして疑問形なんですか? もう少し論理を組み立てて欲しいものですね。例えば私がどこかの反王派の手先で、レキシコン王の婚約者であるお嬢様を狙ったとします。それでもまだ理屈が合いませんが」


(ああ、そうだよねぇ)


あたしはすぐに分かったが、カイン様は違ったみたい。横ではラインがやれやれという表情をしているし、カサンドラ嬢も見ると、どうやら分からないのはカイン様だけみたい。


「へ?」

「ですから」

(セクトルさん、疲れてるみたい)


「わざわざこんなことをしなくても、つい先日までレキシコン王ご本人がいらしたのですから、そういった機会は幾らでもありましたよね」


確かにレキシコン王と入れ違いみたいにカイン様はいらしたけれど、その話はしている。


(特にカサンドラ嬢がさんざん言ってたものね)


遠い目になっていると、ようやくカイン様が目を見開いた。


「あ、」


(遅っ!!)


「カイン様、貴方は一回物事を深くこの辺(とお腹の辺りを示す)まで落としてから話された方がよろしいかと」



途中、休憩を挟んだり(野菜スープが美味しかっ……あれって味噌……)、ギルドのごく限られた者しか知らないという近道ショートカットを利用して、やってきました四十層。


「ここは本来、ゴルゴンが生息しているはずの層なんだ。そのゴルゴンが二十三層にいた以上、普通に考えてここにいるのは」


「二十三層の魔物、ってわけだな。で、それは一体どんな奴なんだ」


(うーん、ほんとに礼儀が……)


「人が話している時は最後まで聞く、とは教えられなかったのですか?」


再びのブリザード、プラスお説教タイム発動。



「そういった事情があるので、まずはこの階層の主が本当に二十三層の主なのかを確認し、状況次第では一度上へ戻ることも検討しますので、そのつもりでいて下さいね」


仕切り直し、とばかりにラインが話を戻したけれど、今度は邪魔は入らなかった。


(成長しましたね、カイン様)


「はい、質問」

とそこでカイン様が手を上げた。


「何でしょう?」


「状況次第、ってどういうことだ? 最初っから俺達は一番下の層を目指してたんじゃないのか?」


「始めはそのつもりでしたが」


少しばかり状況が変わりまして、とカサンドラ嬢の方へ視線を向けた。


「申し訳ございません」


思うところが十二分にあるのだろう、カサンドラ嬢が珍しく(!)神妙に答えた。


「本来、二十三層の主は前衛が気を引き、攻撃手である剣士等が止めを刺す。ああ、これに弓矢で牽制もできれば上々。ですからそれ程難しい相手ではないんですが」


そこで言葉を切ったラインが、


「――ライト」


通路に光が満ちる。



「ちょ、これ」

「……うわあ」

「これは」

「……埋まってますわね」





四者四様の答えを返していると、


「思ったより魔素が濃い。これは手間がかかるかもしれませんね」


通路の地面どころか、壁、果ては天井までもがおびただしい蔦や葉で覆われていたのだ。


(うわあ。緑の洞窟だ)

のんきにそんなことを思っていると、


「見てのとおり、もとの二十三層の主は植物です。その場合、最も有効なのは火ですが、今はもちろん使えません。さて、どうしましょうか?」


そうラインに聞かれ、


「えっと。火がだめなら凍らせる、とか」


(ラインがやってた『アイスアロー』なら何とかなるよね)


「うーん、少し違うかな。確かにここの主は寒さに弱いみたいだけどね」

「じゃあ……」



「おいっ!! そこの(仮)夫婦!!  のんびり話してないで何とかしろっ!! 蔦が俺達、捕まえようとしてるぞっ!!」



カイン様の叫びにそちらを見れば、壁に沿っていたはずの蔦が意思を持ったように伸びて、カイン様やカサンドラ嬢(あ、そっちはセクトルさんが応戦している)に迫っていた。



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