44 / 73
44.四十層
しおりを挟む
「「「は?」」」
思わず三重奏になったあたし達と、当のセクトルさんは、
「一体、どのようにしたらそのような珍妙な推論が出来たのか、ぜひともお聞かせ願いたいものですね」
(ぎゃあああっ!! 暗黒の笑み来たぁっ!!)
「いやだってさ、こんなところで弓矢を扱うって、相当難しそうだしさ。それに何か矢の造りが似てたし」
するとセクトルさんは、ふう、とため息をついてから、
「それはまあ、矢ですからね。多少は似ていてもおかしくありません。それにダンジョン内で使用できるものとなると数が限られてます。それに、私には彼を殺害する理由がありませんが?」
「えっと、実はそこのお嬢様を憎んでた、とか?」
「どうして疑問形なんですか? もう少し論理を組み立てて欲しいものですね。例えば私がどこかの反王派の手先で、レキシコン王の婚約者であるお嬢様を狙ったとします。それでもまだ理屈が合いませんが」
(ああ、そうだよねぇ)
あたしはすぐに分かったが、カイン様は違ったみたい。横ではラインがやれやれという表情をしているし、カサンドラ嬢も見ると、どうやら分からないのはカイン様だけみたい。
「へ?」
「ですから」
(セクトルさん、疲れてるみたい)
「わざわざこんなことをしなくても、つい先日までレキシコン王ご本人がいらしたのですから、そういった機会は幾らでもありましたよね」
確かにレキシコン王と入れ違いみたいにカイン様はいらしたけれど、その話はしている。
(特にカサンドラ嬢がさんざん言ってたものね)
遠い目になっていると、ようやくカイン様が目を見開いた。
「あ、」
(遅っ!!)
「カイン様、貴方は一回物事を深くこの辺(とお腹の辺りを示す)まで落としてから話された方がよろしいかと」
途中、休憩を挟んだり(野菜スープが美味しかっ……あれって味噌……)、ギルドのごく限られた者しか知らないという近道を利用して、やってきました四十層。
「ここは本来、ゴルゴンが生息しているはずの層なんだ。そのゴルゴンが二十三層にいた以上、普通に考えてここにいるのは」
「二十三層の魔物、ってわけだな。で、それは一体どんな奴なんだ」
(うーん、ほんとに礼儀が……)
「人が話している時は最後まで聞く、とは教えられなかったのですか?」
再びのブリザード、プラスお説教タイム発動。
「そういった事情があるので、まずはこの階層の主が本当に二十三層の主なのかを確認し、状況次第では一度上へ戻ることも検討しますので、そのつもりでいて下さいね」
仕切り直し、とばかりにラインが話を戻したけれど、今度は邪魔は入らなかった。
(成長しましたね、カイン様)
「はい、質問」
とそこでカイン様が手を上げた。
「何でしょう?」
「状況次第、ってどういうことだ? 最初っから俺達は一番下の層を目指してたんじゃないのか?」
「始めはそのつもりでしたが」
少しばかり状況が変わりまして、とカサンドラ嬢の方へ視線を向けた。
「申し訳ございません」
思うところが十二分にあるのだろう、カサンドラ嬢が珍しく(!)神妙に答えた。
「本来、二十三層の主は前衛が気を引き、攻撃手である剣士等が止めを刺す。ああ、これに弓矢で牽制もできれば上々。ですからそれ程難しい相手ではないんですが」
そこで言葉を切ったラインが、
「――ライト」
通路に光が満ちる。
「ちょ、これ」
「……うわあ」
「これは」
「……埋まってますわね」
四者四様の答えを返していると、
「思ったより魔素が濃い。これは手間がかかるかもしれませんね」
通路の地面どころか、壁、果ては天井までもが夥しい蔦や葉で覆われていたのだ。
(うわあ。緑の洞窟だ)
のんきにそんなことを思っていると、
「見てのとおり、もとの二十三層の主は植物です。その場合、最も有効なのは火ですが、今はもちろん使えません。さて、どうしましょうか?」
そうラインに聞かれ、
「えっと。火がだめなら凍らせる、とか」
(ラインがやってた『アイスアロー』なら何とかなるよね)
「うーん、少し違うかな。確かにここの主は寒さに弱いみたいだけどね」
「じゃあ……」
「おいっ!! そこの(仮)夫婦!! のんびり話してないで何とかしろっ!! 蔦が俺達、捕まえようとしてるぞっ!!」
カイン様の叫びにそちらを見れば、壁に沿っていたはずの蔦が意思を持ったように伸びて、カイン様やカサンドラ嬢(あ、そっちはセクトルさんが応戦している)に迫っていた。
思わず三重奏になったあたし達と、当のセクトルさんは、
「一体、どのようにしたらそのような珍妙な推論が出来たのか、ぜひともお聞かせ願いたいものですね」
(ぎゃあああっ!! 暗黒の笑み来たぁっ!!)
「いやだってさ、こんなところで弓矢を扱うって、相当難しそうだしさ。それに何か矢の造りが似てたし」
するとセクトルさんは、ふう、とため息をついてから、
「それはまあ、矢ですからね。多少は似ていてもおかしくありません。それにダンジョン内で使用できるものとなると数が限られてます。それに、私には彼を殺害する理由がありませんが?」
「えっと、実はそこのお嬢様を憎んでた、とか?」
「どうして疑問形なんですか? もう少し論理を組み立てて欲しいものですね。例えば私がどこかの反王派の手先で、レキシコン王の婚約者であるお嬢様を狙ったとします。それでもまだ理屈が合いませんが」
(ああ、そうだよねぇ)
あたしはすぐに分かったが、カイン様は違ったみたい。横ではラインがやれやれという表情をしているし、カサンドラ嬢も見ると、どうやら分からないのはカイン様だけみたい。
「へ?」
「ですから」
(セクトルさん、疲れてるみたい)
「わざわざこんなことをしなくても、つい先日までレキシコン王ご本人がいらしたのですから、そういった機会は幾らでもありましたよね」
確かにレキシコン王と入れ違いみたいにカイン様はいらしたけれど、その話はしている。
(特にカサンドラ嬢がさんざん言ってたものね)
遠い目になっていると、ようやくカイン様が目を見開いた。
「あ、」
(遅っ!!)
「カイン様、貴方は一回物事を深くこの辺(とお腹の辺りを示す)まで落としてから話された方がよろしいかと」
途中、休憩を挟んだり(野菜スープが美味しかっ……あれって味噌……)、ギルドのごく限られた者しか知らないという近道を利用して、やってきました四十層。
「ここは本来、ゴルゴンが生息しているはずの層なんだ。そのゴルゴンが二十三層にいた以上、普通に考えてここにいるのは」
「二十三層の魔物、ってわけだな。で、それは一体どんな奴なんだ」
(うーん、ほんとに礼儀が……)
「人が話している時は最後まで聞く、とは教えられなかったのですか?」
再びのブリザード、プラスお説教タイム発動。
「そういった事情があるので、まずはこの階層の主が本当に二十三層の主なのかを確認し、状況次第では一度上へ戻ることも検討しますので、そのつもりでいて下さいね」
仕切り直し、とばかりにラインが話を戻したけれど、今度は邪魔は入らなかった。
(成長しましたね、カイン様)
「はい、質問」
とそこでカイン様が手を上げた。
「何でしょう?」
「状況次第、ってどういうことだ? 最初っから俺達は一番下の層を目指してたんじゃないのか?」
「始めはそのつもりでしたが」
少しばかり状況が変わりまして、とカサンドラ嬢の方へ視線を向けた。
「申し訳ございません」
思うところが十二分にあるのだろう、カサンドラ嬢が珍しく(!)神妙に答えた。
「本来、二十三層の主は前衛が気を引き、攻撃手である剣士等が止めを刺す。ああ、これに弓矢で牽制もできれば上々。ですからそれ程難しい相手ではないんですが」
そこで言葉を切ったラインが、
「――ライト」
通路に光が満ちる。
「ちょ、これ」
「……うわあ」
「これは」
「……埋まってますわね」
四者四様の答えを返していると、
「思ったより魔素が濃い。これは手間がかかるかもしれませんね」
通路の地面どころか、壁、果ては天井までもが夥しい蔦や葉で覆われていたのだ。
(うわあ。緑の洞窟だ)
のんきにそんなことを思っていると、
「見てのとおり、もとの二十三層の主は植物です。その場合、最も有効なのは火ですが、今はもちろん使えません。さて、どうしましょうか?」
そうラインに聞かれ、
「えっと。火がだめなら凍らせる、とか」
(ラインがやってた『アイスアロー』なら何とかなるよね)
「うーん、少し違うかな。確かにここの主は寒さに弱いみたいだけどね」
「じゃあ……」
「おいっ!! そこの(仮)夫婦!! のんびり話してないで何とかしろっ!! 蔦が俺達、捕まえようとしてるぞっ!!」
カイン様の叫びにそちらを見れば、壁に沿っていたはずの蔦が意思を持ったように伸びて、カイン様やカサンドラ嬢(あ、そっちはセクトルさんが応戦している)に迫っていた。
1
あなたにおすすめの小説
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【 完 結 】スキル無しで婚約破棄されたけれど、実は特殊スキル持ちですから!
しずもり
ファンタジー
この国オーガスタの国民は6歳になると女神様からスキルを授かる。
けれど、第一王子レオンハルト殿下の婚約者であるマリエッタ・ルーデンブルグ公爵令嬢は『スキル無し』判定を受けたと言われ、第一王子の婚約者という妬みや僻みもあり嘲笑されている。
そしてある理由で第一王子から蔑ろにされている事も令嬢たちから見下される原因にもなっていた。
そして王家主催の夜会で事は起こった。
第一王子が『スキル無し』を理由に婚約破棄を婚約者に言い渡したのだ。
そして彼は8歳の頃に出会い、学園で再会したという初恋の人ルナティアと婚約するのだと宣言した。
しかし『スキル無し』の筈のマリエッタは本当はスキル持ちであり、実は彼女のスキルは、、、、。
全12話
ご都合主義のゆるゆる設定です。
言葉遣いや言葉は現代風の部分もあります。
登場人物へのざまぁはほぼ無いです。
魔法、スキルの内容については独自設定になっています。
誤字脱字、言葉間違いなどあると思います。見つかり次第、修正していますがご容赦下さいませ。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
時岡継美
ファンタジー
初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。
侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。
しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?
他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。
誤字脱字報告ありがとうございます!
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる