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第8話 手紙
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やっと自室に落ち着いたローズは侍女を下がらせ、ほっと息をついた。
(疲れた)
あの後も書類の山が待ってくれるはずもなく、慌ただしく手配を終えてからローズは残っていた領主代行としての仕事をこなした。
(折角ここまで来たのに)
一人になるとこれまでのことが一気に蘇り、ローズは義憤に駆られた。
長年の婚約者には婚約解消され、一念発起して父親を説得して漸く自分の居場所を見つけた、と思っていた矢先の出来事である。
(どうして、いつもいつも――)
ローズの喉から嗚咽が漏れ出した。
「……うっ、……っ」
廊下にも人が居るはずなので出来るだけ抑えたがそれは大分長く続いた。
(私、何か悪いことしましたか。神様)
翌朝、ローズは何でもない風を装って食堂へ向かった。
腫れた瞼には一人で氷魔法を使い、上手く処理したはずだった。
「おはようございます」
「ああ。おはよう」
「おはようございます。番様」
既に食堂にはベリル達が居たがどこか疲れて見えた。
(どうしたのかしら?)
「お待たせしてしまったようで申し訳ありません」
ローズが謝罪すると、リヨンが慌てた様に答えた。
「いえ、とんでもない!! こちらこそ早く来すぎてしまったようで」
(気を遣われている?)
気になったが今はそれを気にしている場合ではない。
ローズはできるだけ当たり障りのない話題を模索しながら会話を続け、何とか朝食を終えると二階の執務室へ向かった。
本来なら別棟に執務室を置くべきなのだが、そこまでの余裕がなかったのだ。
(まずは――あら?)
机に向かおうとしたところで部屋の隅に置かれた小さな転移陣に手紙が置かれていることに気付いた。
これはローズの身を心配した公爵が設置したもので、緊急もしくは火急の用件の際にしか使用しないことになっていた。
(……もしかして)
ローズは部屋に控えていた侍女に手紙を取らせ、その封を開けた。
内容はやはりというか、シュガルト国の国王陛下がそちらへ番を探しに向かうから上手く対応するよう書かれていた。
流石にローズがその番だったということまではまだ情報が届いていないらしい。
(もし、知ったらどうされるのかしら?)
これまでローズは父親のファラント公爵には距離を置かれていると思っていたが、今回の件でそれは間違いであると分かったため、今度は逆に心配になってくる。
(冷静に判断して下さるといいのだけれど)
ローズはひとまず父親宛にその番はどうやら自分であること、そのためここから離れなければならず、このままローズの施策を引き継いでくれる人材を派遣して貰えないだろうか、と認めることにした。
(いけない。落ち着かないと)
書いているうちに感情が高ぶってきてしまい、文が乱れた。
書き損じを脇へどかし、真新しい紙を出す。
貴重な紙を、とため息が出そうになったが気持ちを切り替えてローズは再び手紙を認めた。
(こんなものかしら)
何とか事務的なものができた、と息をつく。
本意ではない内容を書くのは非常に疲れる作業である。
(そのことは考えないようにしなくては)
もう一度見直してこれでよし、と封をして侍女に転移陣へ運ばせる。
ローズも転移陣の前へ移動した。
この転移陣はファラント公爵家の者しか使用できないようになっているため、ローズの立ち合いが必要だった。
「――ファラント公爵家へ」
ローズの言葉が終わると同時に転移陣から手紙が消えた。
(さてと、続きをしないといけないわね)
軽く頭を振って仕事に没頭し始めたローズは知らなかった。
手紙を受け取り、その内容を知ったファラント公爵が憤り、こちらへ向かおうとして従僕長と言い争いになっていたことなど。
(疲れた)
あの後も書類の山が待ってくれるはずもなく、慌ただしく手配を終えてからローズは残っていた領主代行としての仕事をこなした。
(折角ここまで来たのに)
一人になるとこれまでのことが一気に蘇り、ローズは義憤に駆られた。
長年の婚約者には婚約解消され、一念発起して父親を説得して漸く自分の居場所を見つけた、と思っていた矢先の出来事である。
(どうして、いつもいつも――)
ローズの喉から嗚咽が漏れ出した。
「……うっ、……っ」
廊下にも人が居るはずなので出来るだけ抑えたがそれは大分長く続いた。
(私、何か悪いことしましたか。神様)
翌朝、ローズは何でもない風を装って食堂へ向かった。
腫れた瞼には一人で氷魔法を使い、上手く処理したはずだった。
「おはようございます」
「ああ。おはよう」
「おはようございます。番様」
既に食堂にはベリル達が居たがどこか疲れて見えた。
(どうしたのかしら?)
「お待たせしてしまったようで申し訳ありません」
ローズが謝罪すると、リヨンが慌てた様に答えた。
「いえ、とんでもない!! こちらこそ早く来すぎてしまったようで」
(気を遣われている?)
気になったが今はそれを気にしている場合ではない。
ローズはできるだけ当たり障りのない話題を模索しながら会話を続け、何とか朝食を終えると二階の執務室へ向かった。
本来なら別棟に執務室を置くべきなのだが、そこまでの余裕がなかったのだ。
(まずは――あら?)
机に向かおうとしたところで部屋の隅に置かれた小さな転移陣に手紙が置かれていることに気付いた。
これはローズの身を心配した公爵が設置したもので、緊急もしくは火急の用件の際にしか使用しないことになっていた。
(……もしかして)
ローズは部屋に控えていた侍女に手紙を取らせ、その封を開けた。
内容はやはりというか、シュガルト国の国王陛下がそちらへ番を探しに向かうから上手く対応するよう書かれていた。
流石にローズがその番だったということまではまだ情報が届いていないらしい。
(もし、知ったらどうされるのかしら?)
これまでローズは父親のファラント公爵には距離を置かれていると思っていたが、今回の件でそれは間違いであると分かったため、今度は逆に心配になってくる。
(冷静に判断して下さるといいのだけれど)
ローズはひとまず父親宛にその番はどうやら自分であること、そのためここから離れなければならず、このままローズの施策を引き継いでくれる人材を派遣して貰えないだろうか、と認めることにした。
(いけない。落ち着かないと)
書いているうちに感情が高ぶってきてしまい、文が乱れた。
書き損じを脇へどかし、真新しい紙を出す。
貴重な紙を、とため息が出そうになったが気持ちを切り替えてローズは再び手紙を認めた。
(こんなものかしら)
何とか事務的なものができた、と息をつく。
本意ではない内容を書くのは非常に疲れる作業である。
(そのことは考えないようにしなくては)
もう一度見直してこれでよし、と封をして侍女に転移陣へ運ばせる。
ローズも転移陣の前へ移動した。
この転移陣はファラント公爵家の者しか使用できないようになっているため、ローズの立ち合いが必要だった。
「――ファラント公爵家へ」
ローズの言葉が終わると同時に転移陣から手紙が消えた。
(さてと、続きをしないといけないわね)
軽く頭を振って仕事に没頭し始めたローズは知らなかった。
手紙を受け取り、その内容を知ったファラント公爵が憤り、こちらへ向かおうとして従僕長と言い争いになっていたことなど。
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