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第20話 ざまぁと言ってもいいですか? ②
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「寄り道ですか?」
そう言われてローズは困惑したような表情になった。
今回、ローズはシュガルト国へ行ったらすぐに婚姻の発表をすることになっている。
婚約ではなく婚姻である。
しかも、ベリルはこの数日のうちにこのマトアニア王国の王城まで足を運び、国王に婚姻の報告をし、ローズと二人で挨拶に来るのはシュガルト国で婚姻の儀を終えてから、という約束まで取り付けて来たのだ。
ローズの父であるファラント公爵にも挨拶済みである。
最もこちらはひと悶着あったらしいが。
「お前の父上はなかなか面白い御仁だな」
そうベリルに言われてもピンとこないローズだったが、次の言葉を聞いて青ざめた。
「運命の番というだけで愛娘を奪うのか、と決闘を申し込まれたぞ」
どこか楽しそうにベリルが告げる。
「それでどうされたのですか?」
まさか本当に決闘などした訳ではあるまい。
「流石に決闘はしなかったぞ。じっくり話したら分かってくれた。いいお父上だな」
「有難うございます」
一体何を話したのかも気になるところだが、今回の『寄り道』も気になるのでそちらを先にした。
その後は支度に忙しかったので詳しく聞く間を逃してしまったが、こうして馬車に乗り込んでしまえば時間は取れる。
「それでどちらへ向かうのですか?」
これほどローズとの婚姻を優先しているように見えるベリルが敢えて寄り道をするという。
気になっていたローズが問うがベリルは思わせぶりに告げた。
「まあ、着いてからのお楽しみだ」
そう言われては何にも言えず、ローズは大人しく到着を待つことになった。
やがて馬車はどこか見慣れた邸の前へ止まったが、そこはローズの記憶よりもどこか寂れて見えた。
「ここは……」
「さて、行こうか」
飄々とした表情でベリルが言い、馬車を降りた。
伸ばされた手を取ると慣れた様子で降ろされる。
普段との格差にローズが戸惑いを隠せずにいると、ベリルがそんなに意外かという視線を向けた。
「一応こういったことは習うが」
そう言われてローズが慌てた様に謝罪の言葉を口にする。
「すみません。そんなつもりでは――」
するとふは、とベリルが笑い出した。
「別に怒っている訳じゃない。ローズは真面目だな」
それは過去に何度も言われた言葉だった。
お茶会での令嬢達との会話の中で軽い冗談に付き合えなくて真面に取り合ってしまった時にからかうように言われた言葉。
その度に癇癪を抑えて来たローズからすれば今回もそう感じてもおかしくはなかったのだが。
(どうしてかしら。それ程怒りが沸いてこない)
それは恐らく言葉通りの称賛が込められているからなのだろう。
馬車から降ろされたローズの視界に寂れた邸が入った。
(やはりここは――)
「分かるか?」
「ザックランド公爵家邸ですね」
運命の番を見付けた、とローズとの婚約を解消した相手の居る邸だった。
どうしてここに、とローズが疑問を呈しようとした時、何度か聞いたことのある声がした。
「ようこそおいで下さいました。ファラント公爵令嬢様」
老齢の執事の声にローズが振り返る。
「ごきげんよう。貴方も息災のようですね」
「もったいなきお言葉です。こちらへ」
そのまま邸内へ入り、応接間へ案内されたがここでもローズは違和感を感じた。
(何かしら? この淀んだ空気は)
よく見ると隅々まで掃除が行き届いておらず、埃が溜まっているのが分かる。
公爵邸としてはあるまじき姿だった。
(どういうことかしら?)
仮にも公爵を名乗るのであればこんなところに客人を通すなど有り得ないことだった。
(やはり、私は下に見られているのかしら)
ローズが軽く落ち込みかけた時、応接間の扉が開いた。
「ローズッ、来てくれたんだね!!」
いかにも喜色満面といった勢いでエドモンドが駆け込んで来た。
(え?)
エドモンドの恰好も以前とは違っていた。
来ている服の布地は上等なものの着古した感が否めない。
そして髪も以前とは違い、艶がないように見える。
「あの時はどうかしてたんだ!! やはり俺の婚約者はローズ、君しかいない!!」
抱き着こうとしたエドモンドからローズの体が逸らされ、勢いのまま壁に激突したエドモンドが振り返る。
「何をする貴様!!」
硬直したローズの体を引き寄せたベリルが答える。
「それはこちらの台詞だが。そう言えばまだ言ってなかったな。俺はシュガルト国の王、ベリル・ランスタッド・シュガルトだ。ここへ来たのはこの国の王からの預かり物があったから立ち寄ったに過ぎない」
(え?)
初耳のローズは勿論、エドモンドも呆気に取られたようだった。
「は、え? あのシュガルトの国王? お前が? しかも国王陛下から預かり物だって? 何の冗談だ?」
貴族としての体裁も忘れたのかエドモンドが乱暴に怒鳴った。
このまま放っておけばマトアニア王国とシュガルト国との外交問題に発展しかねない。
取りなそうとローズが口を開きかけた時、トス、と軽い音がした。
一瞬何が起こったのか分からなかったがよく見るとエドモンドの服の袖に小刀が刺さっていた。
「ひぃ、」
――トス、トス、トスッ!!
軽い音が連続で響き、ローズが気付いた時にはエドモンドはしっかりと壁に縫い留められていた。
「……少しは手加減しろ、リヨン」
「してますよ。まだ生きてるでしょう、国王陛下」
国王陛下、のところを強調して言ったリヨンが非常に残念なものをみるような目でエドモンドを見た。
そう言われてローズは困惑したような表情になった。
今回、ローズはシュガルト国へ行ったらすぐに婚姻の発表をすることになっている。
婚約ではなく婚姻である。
しかも、ベリルはこの数日のうちにこのマトアニア王国の王城まで足を運び、国王に婚姻の報告をし、ローズと二人で挨拶に来るのはシュガルト国で婚姻の儀を終えてから、という約束まで取り付けて来たのだ。
ローズの父であるファラント公爵にも挨拶済みである。
最もこちらはひと悶着あったらしいが。
「お前の父上はなかなか面白い御仁だな」
そうベリルに言われてもピンとこないローズだったが、次の言葉を聞いて青ざめた。
「運命の番というだけで愛娘を奪うのか、と決闘を申し込まれたぞ」
どこか楽しそうにベリルが告げる。
「それでどうされたのですか?」
まさか本当に決闘などした訳ではあるまい。
「流石に決闘はしなかったぞ。じっくり話したら分かってくれた。いいお父上だな」
「有難うございます」
一体何を話したのかも気になるところだが、今回の『寄り道』も気になるのでそちらを先にした。
その後は支度に忙しかったので詳しく聞く間を逃してしまったが、こうして馬車に乗り込んでしまえば時間は取れる。
「それでどちらへ向かうのですか?」
これほどローズとの婚姻を優先しているように見えるベリルが敢えて寄り道をするという。
気になっていたローズが問うがベリルは思わせぶりに告げた。
「まあ、着いてからのお楽しみだ」
そう言われては何にも言えず、ローズは大人しく到着を待つことになった。
やがて馬車はどこか見慣れた邸の前へ止まったが、そこはローズの記憶よりもどこか寂れて見えた。
「ここは……」
「さて、行こうか」
飄々とした表情でベリルが言い、馬車を降りた。
伸ばされた手を取ると慣れた様子で降ろされる。
普段との格差にローズが戸惑いを隠せずにいると、ベリルがそんなに意外かという視線を向けた。
「一応こういったことは習うが」
そう言われてローズが慌てた様に謝罪の言葉を口にする。
「すみません。そんなつもりでは――」
するとふは、とベリルが笑い出した。
「別に怒っている訳じゃない。ローズは真面目だな」
それは過去に何度も言われた言葉だった。
お茶会での令嬢達との会話の中で軽い冗談に付き合えなくて真面に取り合ってしまった時にからかうように言われた言葉。
その度に癇癪を抑えて来たローズからすれば今回もそう感じてもおかしくはなかったのだが。
(どうしてかしら。それ程怒りが沸いてこない)
それは恐らく言葉通りの称賛が込められているからなのだろう。
馬車から降ろされたローズの視界に寂れた邸が入った。
(やはりここは――)
「分かるか?」
「ザックランド公爵家邸ですね」
運命の番を見付けた、とローズとの婚約を解消した相手の居る邸だった。
どうしてここに、とローズが疑問を呈しようとした時、何度か聞いたことのある声がした。
「ようこそおいで下さいました。ファラント公爵令嬢様」
老齢の執事の声にローズが振り返る。
「ごきげんよう。貴方も息災のようですね」
「もったいなきお言葉です。こちらへ」
そのまま邸内へ入り、応接間へ案内されたがここでもローズは違和感を感じた。
(何かしら? この淀んだ空気は)
よく見ると隅々まで掃除が行き届いておらず、埃が溜まっているのが分かる。
公爵邸としてはあるまじき姿だった。
(どういうことかしら?)
仮にも公爵を名乗るのであればこんなところに客人を通すなど有り得ないことだった。
(やはり、私は下に見られているのかしら)
ローズが軽く落ち込みかけた時、応接間の扉が開いた。
「ローズッ、来てくれたんだね!!」
いかにも喜色満面といった勢いでエドモンドが駆け込んで来た。
(え?)
エドモンドの恰好も以前とは違っていた。
来ている服の布地は上等なものの着古した感が否めない。
そして髪も以前とは違い、艶がないように見える。
「あの時はどうかしてたんだ!! やはり俺の婚約者はローズ、君しかいない!!」
抱き着こうとしたエドモンドからローズの体が逸らされ、勢いのまま壁に激突したエドモンドが振り返る。
「何をする貴様!!」
硬直したローズの体を引き寄せたベリルが答える。
「それはこちらの台詞だが。そう言えばまだ言ってなかったな。俺はシュガルト国の王、ベリル・ランスタッド・シュガルトだ。ここへ来たのはこの国の王からの預かり物があったから立ち寄ったに過ぎない」
(え?)
初耳のローズは勿論、エドモンドも呆気に取られたようだった。
「は、え? あのシュガルトの国王? お前が? しかも国王陛下から預かり物だって? 何の冗談だ?」
貴族としての体裁も忘れたのかエドモンドが乱暴に怒鳴った。
このまま放っておけばマトアニア王国とシュガルト国との外交問題に発展しかねない。
取りなそうとローズが口を開きかけた時、トス、と軽い音がした。
一瞬何が起こったのか分からなかったがよく見るとエドモンドの服の袖に小刀が刺さっていた。
「ひぃ、」
――トス、トス、トスッ!!
軽い音が連続で響き、ローズが気付いた時にはエドモンドはしっかりと壁に縫い留められていた。
「……少しは手加減しろ、リヨン」
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