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第19話 ざまぁと言ってもいいですか? ①
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――時は少し遡る。
婚約者であるローズに引導を渡し、すっきりした顔をしているエドモンドにピケラが口を開いた。
「これであの女との婚約は解消ね」
そのどこか嘲りを含んだ口調にエドモンドの口角が上がる。
「ああ。それに『運命の番』なら、違約金を払わずに済む」
「あら、随分と考えてるのね」
向かい合ったピケラの両腕がエドモンドの肩へ掛かった。
「まあでもいい時期に君に出会えて良かったよ。天の采配ってあるんだね」
「そうね」
先ほどとは打って変わって妖艶な雰囲気を纏ったピケラの唇がエドモンドのそれに重なろうとした時、ピケラが体を離した。
「ピケラ?」
「あら、ごめんなさい。誰か来たようよ」
その言葉が終わるのと殆ど同時に扉が叩かれた。
「何だ!?」
邪魔された苛立ちでエドモンドが乱暴に問い掛けると扉の向こうで侍女らしき声が答えた。
「エドモンド様、旦那様がお呼びにございます」
「間が悪いな。それじゃあピケラ、行ってくるよ」
エドモンドは軽く抱擁した後、ピケラの蟀谷に唇を落とした。
「行ってらっしゃい」
にっこりと笑みを浮かべて見送ったピケラだが、その扉が閉まるとごしごしと蟀谷を擦った。
「冗談じゃないっての」
その表情はローズに向けた天真爛漫なものでも、また先ほどの妖艶なものでもなかった。
「さあて。行きますか」
ピケラは扉とは反対側へ向かい、庭への扉を開け、周囲に人気がないのを見計らってその視線を上へ向けた。
「まあ、楽勝ね」
次の瞬間にはピケラの姿は二階の窓辺にあった。
獣人の身体能力でそこまで一気に上がったのだ。
「全く不用心よね」
まだ陽があるが下からだと生い茂った樹木が邪魔をしてピケラの姿は見えなかった。
『それでどうだった?』
『はい。父親に相談するとか言ってましたが、運命の番だと言ったら納得したようです』
『そうか。彼奴の援助が絶えるのは多少痛手だが、アレの為なら仕方あるまい』
『しかし父上、本当にピケラは知ってるんでしょうかね? ミスリルの鉱脈など』
『しっ!! 誰が聞いてるか分からんぞ。運命の番とか抜かすが、そんな感覚はお前はないんだな?』
『ええ。ですがこのまま行くとピケラと婚約しなければなりません』
『はっ、そんなもの。適当に離れでも与えておけばいいだろう』
『ですが表向きは婚約しないと示しがつかないと――』
『ああ。表向きはそうしておけ。我が家は運命の番による婚姻だとな。後はほどほどにな』
『分かりました』
聞くだけ聞くとピケラはそっと自室として宛がわれている部屋へ戻った。
「やれやれだわね」
衝撃的な内容だったがピケラはそれほど堪えていないようだった。
当初は運命の番だと言って潜り込むつもりだったのが、反応が薄かったのでミスリル鉱脈のことを引き合いに出したピケラだった。
(こんなに食いつきがいいとは思わなかったわ)
勿論、運命の番など嘘だった。
運命の番は人族側には分かり辛いという特性を生かしての策だった。
(うーん、運命の番設定はちょっと微妙だったかしら? まあでもお陰でこんなにいい部屋与えて貰ったんだからいいか)
豪華な家具や調度品を見渡して満足するピケラだったが、ここで終わるつもりはなかった。
(お宝探しはご令嬢の婚約解消が終わった頃がいいかしら。そこが一番油断してそうね)
ピケラは盗賊だった。
情報収集から実行、盗品の売り飛ばしまで全てを一人でこなしてきた。
現在ではそうシャカリキにならなくても生活出来る位のものはあるが、ピケラはそこで満足するつもりはなかった。
(もっともっと――)
ピケラの両親は運命の番だった。
だが、父親は人族であり、運命の番としての感覚に慣れることがなかった。
婚姻はしたものの、人族から見れば重い愛情に耐え切れなくなった父親は家を出て行き、母親はそれを知るなり後を追った。
その後の両親のことはピケラは知らない。
まだ幼いピケラを置いて出て行った両親のことが今のピケラの人生観に影響しているのは想像に難くなかった。
何故ならエドモンドが婚約解消を終え、細やかなお祝いをしたその夜の内に『仕事』を終えたピケラは行方をくらましたのだから。
翌朝、騙されたと知ったザックランド公爵邸では大騒ぎになり、追っ手も掛けられたがピケラの行方は杳として知れなかった。
婚約者であるローズに引導を渡し、すっきりした顔をしているエドモンドにピケラが口を開いた。
「これであの女との婚約は解消ね」
そのどこか嘲りを含んだ口調にエドモンドの口角が上がる。
「ああ。それに『運命の番』なら、違約金を払わずに済む」
「あら、随分と考えてるのね」
向かい合ったピケラの両腕がエドモンドの肩へ掛かった。
「まあでもいい時期に君に出会えて良かったよ。天の采配ってあるんだね」
「そうね」
先ほどとは打って変わって妖艶な雰囲気を纏ったピケラの唇がエドモンドのそれに重なろうとした時、ピケラが体を離した。
「ピケラ?」
「あら、ごめんなさい。誰か来たようよ」
その言葉が終わるのと殆ど同時に扉が叩かれた。
「何だ!?」
邪魔された苛立ちでエドモンドが乱暴に問い掛けると扉の向こうで侍女らしき声が答えた。
「エドモンド様、旦那様がお呼びにございます」
「間が悪いな。それじゃあピケラ、行ってくるよ」
エドモンドは軽く抱擁した後、ピケラの蟀谷に唇を落とした。
「行ってらっしゃい」
にっこりと笑みを浮かべて見送ったピケラだが、その扉が閉まるとごしごしと蟀谷を擦った。
「冗談じゃないっての」
その表情はローズに向けた天真爛漫なものでも、また先ほどの妖艶なものでもなかった。
「さあて。行きますか」
ピケラは扉とは反対側へ向かい、庭への扉を開け、周囲に人気がないのを見計らってその視線を上へ向けた。
「まあ、楽勝ね」
次の瞬間にはピケラの姿は二階の窓辺にあった。
獣人の身体能力でそこまで一気に上がったのだ。
「全く不用心よね」
まだ陽があるが下からだと生い茂った樹木が邪魔をしてピケラの姿は見えなかった。
『それでどうだった?』
『はい。父親に相談するとか言ってましたが、運命の番だと言ったら納得したようです』
『そうか。彼奴の援助が絶えるのは多少痛手だが、アレの為なら仕方あるまい』
『しかし父上、本当にピケラは知ってるんでしょうかね? ミスリルの鉱脈など』
『しっ!! 誰が聞いてるか分からんぞ。運命の番とか抜かすが、そんな感覚はお前はないんだな?』
『ええ。ですがこのまま行くとピケラと婚約しなければなりません』
『はっ、そんなもの。適当に離れでも与えておけばいいだろう』
『ですが表向きは婚約しないと示しがつかないと――』
『ああ。表向きはそうしておけ。我が家は運命の番による婚姻だとな。後はほどほどにな』
『分かりました』
聞くだけ聞くとピケラはそっと自室として宛がわれている部屋へ戻った。
「やれやれだわね」
衝撃的な内容だったがピケラはそれほど堪えていないようだった。
当初は運命の番だと言って潜り込むつもりだったのが、反応が薄かったのでミスリル鉱脈のことを引き合いに出したピケラだった。
(こんなに食いつきがいいとは思わなかったわ)
勿論、運命の番など嘘だった。
運命の番は人族側には分かり辛いという特性を生かしての策だった。
(うーん、運命の番設定はちょっと微妙だったかしら? まあでもお陰でこんなにいい部屋与えて貰ったんだからいいか)
豪華な家具や調度品を見渡して満足するピケラだったが、ここで終わるつもりはなかった。
(お宝探しはご令嬢の婚約解消が終わった頃がいいかしら。そこが一番油断してそうね)
ピケラは盗賊だった。
情報収集から実行、盗品の売り飛ばしまで全てを一人でこなしてきた。
現在ではそうシャカリキにならなくても生活出来る位のものはあるが、ピケラはそこで満足するつもりはなかった。
(もっともっと――)
ピケラの両親は運命の番だった。
だが、父親は人族であり、運命の番としての感覚に慣れることがなかった。
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その後の両親のことはピケラは知らない。
まだ幼いピケラを置いて出て行った両親のことが今のピケラの人生観に影響しているのは想像に難くなかった。
何故ならエドモンドが婚約解消を終え、細やかなお祝いをしたその夜の内に『仕事』を終えたピケラは行方をくらましたのだから。
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