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バウムクーヘンエンド
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※サブ垢にて公開していました『バウムクーヘンエンド』をこちらへ移動致しました。間がだいぶ開いておりますので驚いた方もいらっしゃるかもしれませんが、アルファポリス様の規約改定を受けてまとめることにしましたm(__)m
【第一話】 忘れたのは君
二次会の誘いを断る僕にかかる声は軽い。
「ああ、やっぱりな」
「孤高の委員長様はそうだよな」
「ってかよく来てくれたよな。いくら幼なじみっていっても」
「笹原の人徳じゃね?」
「ほんとに人がいいからな」
笹原祥は、僕――園崎蓮の幼なじみ。
年少組の頃から一緒で家も近かったことから、祥の家にはよく遊びに行っていた。
だけど、だんだん行かなくなってしまった。
きっかけはたぶん他から見ればささいなこと。
成長するにつれて自覚させられたのだが、どうやら僕は和風イケメン、というカテゴリに属するらしい。
だがそんなことはこちらからすれば、毎日見ている顔で別に何の感慨もない。
特に意味はないと思って流していたが、学年が上がるにつれ、無視できなくなってきた。
班分けで僕の取り合いになるのは日常茶飯事。
席替えなんか地獄だ。
僕の隣りの席のくじ引きのくじが小学生では看過できない金額でやり取りされようとしたのを見たとき、鬱憤が爆発した。
ふざけるな、と。
僕は普通の人間だ。
勝手に人をブランド扱いするんじゃない。
その辺りから僕はあまり人と関わらなくなった。
挨拶は最小限。
何かにつけて関わろうとする輩には、理由を付けて関わらないことにした。
その頃には人と触れるどころか、近付くのさえイヤになっていた。
ついたあだ名が『孤高の委員長』。
実際に委員長をしていたから、そこまでおかしいとは思わなかったけれど、まあそれで人が寄り付かないならそれでいいと思った。
そのしわ寄せが祥に来るまでは。
【第二話】 君がいったのに
祥は初めての友達。
いつもにこにこしている祥を見てるとこちらも楽しく、どこかふわふわした気持ちになって。
『祥くん、好き!!』
気付いたらそう言っていた。
まだ四、五歳の子供の感情なんてそんなものだろう。
好きなモノは大好きでキライなものはキライ。
今ならそんなこと、絶対に言えないだろう。
だから、その後に祥がその丸い目をさらに丸くさせて草原に駆けて行った時、もしかして違ったのかと悲しくなった。
『これっ、だから――およめさんになってね』
白爪草で作った指輪が左手の中指に収まった時は二重の意味でびっくりしたものだ。
近くで見ていた先生が苦笑い、という顔で口を挟む。
『祥くん。指が違うわよ。お嫁さんに来て欲しいなら薬指ね』
まだ子供だからか――ママゴトの延長とでも思われたのだろう。
同性ということは咎められずに指輪の位置だけを直された。
『薬指?』
『そう。ここ。結婚する人は皆ここに指輪をするわね』
それを聞いた時対抗心が沸いた。
――皆と同じなんてイヤだ、と。
『ごめ、』
慌てて直そうとした祥にこのままでいい、と家まで持ち帰った白爪草は宝物。
【第三話】 君が大事だから
僕と幼なじみ、ということが広まると祥が苛められるようになった。
勿論すぐに止めに入った。
だけど皆の見方はあまり変わらなかった。
僕に気付かれないように行われる祥への嫌がらせ。
――僕が近づかなければ祥はこんな目に遭わなかったのに。
最終的には僕は祥からも距離を置いた。
本当のことを言えば祥は納得しなかっただろうから。
塾が増えた、委員会がある等理由をつけて遠ざけた。
あまりいい方法じゃなかったと思う。
だけどこの頃には祥への想いが本当に隠せなくなってきていて、隠そうとしたあまりキツい態度を取ってしまうこともしばしばで。
だから、これでいいと思った。
その後に聞いた。
君がとてもかわいくて素敵な女性と出会ったと。
お互いに天然だからお似合いなんじゃないか、とかいろいろ言われていたけれど、その彼女と君が籍を入れた。
僕に何も言えるはずもなかった。
いや、言えるか。
「おめでとう」
川原に投げた言葉が無人のそこに広がって行った。
――さようなら。
――完
タグ 【BL】【片想い】【初恋】【バウムクーヘンエンド】【心の整理に置いただけ】
【第一話】 忘れたのは君
二次会の誘いを断る僕にかかる声は軽い。
「ああ、やっぱりな」
「孤高の委員長様はそうだよな」
「ってかよく来てくれたよな。いくら幼なじみっていっても」
「笹原の人徳じゃね?」
「ほんとに人がいいからな」
笹原祥は、僕――園崎蓮の幼なじみ。
年少組の頃から一緒で家も近かったことから、祥の家にはよく遊びに行っていた。
だけど、だんだん行かなくなってしまった。
きっかけはたぶん他から見ればささいなこと。
成長するにつれて自覚させられたのだが、どうやら僕は和風イケメン、というカテゴリに属するらしい。
だがそんなことはこちらからすれば、毎日見ている顔で別に何の感慨もない。
特に意味はないと思って流していたが、学年が上がるにつれ、無視できなくなってきた。
班分けで僕の取り合いになるのは日常茶飯事。
席替えなんか地獄だ。
僕の隣りの席のくじ引きのくじが小学生では看過できない金額でやり取りされようとしたのを見たとき、鬱憤が爆発した。
ふざけるな、と。
僕は普通の人間だ。
勝手に人をブランド扱いするんじゃない。
その辺りから僕はあまり人と関わらなくなった。
挨拶は最小限。
何かにつけて関わろうとする輩には、理由を付けて関わらないことにした。
その頃には人と触れるどころか、近付くのさえイヤになっていた。
ついたあだ名が『孤高の委員長』。
実際に委員長をしていたから、そこまでおかしいとは思わなかったけれど、まあそれで人が寄り付かないならそれでいいと思った。
そのしわ寄せが祥に来るまでは。
【第二話】 君がいったのに
祥は初めての友達。
いつもにこにこしている祥を見てるとこちらも楽しく、どこかふわふわした気持ちになって。
『祥くん、好き!!』
気付いたらそう言っていた。
まだ四、五歳の子供の感情なんてそんなものだろう。
好きなモノは大好きでキライなものはキライ。
今ならそんなこと、絶対に言えないだろう。
だから、その後に祥がその丸い目をさらに丸くさせて草原に駆けて行った時、もしかして違ったのかと悲しくなった。
『これっ、だから――およめさんになってね』
白爪草で作った指輪が左手の中指に収まった時は二重の意味でびっくりしたものだ。
近くで見ていた先生が苦笑い、という顔で口を挟む。
『祥くん。指が違うわよ。お嫁さんに来て欲しいなら薬指ね』
まだ子供だからか――ママゴトの延長とでも思われたのだろう。
同性ということは咎められずに指輪の位置だけを直された。
『薬指?』
『そう。ここ。結婚する人は皆ここに指輪をするわね』
それを聞いた時対抗心が沸いた。
――皆と同じなんてイヤだ、と。
『ごめ、』
慌てて直そうとした祥にこのままでいい、と家まで持ち帰った白爪草は宝物。
【第三話】 君が大事だから
僕と幼なじみ、ということが広まると祥が苛められるようになった。
勿論すぐに止めに入った。
だけど皆の見方はあまり変わらなかった。
僕に気付かれないように行われる祥への嫌がらせ。
――僕が近づかなければ祥はこんな目に遭わなかったのに。
最終的には僕は祥からも距離を置いた。
本当のことを言えば祥は納得しなかっただろうから。
塾が増えた、委員会がある等理由をつけて遠ざけた。
あまりいい方法じゃなかったと思う。
だけどこの頃には祥への想いが本当に隠せなくなってきていて、隠そうとしたあまりキツい態度を取ってしまうこともしばしばで。
だから、これでいいと思った。
その後に聞いた。
君がとてもかわいくて素敵な女性と出会ったと。
お互いに天然だからお似合いなんじゃないか、とかいろいろ言われていたけれど、その彼女と君が籍を入れた。
僕に何も言えるはずもなかった。
いや、言えるか。
「おめでとう」
川原に投げた言葉が無人のそこに広がって行った。
――さようなら。
――完
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