気が付いたら断罪中でおまけに斬首寸前の公爵令嬢にinしていた完全犯罪主義者ですが何か?

神崎 ルナ

文字の大きさ
52 / 62

第五十二話 婚約は白紙ですか?

「「……」」

 しばらくの沈黙の後、先に口を開いたのはレンブラント公爵だった。

「まずは突然の来訪、済まなかった。私はシリウス・レンブラントという。君は?」
 
 それ、自己紹介としては合ってるけど、最後の三文字めっちゃ余計なやつ!!

 案の定、まなじりを釣り上げたカルベラがきっとレンブラント公爵を睨んだ。

「こちらはクリムト辺境伯邸になります。レンブラント公爵さまにはご機嫌麗しく。ご用件でございましたら向こうに行けば執事が取り計らってくれますでしょう」

 ――どうぞよしなに。

 言葉こそ丁寧だが表情が思い切り裏切ってるんですけど!!

 ひええ、とつい傍観しているとレンブラント公爵が眉を寄せた。

「クリムト辺境伯邸? ここが?」

 ん? ここがクリムト辺境伯邸で何かおかしなことでもあるのかな?

 それよりカルベラの不遜な態度についてはどうやら見なかったことにしてくれるらしい。

「確かクリムト辺境伯には御子が四人いるが、女性は二人。そのうち上の御子は嫁しているはずだから、君がフレイア嬢でいいのかな?」

 話には聞いていたんだけど、どうやらレンブラント公爵とフレイアってあんまり会ってなかったようなのよね。

 それにしてもこれは失礼じゃない?

 取り敢えず立ち上がりカーテシーを決めた。

「レンブラント公爵には久方ぶりになります。クリムト辺境伯が次女フレイアにございます」

 久方ぶり、ってちょっと嫌味に聞こえたかな。

 そう思っているとレンブラント公爵が、ああ、と声を上げた。

「これは失礼。どうやら知らせよりも早くこちらへ着いてしまったようだ」

 あ、そっちは大丈夫なので答えておこう。

「ご配慮痛み入りますが例の件に関してでしたらすでに受け取っております。後のことは父に確認をお願い致します」

 もうね。会う前は思ってたよ。

 婚約者のこと、少しは考えてるのかな、って。

 だけどこうやって顔を合わせてみると分かる。

 あ、もうだめですね。この方、こっちに関心ゼロだわ。

 こういうのって案外すぐ分かるんだよね。特にこちらが冷めてると余計に。

「何か気に障ったのなら謝るが」

「いえ。お気遣いなく」

 そこでカルベラにレンブラント公爵を邸へ案内するように指示すると渋面が返って来た。

「フレイア様をおひとりにすることなどできません」

 そう言われてもなあ。今の体調ではあんまり歩けないし。
 
「それではあなたも一緒に戻ればいいのでは?」
 
 レンブラント公爵の気遣いのある言葉は有り難いんだけど、ちょっとこっちの体調も考えて。

 逡巡しているうちにちょうどよく先ほどの音を聞きつけた騎士たちが来てくれた。

「今の音は何事ですか!? 何奴!!」

 レンブラント公爵を見るなり殺気立つ騎士たちに声を掛けておく。

「この方は敵ではありません。ちょうど良かったわ。レンブラント公爵をお父様のところへ案内してあげてくれる?」

 あれれ、レンブラント公爵って聞いた途端、更に殺気立ってきちゃった。

 そう言えば婚約白紙の件、いつの間にか知れ渡ってたんだよね。

「イルド、カイン。思うところがあるのは分かりますが、今はレンブラント公爵をお父様のところへ案内してくれるかしら」

「「はっ」」

 何とか彼らを宥めてレンブラント公爵の案内を頼む。

「それでは頼みましたよ」

「かしこまりました」

 彼らに先導されてレンブラント公爵の姿が木立ちの影に消えるとほっと息をつく。

 危なかった。気付かれてないよね。私があの廃墟で出会った江藤久遠だってこと。

 まあ大丈夫かな。こんなこと普通に考えたら有り得ないし、きっと思い付く人もいないだろうし。

「フレイア様。アレが邸内に入ってから戻りましょう」

 カルベラがどこか怒ったように話し掛けて来たけど、別にそこまで気にしてないんだけどな。

 ああ、今ため息なんてついちゃったからか。

「そうね」

 無難な言葉を選んで少し待ってから邸へと向かうことにした。

 





あなたにおすすめの小説

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

婚約破棄された竜好き令嬢は黒竜様に溺愛される。残念ですが、守護竜を捨てたこの国は滅亡するようですよ

水無瀬
ファンタジー
竜が好きで、三度のご飯より竜研究に没頭していた侯爵令嬢の私は、婚約者の王太子から婚約破棄を突きつけられる。 それだけでなく、この国をずっと守護してきた黒竜様を捨てると言うの。 黒竜様のことをずっと研究してきた私も、見せしめとして処刑されてしまうらしいです。 叶うなら、死ぬ前に一度でいいから黒竜様に会ってみたかったな。 ですが、私は知らなかった。 黒竜様はずっと私のそばで、私を見守ってくれていたのだ。 残念ですが、守護竜を捨てたこの国は滅亡するようですよ?

【完結】立場を弁えぬモブ令嬢Aは、ヒロインをぶっ潰し、ついでに恋も叶えちゃいます!

MEIKO
ファンタジー
最近まで死の病に冒されていたランドン伯爵家令嬢のアリシア。十六歳になったのを機に、胸をときめかせながら帝都学園にやって来た。「病も克服したし、今日からドキドキワクワクの学園生活が始まるんだわ!」そう思いながら一歩踏み入れた瞬間浮かれ過ぎてコケた。その時、突然奇妙な記憶が呼び醒まされる。見たこともない子爵家の令嬢ルーシーが、学園に通う見目麗しい男性達との恋模様を繰り広げる乙女ゲームの場面が、次から次へと思い浮かぶ。この記憶って、もしかして前世?かつての自分は、日本人の女子高生だったことを思い出す。そして目の前で転んでしまった私を心配そうに見つめる美しい令嬢キャロラインは、断罪される側の人間なのだと気付く…。「こんな見た目も心も綺麗な方が、そんな目に遭っていいいわけ!?」おまけに婚約者までもがヒロインに懸想していて、自分に見向きもしない。そう愕然としたアリシアは、自らキャロライン嬢の取り巻きAとなり、断罪を阻止し婚約者の目を覚まさせようと暗躍することを決める。ヒロインのヤロウ…赦すまじ!  笑って泣けるコメディです。この作品のアイデアが浮かんだ時、男女の恋愛以外には考えられず、BLじゃない物語は初挑戦です。貴族的表現を取り入れていますが、あくまで違う世界です。おかしいところもあるかと思いますが、ご了承下さいね。

悪役令嬢の身代わりで追放された侍女、北の地で才能を開花させ「氷の公爵」を溶かす

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の罪は、万死に値する!」 公爵令嬢アリアンヌの罪をすべて被せられ、侍女リリアは婚約破棄の茶番劇のスケープゴートにされた。 忠誠を尽くした主人に裏切られ、誰にも信じてもらえず王都を追放される彼女に手を差し伸べたのは、彼女を最も蔑んでいたはずの「氷の公爵」クロードだった。 「君が犯人でないことは、最初から分かっていた」 冷徹な仮面の裏に隠された真実と、予想外の庇護。 彼の領地で、リリアは内に秘めた驚くべき才能を開花させていく。 一方、有能な「影」を失った王太子と悪役令嬢は、自滅の道を転がり落ちていく。 これは、地味な侍女が全てを覆し、世界一の愛を手に入れる、痛快な逆転シンデレラストーリー。

【完結】成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世
恋愛
 異世界転生キタコレー! と、テンションアゲアゲのリアーヌだったが、なんとその世界は乙女ゲームの舞台となった世界だった⁉︎  えっあの『ギフト』⁉︎  えっ物語のスタートは来年⁉︎  ……ってことはつまり、攻略対象たちと同じ学園ライフを送れる……⁉︎  これも全て、ある日突然、貴族になってくれた両親のおかげねっ!  ーー……でもあのゲームに『リアーヌ・ボスハウト』なんてキャラが出てた記憶ないから……きっとキャラデザも無いようなモブ令嬢なんだろうな……  これは、ある日突然、貴族の仲間入りを果たしてしまった元日本人が、大好きなゲームの世界で元日本人かつ庶民ムーブをぶちかまし、知らず知らずのうちに周りの人間も巻き込んで騒動を起こしていく物語であるーー  果たしてリアーヌはこの世界で幸せになれるのか?  周りの人間たちは無事でいられるのかーー⁉︎

『お前の顔は見飽きた!』内心ガッツポーズで辺境へ

夏乃みのり
恋愛
「リーナ・フォン・アトラス! 貴様との婚約を破棄する!」 華やかな王宮の夜会で、第一王子ジュリアンに突きつけられた非情な宣告。冤罪を被せられ、冷酷な悪役令嬢として追放を言い渡されたリーナだったが、彼女の内心は……「やったーーー! これでやっとトレーニングに専念できるわ!」と歓喜に震えていた!

世継ぎは他の妃が産めばいい——子を産めない私ですが、帝の寵愛を独占して皇后になりました

由香
恋愛
後宮に入る女の価値は、ただ一つ。 ——皇子を産めるかどうか。 けれど私は、産めない。 ならば—— 「世継ぎは他の妃に任せます。私は、陛下に愛される女になります」 そう言い放ったその日から、すべてが狂い始めた。 毒を盛られても、捨てられず。 皇子が生まれても、選ばれたのは私だった。 「お前は、ここにいろ」 これは、子を産めない女が ただ一つの武器“寵愛”だけで頂点に立つ物語。 そして—— その寵愛は、やがて狂気に変わる。

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。