気が付いたら断罪中でおまけに斬首寸前の公爵令嬢にinしていた完全犯罪主義者ですが何か?

神崎 ルナ

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第五十四話 マリー・ゴホーン男爵令嬢 side ⑥

 息を切らせてるトマスには悪いけど、後ろから追っ手が来てるんだけど!!

 とそこでトマスが何か魔道具っぽいものを取り出した。

「これっ、転移の魔道具!! これに魔力を込めて!!」

 やたっ、超ラッキー!!

 行き先を言われなかったのが気になったけど、これで脱出できるわ!!

 それで着いたのがタリ男爵邸って、うん、分かってたけどね。

「こっちだよ。お父様たちはこの件に関してあんまりいい態度じゃなかったから」

 そう言われて案内されたのは離れだった。

 何でも以前変わり者の親戚が研究していたところみたい。

 別にそんなの興味ないけどね。それよりも何とかここからジュズワーズ様とのハピエン大逆転劇を目指すんだから!!

 と思っていたけど、後で暇な時にその研究室を覗いてびっくりしてしまった。

 ちょ、何よこれ。

 適当に机に置かれた細かい部品。

 埃のたまったそれらよりも気になったのは書類に書かれていた文字だった。

 何よ『実験記録』って日本語で書いてあるじゃない!!

 え、ちょっと待って乙女ゲームでこんな設定ないわよ!!

 もしかしなくても転生者よね、これ書いた人!!

 ってことはひょっとしてこの転生者のせいでいろいろ何か変わっちゃったってことなの?

 そう言えばあの悪役令嬢もそうよね。

 何よそれ、絶対許せないんだから!!

 とりあえずぱらぱら捲って見るとこれってアレよね? 黒色火薬でも代用できるよね?

 研究は何か火薬が上手く調達できなかったところで終わってるみたい。

 ええー、これ作る方が難しいんじゃないの?

 そこで机の上に散らばっている部品を見る。

 たぶんこれ、ノートを見ながらなら何とか組み立てられるんじゃない。

 実物は前の世界ではじっくり見たことなんてなかったけど、マンガとかアニメとか映画とかでは嫌になるほど見たし、ちょっとだけ気になってクグッたこともあるから大体の仕組みは分かってるんだ。

 誰だっけ? 俺のマグナムがどうたら、って言ってたの?

 ちょうどいいことにトマスの家は男爵家って言っても元は商人だしね。

「え? 魔力を使わなくても攻撃魔法並みの威力が出せる武器?」

 ほら、食い付いた。

 ついでに後から話を聞いたタリ男爵まで食い付いた。

「それは本当かね? もしそうならとんでもないことになるぞ」

「ええ」

 にっこりと頷いて必要な人材や材料などをリストにする。

 この書いてあるの見た感じだと何か結構時間かかりそうなんだけど、できればもっと早く仕上げたいわね。

 トマスに聞いた話だとダクソンとアルトは裁判待ちで自分の邸に軟禁状態みたい。
 
 だからトマスしか来れなかったのね。
 
 トマスも同じルートになるはずだったんだけど、直接的には関わってない、ということでかなりの金額の罰金を払うことで話がついたみたい。

 お金で解決するなんて流石商人上がりね。

 全国(?)の商人さんたちが聞いたら怒られそうだから、ここはスルーでね。

 ってことで行ってみよう、武器開発!!

 何と驚いたことにこの研究、内容が全部日本語で書かれていたから誰にも読めなかったみたい。

「凄いね。これってどこの国の言葉なの?」
 
 トマスに聞かれてごまかすのにちょっと苦労したけど。

「ずっと東の方の国かな。何年か前に街で出会った人が教えてくれたの」

 めちゃくちゃ適当な誤魔化し方だったけれど、魔力が要らない強力な武器の方が魅力的だったみたいでそこはスルーされた。

 ただ実物がまだないから説明に少し手間取ったけれど、例の黒色火薬が装填できる、って言ったら目の色変わったわね。

「あれを? それはまた素晴らしいですな」

 ちなみに実はこっそり別ルートでこっちでも黒色火薬を作っていたりする。

 こっちのルートは遠くから材料を運ぶのではなく、その場で作る、って方法だったせいかあまり目立たずにできた。

 ん? それならランジェロ伯爵のところでもそうすればよかったんじゃないかって?

 そうしたかったけど、作る場所が上手く確保できなかったのよね。

 あれさえなければきっと絶対見付からなかったと思うわよ。

 そうして離れの研究室と新しく建てた離れを活用して武器の開発が始まり――一月後。

「できた」

 感慨深げに呟くトマスの手には一丁の拳銃があった。

 出来たわよ、これぞチートよチート!! やったわね、私にもついにチートが発動よ!!

 え? 先に手掛けてたのは他の転生者? そんなもんしーらないっと。

 言わなけりゃ分からないわよ。

 って言っても出来たのはまだこの一丁だけだけど。

 この期間で出来たのが早いのか遅いのか私にはよく分からないけど、とにかくこれでまた何か事件起こしてそこを私が解決して、ジュズワーズ様とハピエンになるのよ!!

 そう張り切っていた私の耳に有り得ない名が聞こえたのもこの時だった。

 トマスが何気ない世間話のように話し掛けて来たのだ。

「そう言えば知ってる? あのレンブラント公爵が婚約解消するって」

「は?」

 レンブラント公爵って確か乙女ゲームだと、年の離れた相手と婚約結んでいたけど近年そのお相手が亡くなってしまって、禁忌と言われる闇魔法に手を出した、ってキャラなんだよね。

 ん? これってどういうこと? 婚約相手のロリっ子ってまだ生きてるの?

 トマスが銃をいじりながら話を続ける。

「何か他に好きな相手ができたからなんじゃないか、とか言われてるけど、マリーのことじゃないよね?」

「まさか。違うわよ」

 否定するとトマスはほっとしたみたいだった。

「よかった」

 それよりそのロリっ子よ、どうして生きてるの!?

 もしかしてその子も転生者か何かでだから乙女ゲームの世界がおかしくなったってこと!?

 ああ、でもとトマスが続けた。

「その辺境伯令嬢だったかな。体が弱くて最近まで臥せっていた、ってことだからやっぱり体が弱い相手は止めよう、とでも思ったのかな」
 
 そういうことなら有り得そうだけど、なーんか気になるよのね。
 
 確か転生者って一度寝たきりになってから記憶覚醒、っていうパターンとかあるっていうし。

 そこで私はとっておきの笑みを見せた。

「ねぇ、トマス」

「何?」

 もうこの時点でトマスはうっとりとした表情になっていた。

 よし、下僕化完了、って前からそうだけどね。

「その辺境伯令嬢のお見舞い、行ってみない?」





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