18 / 46
18.
しおりを挟む
「………………おま、…………え?お前、…………う、嘘だろ?そんなわけねぇよ」
馬鹿な。騙されるな俺。そんなわけがない。あの美晴と夜を共にして手を出さない男なんかこの俗世に存在するわけねーだろ。こいつは俺を一瞬浮かれさせて地獄に叩き落とそうとしてやがるんだ。悪魔だこいつは。騙されるな。
「いいや、本当だぞ。ははは。俺は美晴に手を出していない。キスもしたことないんだぞ。…なんていうか、俺の中にずっと迷いがあってな。海外に仕事の拠点があって、しかも年がら年中世界中を飛び回ってるだろ?ほとんどそばにもいてやれないのに、若いこいつの人生を俺に縛り付けてしまっていいのかってさ。そういうこと考えてたらな、……好きだけど簡単に手を出してはいけないと思ったんだ」
「……………………お、」
……おぉぉ………………!!
こ、こいつ、……なんだよこいついいヤツじゃねぇか…………!!そうかそうか、美晴とヤッてねぇのか!そうか!!
死ぬほど大嫌いだったはずの大輝に突如後光が差しはじめる。
「菩薩かよお前!!すげぇな!尊敬するわ!」
「ははは…、いや、……単に俺には覚悟が足りなかったんだ。いろいろとな。本当にこれでいいのか、美晴を一生守ってやれるのか、ってさ。…………それにな、これは美晴には言ってないんだが、俺の親は俺が結婚していつか孫を抱ける日が来ることをものすごく楽しみにしててな。たまに帰ればいつもそればかり言うもんだからさ。……そういう意味の迷いもあったんだ。覚悟がないまま抱くのは卑怯だと思ったんだ」
「オッケーオッケー。んじゃ俺は今すぐ美晴を抱いてもいいわけだな。よし」
俺は一気に舞い上がっていた。よかった。やっぱりあいつはウブで純真無垢なままだったんだな。いや別に俺と出会う前に他の男に抱かれた経験があるからってそれで気持ちが冷めることは絶対に有り得ねぇけど、やっぱり誰のものにもなっていないのだと思うと単純にめちゃくちゃ嬉しい。
「……お前にはないのか?そういう迷いは」
「あるわけねーだろうがそんなの。美晴を失うことに比べたら何でもねーよ。俺がお前の立場なら美晴が卒業したら口説き落として世界中連れ回すしな。親が孫の顔見せろってしつこく言うならはっきり断るわ。親孝行は別のかたちでするから黙ってろ、本当にすんません!って言うわ」
「…………そうか」
そうか……!美晴、こいつとヤッてねぇのか……!まだ誰とも……そうか……!
いつまでも美晴がこいつに食われていない喜びに浸ってニヤけていたら、大輝が俺をじっと見ながらポツリと言った。
「……この違いか。俺が今美晴のそばにいられないのは……」
「……あ?」
「いや、…じゃあ俺は行く!またな、響!」
「おぉ!元気でな!しっかり稼げよ!」
先ほどとは打って変わって、俺は満面の笑みで快く大輝を送り出した。
鼻歌を歌いながらエレベーターを上がって部屋に入る。だが静かな部屋に入ると、途端に我に返った。
(……いや別にさ、だからといって俺が今すぐ美晴を抱けるわけでもねーんだよな。…それどころか、いつか抱ける日が来るかどうかも分からねぇのに。……何を浮かれまくってんだか、俺は)
そう。俺は美晴に固く誓ったんだ。あの夜に。あの人生最大の大失敗をしてしまった夜に。もう絶対に二度と美晴に対してそういうことはしないと。一生清く正しい友人関係のままだと。
今でもはっきりと覚えている。あの時、俺に怯えて泣きながら部屋から逃げ出そうとした美晴を引き留めて必死で謝り倒した時の、あの涙に濡れた美晴の恨みがましい目。
……そして……、
『………………今度何かしたら、………………ブロックするから』
「………………はぁぁぁぁ……」
さっきまであんなに浮かれていたくせに、冷静になると急に落ち込む。そうだった。大輝の前ではあたかも恋人であるかのように「美晴をよろしくな!」「おう!」みたいなノリでいたけど、そもそも俺は一生美晴の恋人になれないかもしれないのだ。…いやむしろ今のところそっちの可能性の方が高い。
「……そうだったなぁ……。…アホか俺は」
一人でムカついたり浮かれたり沈んだり。
この年になって、俺は初めての真剣な恋に振り回されっぱなしだった。
それも完全なる片想いに。
馬鹿な。騙されるな俺。そんなわけがない。あの美晴と夜を共にして手を出さない男なんかこの俗世に存在するわけねーだろ。こいつは俺を一瞬浮かれさせて地獄に叩き落とそうとしてやがるんだ。悪魔だこいつは。騙されるな。
「いいや、本当だぞ。ははは。俺は美晴に手を出していない。キスもしたことないんだぞ。…なんていうか、俺の中にずっと迷いがあってな。海外に仕事の拠点があって、しかも年がら年中世界中を飛び回ってるだろ?ほとんどそばにもいてやれないのに、若いこいつの人生を俺に縛り付けてしまっていいのかってさ。そういうこと考えてたらな、……好きだけど簡単に手を出してはいけないと思ったんだ」
「……………………お、」
……おぉぉ………………!!
こ、こいつ、……なんだよこいついいヤツじゃねぇか…………!!そうかそうか、美晴とヤッてねぇのか!そうか!!
死ぬほど大嫌いだったはずの大輝に突如後光が差しはじめる。
「菩薩かよお前!!すげぇな!尊敬するわ!」
「ははは…、いや、……単に俺には覚悟が足りなかったんだ。いろいろとな。本当にこれでいいのか、美晴を一生守ってやれるのか、ってさ。…………それにな、これは美晴には言ってないんだが、俺の親は俺が結婚していつか孫を抱ける日が来ることをものすごく楽しみにしててな。たまに帰ればいつもそればかり言うもんだからさ。……そういう意味の迷いもあったんだ。覚悟がないまま抱くのは卑怯だと思ったんだ」
「オッケーオッケー。んじゃ俺は今すぐ美晴を抱いてもいいわけだな。よし」
俺は一気に舞い上がっていた。よかった。やっぱりあいつはウブで純真無垢なままだったんだな。いや別に俺と出会う前に他の男に抱かれた経験があるからってそれで気持ちが冷めることは絶対に有り得ねぇけど、やっぱり誰のものにもなっていないのだと思うと単純にめちゃくちゃ嬉しい。
「……お前にはないのか?そういう迷いは」
「あるわけねーだろうがそんなの。美晴を失うことに比べたら何でもねーよ。俺がお前の立場なら美晴が卒業したら口説き落として世界中連れ回すしな。親が孫の顔見せろってしつこく言うならはっきり断るわ。親孝行は別のかたちでするから黙ってろ、本当にすんません!って言うわ」
「…………そうか」
そうか……!美晴、こいつとヤッてねぇのか……!まだ誰とも……そうか……!
いつまでも美晴がこいつに食われていない喜びに浸ってニヤけていたら、大輝が俺をじっと見ながらポツリと言った。
「……この違いか。俺が今美晴のそばにいられないのは……」
「……あ?」
「いや、…じゃあ俺は行く!またな、響!」
「おぉ!元気でな!しっかり稼げよ!」
先ほどとは打って変わって、俺は満面の笑みで快く大輝を送り出した。
鼻歌を歌いながらエレベーターを上がって部屋に入る。だが静かな部屋に入ると、途端に我に返った。
(……いや別にさ、だからといって俺が今すぐ美晴を抱けるわけでもねーんだよな。…それどころか、いつか抱ける日が来るかどうかも分からねぇのに。……何を浮かれまくってんだか、俺は)
そう。俺は美晴に固く誓ったんだ。あの夜に。あの人生最大の大失敗をしてしまった夜に。もう絶対に二度と美晴に対してそういうことはしないと。一生清く正しい友人関係のままだと。
今でもはっきりと覚えている。あの時、俺に怯えて泣きながら部屋から逃げ出そうとした美晴を引き留めて必死で謝り倒した時の、あの涙に濡れた美晴の恨みがましい目。
……そして……、
『………………今度何かしたら、………………ブロックするから』
「………………はぁぁぁぁ……」
さっきまであんなに浮かれていたくせに、冷静になると急に落ち込む。そうだった。大輝の前ではあたかも恋人であるかのように「美晴をよろしくな!」「おう!」みたいなノリでいたけど、そもそも俺は一生美晴の恋人になれないかもしれないのだ。…いやむしろ今のところそっちの可能性の方が高い。
「……そうだったなぁ……。…アホか俺は」
一人でムカついたり浮かれたり沈んだり。
この年になって、俺は初めての真剣な恋に振り回されっぱなしだった。
それも完全なる片想いに。
43
あなたにおすすめの小説
女子にモテる極上のイケメンな幼馴染(男)は、ずっと俺に片思いしてたらしいです。
山法師
BL
南野奏夜(みなみの そうや)、総合大学の一年生。彼には同じ大学に通う同い年の幼馴染がいる。橘圭介(たちばな けいすけ)というイケメンの権化のような幼馴染は、イケメンの権化ゆえに女子にモテ、いつも彼女がいる……が、なぜか彼女と長続きしない男だった。
彼女ができて、付き合って、数ヶ月しないで彼女と別れて泣く圭介を、奏夜が慰める。そして、モテる幼馴染である圭介なので、彼にはまた彼女ができる。
そんな日々の中で、今日もまた「別れた」と連絡を寄越してきた圭介に会いに行くと、こう言われた。
「そーちゃん、キスさせて」
その日を境に、奏夜と圭介の関係は変化していく。
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。
【完結】ネクラ実況者、人気配信者に狙われる
ちょんす
BL
自分の居場所がほしくて始めたゲーム実況。けれど、現実は甘くない。再生数は伸びず、コメントもほとんどつかない。いつしか実況は、夢を叶える手段ではなく、自分の無価値さを突きつける“鏡”のようになっていた。
そんなある日、届いた一通のDM。送信者の名前は、俺が心から尊敬している大人気実況者「桐山キリト」。まさかと思いながらも、なりすましだと決めつけて無視しようとした。……でも、その相手は、本物だった。
「一緒にコラボ配信、しない?」
顔も知らない。会ったこともない。でも、画面の向こうから届いた言葉が、少しずつ、俺の心を変えていく。
これは、ネクラ実況者と人気配信者の、すれ違いとまっすぐな好意が交差する、ネット発ラブストーリー。
※プロットや構成をAIに相談しながら制作しています。執筆・仕上げはすべて自分で行っています。
肩甲骨に薔薇の種(アルファポリス版・完結済)
おにぎり1000米
BL
エンジニアの三波朋晴はモデルに間違われることもある美形のオメガだが、学生の頃から誰とも固定した関係を持つことができないでいる。しかしとあるきっかけで年上のベータ、佐枝峡と出会い、好意をもつが…
*オメガバース(独自設定あり)ベータ×オメガ 年齢差カプ
*『まばゆいほどに深い闇』の脇キャラによるスピンオフなので、キャラクターがかぶります。本編+後日談。他サイト掲載作品の改稿修正版につきアルファポリス版としましたが、内容はあまり変わりません。
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
【本編完結】黒歴史の初恋から逃げられない
ゆきりんご
BL
同性の幼馴染である美也に「僕とケッコンしよう」と告げた過去を持つ志悠。しかし小学生の時に「男が男を好きになるなんておかしい」と言われ、いじめにあう。美也に迷惑をかけないように距離を置くことにした。高校は別々になるように家から離れたところを選んだが、同じ高校に進学してしまった。それでもどうにか距離を置こうとする志悠だったが、美也の所属するバレーボール部のマネージャーになってしまう。
部員とマネージャーの、すれ違いじれじれラブ。
ド陰キャが海外スパダリに溺愛される話
NANiMO
BL
人生に疲れた有宮ハイネは、日本に滞在中のアメリカ人、トーマスに助けられる。しかもなんたる偶然か、トーマスはハイネと交流を続けてきたネット友達で……?
「きみさえよければ、ここに住まない?」
トーマスの提案で、奇妙な同居生活がスタートするが………
距離が近い!
甘やかしが過ぎる!
自己肯定感低すぎ男、ハイネは、この溺愛を耐え抜くことができるのか!?
男同士で番だなんてあってたまるかよ
だいたい石田
BL
石堂徹は、大学の授業中に居眠りをしていた。目覚めたら見知らぬ場所で、隣に寝ていた男にキスをされる。茫然とする徹に男は告げる。「お前は俺の番だ。」と。
――男同士で番だなんてあってたまるかよ!!!
※R描写がメインのお話となります。
この作品は、ムーンライト、ピクシブにて別HNにて投稿しています。
毎日21時に更新されます。8話で完結します。
2019年12月18日追記
カテゴリを「恋愛」から「BL」に変更いたしました。
カテゴリを間違えてすみませんでした。
ご指摘ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる