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本編
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夜会も終わり一息。お姉様達とお約束した部屋で待っていると口付をねだられる。
お姉様達が来る前にと一度。するとすぐさま訪いの報せ。
また後でと笑うので意地悪ねと言えば楽しそうにするのです。
お姉様達がいらっしゃると、改めてと自己紹介をリヒトへ。そんなことよろしいのに、と言うけれど自身を知っていただくのは必要な事と仰られました。
リヒトはイーリヤお姉様とティアお姉様から好意的に迎えられているようです。
「この子がお嫁にと聞いて。お付きの、彼らの誰かという形かしらと思っていたらセルデスディアに、と聞いてびっくりしましたのよ」
本当にこの子で良かったのです? とティアお姉様は仰る。続けてイーリヤお姉様も我儘でしょうと仰られるのです。
「そうそう、それから心無い噂を他の方から聞きましたのよ」
「心無い?」
「ええ。嫁いで一年もたつのに子ができないのは、という」
それは大丈夫なの、と問われてもいるようでした。
わたくしがリヒトに視線向けると頷いています。それは言って良いという事。
よくない噂を覆すには、しかるべきところから情報が出るべきだろうと。
それがお前の姉なら、十分というところ。
「お姉様達、わたくしあちらの国にいる間、ずっと薬を飲んでましたの」
「薬?」
「ええ。これは国王様、王妃様もご存知です。嫁いで体調が整わないうちに身籠って何かあっては、と……ですから、今まではそういった話がなくて当たり前なのです」
「殿下も同意の上ですのね」
「ああ。母上もそうした方が良いと仰って。隠し立てする話でもないからな」
お姉様達はほっとしているようでした。それから、セレンファーレさんの事が終わったらという話をしているのだとも伝えておきました。
「それならこの一年以内が勝負ね」
「そうね。体を大切にして、殿下と励みなさい」
「お、お姉様達……」
何を仰っているのかしら、とわたくしは呆れてしまう。リヒトはその言葉に笑って大丈夫だとお姉様達に言うのです。
「いつでも私は愛でたいのだが、これがなかなか許してくれない。お二人からも言って聞かせてくれ」
「ちょ、そんなことありませんわ!」
何を仰るのと睨むと、お姉様達は楽しげに笑い始めました。
お前もそんな顔を、ちゃんとするのねと。
「本当に心配していたのよ。この子変わっているからうまくやれているのかしらって」
「そうそう。みんなから話を聞いては本当に? と思っていたのだけれど……本当に仲が良いのね」
そう言って笑う。わたくしはそう言われてむず痒いばかり。
けれどころころと笑っていたお姉様達がそれを突然止められたのです。
「笑ってばかりもいられないわ。心無い噂というのは、いつものあの三人からなのよ」
「そう、それから……ずっとお前に言い寄っていた男。西方の次男とダーダトアの娘が婚約するそうよ」
「あまり良い噂を聞かないのよね……」
「そういえばダーダトア家は事業に失敗してましたのに、婚約なんて。ああ、支度金などで賄うのかしら」
「それくらいでは事業の痛手を埋められないと思うわ」
イーリヤお姉様は商売をしておられますからそういった話も耳に入ってくるのでしょう。
軽く見積もって、あの損害はこれくらいではと紡いだのはへたな領地が一つ、一年養えるほど。
どう考えても大失敗でしょう。
「まぁ、あまり良い感じはしない話よ」
それから、イーリヤお姉様からは商売の話を。
旦那様もお付きになられたみたいなのでまた後日二人そろってのお約束を。
ティアお姉様は息子も連れてきているのでとお話してくれました。まだ幼いので夜会には連れてこなかったのだけれど、と。
「それから、殿下の従妹姫と皆様、お近づきに成りたいと私たちにお話が来てますのよ」
「ガーデンパーティーを公爵家でしますので、その時にお話の機会をという様にしておきましたから」
お姉様達自身もセレンファーレさんとお話をしてみたいと仰っています。
リヒトはセレンの都合もあるだろうがいつでもどうぞと笑っていました。
そして時間も良い頃、お姉様達はお帰りになると言うのでわたくしたちもお見送りに。
するとティアお姉様がわたくしの傍にやってきて、するりと腰を撫でられました。
「どうしましたの?」
「……太ったのではなくて?」
「そう! そう思うでしょう? 私もそう思っていて」
「そんなことありませんわ」
そんなことあるわよとお二人口を揃えて。リヒトは面白そうに見ているので睨むと笑みをたたえ。
「太っているとは思わない。抱き心地はとてもいいからな」
「まぁ、よかったわね、アーデルハイト」
「ふふ。大事にしてもらっていて何よりよ」
わたくしをおちょくって遊んでいらっしゃる。
お姉様達はご機嫌で帰って行かれ、わたくしはどっと疲れてしまったような。そんな気持ちでした。
なんと言うかパワフルなのです。
「お前の姉達は愉快だな」
「愉快だなんて……まぁ、そう言えなくもありませんけれど」
お姉様達は楽しんでおられるのです。
後日またお会いしますけれど、きっとまた余計なことを言うのでしょう。
それにしても。
二人共から太ったのではと言われるなんて。
ほ、本当に太ったのかしら。けれどドレスのサイズなどは何もかわってませんのよ。
「……ねぇ、リヒト」
「なんだ」
「わたくし、その……体型変わったりしました?」
「…………気にしているんだな」
ぷっと吹き出してくつくつと笑う。
も、もう! と軽く叩けばいなされて気にすることは無いと言われたのですけれど。
わたくしはちょっと不安になるのでした。
お姉様達が来る前にと一度。するとすぐさま訪いの報せ。
また後でと笑うので意地悪ねと言えば楽しそうにするのです。
お姉様達がいらっしゃると、改めてと自己紹介をリヒトへ。そんなことよろしいのに、と言うけれど自身を知っていただくのは必要な事と仰られました。
リヒトはイーリヤお姉様とティアお姉様から好意的に迎えられているようです。
「この子がお嫁にと聞いて。お付きの、彼らの誰かという形かしらと思っていたらセルデスディアに、と聞いてびっくりしましたのよ」
本当にこの子で良かったのです? とティアお姉様は仰る。続けてイーリヤお姉様も我儘でしょうと仰られるのです。
「そうそう、それから心無い噂を他の方から聞きましたのよ」
「心無い?」
「ええ。嫁いで一年もたつのに子ができないのは、という」
それは大丈夫なの、と問われてもいるようでした。
わたくしがリヒトに視線向けると頷いています。それは言って良いという事。
よくない噂を覆すには、しかるべきところから情報が出るべきだろうと。
それがお前の姉なら、十分というところ。
「お姉様達、わたくしあちらの国にいる間、ずっと薬を飲んでましたの」
「薬?」
「ええ。これは国王様、王妃様もご存知です。嫁いで体調が整わないうちに身籠って何かあっては、と……ですから、今まではそういった話がなくて当たり前なのです」
「殿下も同意の上ですのね」
「ああ。母上もそうした方が良いと仰って。隠し立てする話でもないからな」
お姉様達はほっとしているようでした。それから、セレンファーレさんの事が終わったらという話をしているのだとも伝えておきました。
「それならこの一年以内が勝負ね」
「そうね。体を大切にして、殿下と励みなさい」
「お、お姉様達……」
何を仰っているのかしら、とわたくしは呆れてしまう。リヒトはその言葉に笑って大丈夫だとお姉様達に言うのです。
「いつでも私は愛でたいのだが、これがなかなか許してくれない。お二人からも言って聞かせてくれ」
「ちょ、そんなことありませんわ!」
何を仰るのと睨むと、お姉様達は楽しげに笑い始めました。
お前もそんな顔を、ちゃんとするのねと。
「本当に心配していたのよ。この子変わっているからうまくやれているのかしらって」
「そうそう。みんなから話を聞いては本当に? と思っていたのだけれど……本当に仲が良いのね」
そう言って笑う。わたくしはそう言われてむず痒いばかり。
けれどころころと笑っていたお姉様達がそれを突然止められたのです。
「笑ってばかりもいられないわ。心無い噂というのは、いつものあの三人からなのよ」
「そう、それから……ずっとお前に言い寄っていた男。西方の次男とダーダトアの娘が婚約するそうよ」
「あまり良い噂を聞かないのよね……」
「そういえばダーダトア家は事業に失敗してましたのに、婚約なんて。ああ、支度金などで賄うのかしら」
「それくらいでは事業の痛手を埋められないと思うわ」
イーリヤお姉様は商売をしておられますからそういった話も耳に入ってくるのでしょう。
軽く見積もって、あの損害はこれくらいではと紡いだのはへたな領地が一つ、一年養えるほど。
どう考えても大失敗でしょう。
「まぁ、あまり良い感じはしない話よ」
それから、イーリヤお姉様からは商売の話を。
旦那様もお付きになられたみたいなのでまた後日二人そろってのお約束を。
ティアお姉様は息子も連れてきているのでとお話してくれました。まだ幼いので夜会には連れてこなかったのだけれど、と。
「それから、殿下の従妹姫と皆様、お近づきに成りたいと私たちにお話が来てますのよ」
「ガーデンパーティーを公爵家でしますので、その時にお話の機会をという様にしておきましたから」
お姉様達自身もセレンファーレさんとお話をしてみたいと仰っています。
リヒトはセレンの都合もあるだろうがいつでもどうぞと笑っていました。
そして時間も良い頃、お姉様達はお帰りになると言うのでわたくしたちもお見送りに。
するとティアお姉様がわたくしの傍にやってきて、するりと腰を撫でられました。
「どうしましたの?」
「……太ったのではなくて?」
「そう! そう思うでしょう? 私もそう思っていて」
「そんなことありませんわ」
そんなことあるわよとお二人口を揃えて。リヒトは面白そうに見ているので睨むと笑みをたたえ。
「太っているとは思わない。抱き心地はとてもいいからな」
「まぁ、よかったわね、アーデルハイト」
「ふふ。大事にしてもらっていて何よりよ」
わたくしをおちょくって遊んでいらっしゃる。
お姉様達はご機嫌で帰って行かれ、わたくしはどっと疲れてしまったような。そんな気持ちでした。
なんと言うかパワフルなのです。
「お前の姉達は愉快だな」
「愉快だなんて……まぁ、そう言えなくもありませんけれど」
お姉様達は楽しんでおられるのです。
後日またお会いしますけれど、きっとまた余計なことを言うのでしょう。
それにしても。
二人共から太ったのではと言われるなんて。
ほ、本当に太ったのかしら。けれどドレスのサイズなどは何もかわってませんのよ。
「……ねぇ、リヒト」
「なんだ」
「わたくし、その……体型変わったりしました?」
「…………気にしているんだな」
ぷっと吹き出してくつくつと笑う。
も、もう! と軽く叩けばいなされて気にすることは無いと言われたのですけれど。
わたくしはちょっと不安になるのでした。
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