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第三章 無計画な告白
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夜会は晩餐会よりも規模が大きく、下位の貴族も多く参加していた。キャサリンにとっては初めて会う貴族も多く、初お披露目の場と言っても過言ではない。
キャサリンは瞳の色と合わせたドレープの美しい水色のドレスを着ていた。美しいドレスで人目を引いているが、特に目立つのはその色である。
「なぜ大公妃殿下は赤いドレスを着ていないのかしら?」
「バッツドルフ公はドレスを贈られていないのでは?」
「やはり突然の政略結婚でお心が伴わないのね。」
ち、違う!いや、違わないが、しかし、違うのだ。別に不仲に見せるためにドレスを贈らなかったわけではないのだ。ただ、忘れていた。
そういえば、ヨーゼフは元婚約者であるクラウディアにドレスを贈ったことはなかった。クラウディアはいつも自分でドレスを用意し、わきまえて赤をデザインに取り入れていた。
ヨーゼフがドレスを贈るのはマリアだけ。しかし、マリアも正妻ではないので赤いドレスを贈ったことはない。マリアにはいつも赤いドレスをせがまれるが、一度も送ったことはなかった。むしろ仮面舞踏会ぐらいでしか赤いドレスは着れないので、ああいう場ではそういった系統の色が多くなるにも関わらず、だ。
話がずれたが、ヨーゼフはキャサリンが当然、赤いドレスを着てくるものと思っていたのだ。ヨーゼフの妻である立場を重視し、ヨーゼフに恥をかかせぬように、赤いドレスを選ぶだろうと。
しかし、キャサリンは違った。ヨーゼフを思いやるつもりなど欠片もないのだ。
「けれど、どうしてキャサリン様は赤いドレスを選ばなかったのかしら。自分で仕立てることもできたでしょう?」
「それすらもバッツドルフ公は許されなかったのよ。心が狭い方なのね。」
「そういえば、愛人がいらっしゃるのだったわね。」
消え去っていたマリアの噂まで復活し、ヨーゼフが悪い男になっていく。
キャサリンと大使夫人は手紙をやり取りするほどの仲になり、外交は成功したが、ヨーゼフの評判は下がってしまった。
ーーーー
この社交の後、数日はマリアの機嫌がとてもよかった。
「ヨーゼフ様ったら、あの女に赤いドレスを着せなかったのよね。嬉しいわ。」
「…なぜ、マリアがそれを知っているんだい?」
「新聞に出ていたわよ。」
また例の平民向けのゴシップ紙である。いったいどうやって手に入れているのか。
「私のことも書かれているの。『麗しの大公の秘密の愛人』って。」
思わずマリアの手から新聞をひったくり、中身に目を通すと事実をもとに面白おかしく脚色されたストーリーがのっていた。
曰く、ヨーゼフはかつて運命の姫だと断言した相手を屋敷の離れに囲い、異国からの奥方をないがしろにしている。
曰く、奥方を蔑み、愛人を優遇するただれた私生活をおくっている。
曰く、奥方に王族に連なる家に嫁いだ証である赤いドレスを着せずに、愛人には真っ赤なドレスばかり与えている。
どれもキャサリンを擁護し、ヨーゼフを悪く言うものばかりだ。それでもマリアは自分が世間で話題になることが嬉しいらしい。
「次の夜会では赤いドレスを着たいわ!いいわよね、ヨーゼフ様?」
浮かれるマリアに思わず冷めた目を剥けてしまう。
「赤いドレスが多いから、同じ色では夜会で目立てないよ。」
こう言うとマリアは納得する。この日もそうだった。
ーーーー
キャサリンが社交の場に出るとヨーゼフの名が下がる。まるで仕組まれたかのようにそのようなことが続いた。そんなある日、ヨーゼフが一月ほど隣国オールディーへ女王の即位式に参加することが決まった。
もちろん、妻であるキャサリンを伴って。
「今回は私に赤いドレスを贈らせてほしい。」
「今更、結構ですわ。」
朝食の席でキャサリンは贈り物を断ってきた。しかし、今回はそういうわけには行かないのだ。
「訪問先のオールディーには私にしつこく求婚してきていた令嬢がいるんだ。君が赤いドレスを着ていなければ、三国を交えた問題になってしまうかもしれない。」
「ああ、デジレ王女ですね。」
「…知っているのか?」
オールディー国王の末娘であるデジレ王女は一目でヨーゼフを気に入り、14歳の頃からお嫁さんになりたいと付きまとっていた。今は適齢期も終わりかけの20歳で、いまだに未婚である。ヨーゼフが忘れられず、全ての縁談を断っているらしい。
国王も末娘には甘いため、それを許している。過去に強引な婚姻に至らなかったのは姉であり、王太女でこの度即位するコンスタンス王女が厳しく反対していたからに他ならない。
「とにかく、今回の視察では常に赤を身に着けてくれ。ドレスは私から贈る。」
「かしこまりました。」
バッツドルフ家に嵐を呼ぶ即位式からの一連の出来事の幕開けである。
キャサリンは瞳の色と合わせたドレープの美しい水色のドレスを着ていた。美しいドレスで人目を引いているが、特に目立つのはその色である。
「なぜ大公妃殿下は赤いドレスを着ていないのかしら?」
「バッツドルフ公はドレスを贈られていないのでは?」
「やはり突然の政略結婚でお心が伴わないのね。」
ち、違う!いや、違わないが、しかし、違うのだ。別に不仲に見せるためにドレスを贈らなかったわけではないのだ。ただ、忘れていた。
そういえば、ヨーゼフは元婚約者であるクラウディアにドレスを贈ったことはなかった。クラウディアはいつも自分でドレスを用意し、わきまえて赤をデザインに取り入れていた。
ヨーゼフがドレスを贈るのはマリアだけ。しかし、マリアも正妻ではないので赤いドレスを贈ったことはない。マリアにはいつも赤いドレスをせがまれるが、一度も送ったことはなかった。むしろ仮面舞踏会ぐらいでしか赤いドレスは着れないので、ああいう場ではそういった系統の色が多くなるにも関わらず、だ。
話がずれたが、ヨーゼフはキャサリンが当然、赤いドレスを着てくるものと思っていたのだ。ヨーゼフの妻である立場を重視し、ヨーゼフに恥をかかせぬように、赤いドレスを選ぶだろうと。
しかし、キャサリンは違った。ヨーゼフを思いやるつもりなど欠片もないのだ。
「けれど、どうしてキャサリン様は赤いドレスを選ばなかったのかしら。自分で仕立てることもできたでしょう?」
「それすらもバッツドルフ公は許されなかったのよ。心が狭い方なのね。」
「そういえば、愛人がいらっしゃるのだったわね。」
消え去っていたマリアの噂まで復活し、ヨーゼフが悪い男になっていく。
キャサリンと大使夫人は手紙をやり取りするほどの仲になり、外交は成功したが、ヨーゼフの評判は下がってしまった。
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この社交の後、数日はマリアの機嫌がとてもよかった。
「ヨーゼフ様ったら、あの女に赤いドレスを着せなかったのよね。嬉しいわ。」
「…なぜ、マリアがそれを知っているんだい?」
「新聞に出ていたわよ。」
また例の平民向けのゴシップ紙である。いったいどうやって手に入れているのか。
「私のことも書かれているの。『麗しの大公の秘密の愛人』って。」
思わずマリアの手から新聞をひったくり、中身に目を通すと事実をもとに面白おかしく脚色されたストーリーがのっていた。
曰く、ヨーゼフはかつて運命の姫だと断言した相手を屋敷の離れに囲い、異国からの奥方をないがしろにしている。
曰く、奥方を蔑み、愛人を優遇するただれた私生活をおくっている。
曰く、奥方に王族に連なる家に嫁いだ証である赤いドレスを着せずに、愛人には真っ赤なドレスばかり与えている。
どれもキャサリンを擁護し、ヨーゼフを悪く言うものばかりだ。それでもマリアは自分が世間で話題になることが嬉しいらしい。
「次の夜会では赤いドレスを着たいわ!いいわよね、ヨーゼフ様?」
浮かれるマリアに思わず冷めた目を剥けてしまう。
「赤いドレスが多いから、同じ色では夜会で目立てないよ。」
こう言うとマリアは納得する。この日もそうだった。
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キャサリンが社交の場に出るとヨーゼフの名が下がる。まるで仕組まれたかのようにそのようなことが続いた。そんなある日、ヨーゼフが一月ほど隣国オールディーへ女王の即位式に参加することが決まった。
もちろん、妻であるキャサリンを伴って。
「今回は私に赤いドレスを贈らせてほしい。」
「今更、結構ですわ。」
朝食の席でキャサリンは贈り物を断ってきた。しかし、今回はそういうわけには行かないのだ。
「訪問先のオールディーには私にしつこく求婚してきていた令嬢がいるんだ。君が赤いドレスを着ていなければ、三国を交えた問題になってしまうかもしれない。」
「ああ、デジレ王女ですね。」
「…知っているのか?」
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「とにかく、今回の視察では常に赤を身に着けてくれ。ドレスは私から贈る。」
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バッツドルフ家に嵐を呼ぶ即位式からの一連の出来事の幕開けである。
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