理想の女性を見つけた時には、運命の人を愛人にして白い結婚を宣言していました

ぺきぺき

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第四章 無計画なプロポーズ

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「そうだ。またブルテンとの外交が入りそうなんだ。秋のことなんだが。一緒に行ってもらいたい。」

「かしこまりました。どのような内容でしょう。」

夏の終わりにブルテンでは戦で活躍した兵たちへの褒章授与の式典が行われる。そのひと月半後に諸外国からのゲストも交えた夜会が開催されるのだ。
式典時に行われないのはエスパルとヒューゲンを配慮したものだ。どちらの国も皇帝の訪問を受けるため、VIPを夏の終わりの式典に送るのが難しいのだ。

「なるほど。では早急にドレスを用意する必要がありますね。」

「また私にドレスを贈らせてほしい。」

「かしこまりました。」

そこでふと翌日の晩餐会でのキャサリンのドレスが気になった。自分に準備をする時間はなかったが、ちゃんと赤いドレスを用意しているだろうか、と。



ーーーー



晩餐会の前には会談があったため、キャサリンとは城で落ち合うことになった。会談終わりに迎えに行くと、キャサリンはオフショルダーの赤紫色のドレスを身にまとって、知り合いの夫人と談笑していた。

赤みはあるが、赤ではない。

「キャサリン。」

「お疲れ様です。旦那様。」

「お疲れ様です。バッツドルフ公。」

キャサリンが話していた夫人を見ると、クラウディアだった。クラウディアは藤色のドレスを着ている。

「…ヘルムフート夫人。久しぶりだな。キャサリンの相手をしてくれてありがとう。」

「いえ、私も夫を待っておりましたので。」

クラウスも先ほどの会談に国王の側近として参加していたのだ。ちょうど後ろからやってくる。

「クラウディア。それにヨーゼフ様とキャサリン夫人も。」

「クラウス。」

当然と言えば当然なのだが、二人は名前で呼び合っている。自然な流れで腕を組み、ヨーゼフとキャサリンに礼をしてその場を去って行く。背中を見送っていると顔を寄せ合って何か話して微笑みあっている。

いいな…。自然とそう思ってしまった。


「旦那様、私たちも参りましょう。」

「ああ。」

ヨーゼフが腕を差し出すとキャサリンが手を乗せる。二人で晩餐の会場へと入った。


二人に用意されていたのは皇帝陛下の隣の席だった。

「皇帝陛下、重ねてになりますがヒューゲンまでお越しくださりありがとうございます。こちらは妻のキャサリンです。」

「**********。」

キャサリンは突然ヨーゼフの知らない言語をしゃべりだした。ぎょっとしてキャサリンを見たが、皇帝は逆に顔を輝かせた。

「*******?」

「****、**********。」

「キャ、キャサリン?今のは帝国語かい?」

キャサリンは「はい」と頷いた。

「ブルテンにいたころに少々勉強しまして。簡単な会話程度ならできるのです。ただ母国語とされる方と話した経験はないので発音に自信はありませんが。」

「とてもお上手でしたよ。」

皇帝は優しそうな笑顔で微笑む。「まあ」とキャサリンは見たことのない良い笑顔で微笑む。その笑顔はどういう意味だ…。

「よろしければもう少しお話しできませんか?」

皇帝の隣の席は本来ヨーゼフであったはずだが、キャサリンに交代することとなった。皇帝の希望であるため仕方がないが、妻を取られたようで気に食わない。


「夫人はダンフォード公爵のご令嬢でしたか。」

二人はブルテン語で会話をしていた。問題ないように聞こえたが、皇帝はヒューゲン語が苦手であったらしい。確かに会談には通訳がいた。

「ではベネディクト殿は兄君ですか?彼も帝国語がお上手でした。」

「はい。二番目の兄です。」

「帝国語を解する方がいるのはとてもありがたいです。」

「兄は外交を任されておりますから、今後重要な同盟国の言語を学ぶのは当然のことです。皇帝陛下もブルテン語は通訳が必要ないほどの腕前とお伺いしました。」

キャサリンは皇帝相手にも物怖じしない会話を展開している。これで外交経験はヨーゼフよりもはるかに少ないのだから驚いてしまう。

「バッツドルフ公は素晴らしい奥方を迎えられましたね。」

「はい。自慢の妻です。」

すんなりと言葉がでてきた。度胸もあり、それにみあった優秀さを持つ。本当に心強いと思った。


兄である国王エアハルトがやや顔をしかめていたことには、皇帝とキャサリンは鋭く目を光らせたが、ヨーゼフは全く気付かなかった。


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