天使な息子にこの命捧げます

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され

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王妃様から天使な息子のために王子との結婚を勧められました

辺境伯令嬢の独り言 厄災娘の噂を聞きました

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私はグラスコー辺境伯の娘、イライザ。
今年王立学園を卒業した。

私が王立学園に入学した時は大変だった。

何がって、厄災女のジャンヌが、全学園を支配していたのだ。

信じられないことに、学園には全校生徒の憧れの王太子殿下も生徒会長でいらっしゃったのに、厄災女のジャンヌが全学園を支配していたのだ。私にはそのことが信じられなかった。

だって厄災女はたかだか伯爵家の令嬢でしか無いのだ。

伯爵家は、いくら建国からの名門であろうと我が辺境伯家よりも爵位は低い。

そして、学園には王太子殿下を筆頭に公爵家や侯爵家の子弟も多くいたのだ。
なのに、その全てがジャンヌの言うことには逆らわないのだ。
即ち、ジャンヌが学園の陰の主と言っても差し支えなかった。

信じられないことに、厄災女は恐怖で全学園を支配していたのだ。


王太子殿下が生徒会長をされていたんだけど、完全に顎で使われていた。

私は最初にそれを見た時は目が点になった。

そして、勇気のある私はその礼儀知らずの女に注意しようとしたのだ。

その瞬間だ。

私の一つ上の従兄弟が突然私の手を掴んで、校舎の影に連れて行ったのだ。

「何をするのよ!」
私が驚いてその従兄弟に文句を言うと

「お前、死ぬつもりか」
従兄弟は大げさに言ってきてくれた。

「躾のなっていない礼儀知らずの伯爵家の娘に一言注意するだけじゃない。何故それが私の命に関係するのよ?」
私が文句を言うと、年上の従兄弟は頭を抱えたのだ。

「お前、王太子殿下を顎で使えるのか?」
従兄弟が呆れて聞いてきた。

「そんなの出来るわけ無いでしょ。不敬罪で捕まってしまうわよ」
私は当然の回答をした。

「それをあの厄災女は平然とやるんだぞ。殿下の側近たちも含めてだ。お前にそれが出来るのか」
「何か弱みを握られているのよ」
私は殿下たちのために言ってあげたのに。

「弱みって全員のか? 王家もいれば、カーティス様は公爵家の嫡男だぞ。そのそうそうたるメンバー全員が、誰一人としてあの厄災女には逆らわないんだ」
「逆らったらどうなるのよ」
私は聞いていた。

「さあ、俺は知らん」
「知らんって!」
私がムッとして言うと

「次の日にお前の死体が学園の池に浮いていても、俺は責任は取れないぞ」
「まさか、いくらあの女が厄災女か知らないけれど、そこまでしないわよ」
従兄弟の忠告に私は笑った。

「何を笑っているんだよ。言いことをお前に教えておいていやる。昔、あの女に文句を言った先輩がいたそうだ」
「どうなったのよ?」
私が聞くと、

「判らない」
「わからないってどういうことよ?」
「翌日からその先輩は学園に出てこなくなったんだよ」
「どういう事? 殺されたの?」
私が思わず聞くと

「いや、様子を見に行った先輩に、その先輩は言ったそうだ。
『あれには逆らってはいけない。あいつだけは怒らせてはいけなかったんだ』」
先輩は震えながらそう言ったんだ。

「『何があったんだ?』
そう聞く先輩の方も見もせずに、気の狂ったように先輩は笑い続けたそうだ。
聞きに行った先輩も気味が悪くなってそれ以上聞けずに帰ったんだ。
そして、それからしばらくしてその先輩は親に連れられて領地に戻った。それ以来、誰もあの厄災女には逆らわないそうだ」
従兄弟は親切にそう教えてくれたけれど、私は何がそんなに厄災女が恐ろしいか判らなかった。

ただ、なんとなく触れてはいけない闇だと思ったのだ。
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