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王女の侍女は再度クリスと友達にさせられました

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いきなり衆人環境の前でアルバートに結婚の申込みをされて私は頭がスパークした。

取り敢えず、私は考える時間が欲しくって一人にしてもらった。
ベッドで寝込んで考える。

私を好きだとアルバートは言ってくれたが、本当だろうか。

確かに優しいし、色々面倒見てくれたけれど、筆頭魔導師様に言われて面倒見てくれているだけだと思っていた。
それに私はリーナ王女の侍女だけれど平民だ。

平民が超大国ドラフォード王国の筆頭公爵家の令息の婚約者になるなんてどう考えても無理だ。アルバート様は見目麗しいし、剣術にも魔術にも優れているし、筆頭魔導師様の近衛騎士だ。私なんか釣り合うわけはない。

私は色々考えたが、断ろうと思った。だって身分差の激しい婚姻はお互いに苦労するに違いなかった。そもそも、アルバートの父上の公爵様や母上の奥様は納得されないだろう。


そこへ、ノックの音がした。

「はいっ?」
返事をするとなんと切った果物を持った筆頭魔導師様が入ってきたのだ。それも何故か黒髪黒縁メガネをしている。

「筆頭魔導師様!」
私は慌てて起き上がった。

「クリス」
筆頭魔導師様が言う。

「えっ?」

「私はあなたの友達クリスとしてきたのよ。だからクリスって呼んで」
筆頭魔導師様は私に注意した。

「そんなの貴方様が筆頭魔導師様だって判ったから出来るわけ無いでしょ」
私は思わず言い返した。

「そんな、冷たいじゃない。折角初めての友達ができたのに。そもそも、この格好に変装してきた意味ないでしょ」
「いや、そう言われましても」
「あなた、私にアルバートと違って手抜きのハンカチを渡しておいて、そう言う事を言う?」
この人いつまでそのことについて根に持っているんだ、と私は少し呆れた。

「だから、クリスと呼びなさい」
クリスが命令する。

「クリス様」
仕方無しに私は言った。

「ソニア、今は二人しかいないわ。私ね、友達なんて持ったことなかったの。昔は皇太子の婚約者だったし、王妃教育は厳しかったから、友達なんて作る暇なかったし周りは避けていたから。
だからこの学園に来て、生まれてはじめて友だちができたと思って喜んだの。だから、お願い。二人きりの時は普通に話して。クリスって呼び捨てにして」
クリスが頼み込んできた。そう言われるとさすがに私は断れなかった。

「後で不敬罪とかなしですよ」
「敬語も駄目」
私の言葉にクリスが更に注意する。

「判った」
私が頷いた。

「でも、ごめんね。身分を偽っていて」
クリスが謝ってきた。最初に文句を言ってやろうと思ったけれど謝られると何も言えなかった。

「許す」
私が偉そうに言った。

「ありがとう」
「でもこれからは隠し事なしだからね」
「話せることは話すわ」
私の言葉にクリスが頷いてくれた。

「でね、アルバートのことなんだけど」
「えっ、いきなりそれ?」
「だって、ずーーーーっと『嫌ああああ』って断られたって落ち込んでいるんだよ」
「だって、あんな皆の前で告白されたら驚くわよ」
「それはごめん。私もアルバートに詰め寄ったし」
「本当。クリスも酷い」
その私の言葉にクリスがニコリとした。

「なんでそこで笑うのよ」
私が文句を言うと

「だってソニアがやっとクリスって呼んでくれた」
クリスは嬉しそうに言った。

「本当に不敬罪とかしない?」
「するわけ無いわよ。あなたとは一生涯の友達だから」
「本当に!」
私は驚いた。筆頭魔導師様が平民ソニアとずうーっと一緒に友達でいてくれるなんてあり得るんだろうか。

「当然よ」
クリスが頷く。

「でね、私の騎士が落ち込んでいるのよ。ウィルとかナタリーがつついても反応してこないの」
「でも、身分が違いすぎますし」
私が言い訳する。

「身分が違いすぎるって言うけれど、彼は公爵家の第六子だから、公爵になるわけではないのよ」
「でも、クリス様の騎士じゃないですか」
「クリス!」
「でもこれは筆頭魔導師様のことだからクリス様で仕方ないでしょ」
私がクリスに言い返す。
「まあ、そこは仕方がないかも知れないけれど、私の周りには平民出身の者も多いわ。フェビアンもそうだし、ミアもアデリナもみんな、平民よ。貴族と平民がくっつくこともこれから多いはずよ」
「それはそうかも知れないけれど」
「それにいつもは平然としているアルバートがあなたへの執着心は凄いんだから。ハンカチも大切にしていたし。こんなの今までに初めてなんだから。今までは言い寄られても平然としていたのに、今回なんて取られたくないからあなたに黙ってバーミンガム家の紋を渡していたし」
「普通そう言うのは前もって教えてほしいんだけど」
「それだけ余裕がなかったんじゃない」
私の文句にクリスが答えていった。

「でも、クリス、やっぱりバーミンガム公爵家の方と結婚するのは難しいわ」
私は考えながらいった。だって相手は超大国の公爵家なのだ。インダルの王女が婚姻するならまだ判るかも知れないが、私は平民だ。アルバートなら貴族の入婿でやっていけるはずだ。

「じゃあ、ソニア、アルバートが平民だったら結婚できるの?」
「えっ、でもそんなのありえないじゃない」
「例えばよ」
クリスの例えは分かりづらかったが、アルバートなんて優良物件が平民でいるわけはなかったが、

「そらあ、ありえないけれど、アルバート様が平民なら結婚したかも」
なんて上から目線なんだろうと思いながら私は言った。

「判ったわ。アルバートが嫌いなわけはないのね」
クリスが安心したように言った。

「それは、そうよ。色々親切にしていただいたし、かばって頂いたし、このペンダントも私を守ってくれたし」
私は頷いた。

「じゃあ、ソニア、後はアルバートの頑張り次第ってことよね」
「えっ、ちょっと待ってよ。私は今厳しいって言ったわよね」
クリスの言葉に私は反論した。

「でも、平民ならば結婚しても良いんでしょ」
「それはそうだけど」
私は不承不承言うが

「じゃあ良いじゃない」
「良くはないわよ」
「可愛そうなアルバート。あんなに必死にソニアの事心配していたのに」
「そんなに心配してくれたの?」
「そうよ。私のところに来て、必死にソニアが大変だって、何とかしてくれってもう大変だったんだから」
「そうなんだ」
アルバートがそこまで心配してくれたなんて。

「だからね。そんなに急に返事しないで。もう少しアルバートの態度見てやってよ」
「いや、でも」
「ねっ、良いでしょ」

クリスのしつこさに負けて、結局しばらく様子を見るということに押し切られてしまった。

でも、超大国の公爵家の令息と結婚するなんて絶対に無理だと私は思った。
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