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王宮に行ったら私の正体を知って皆引きました

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私は控室でハロルドからもらった衣装に着替えた。モスグリーン色のドレスだ。ハロルドの目の色だった。
それをまとって応接室に戻ると

「キャサリン、とても綺麗だ」
「えっ?」
私は寄ってきたハロルドに褒められて驚いた。今まで褒められたことなどなかったのだ。私は思わず窓から空を見た。

「な、なんだ?」
「いえ、空からやりでも落ちてくるのかなと思ったの」
正直に答えると

「何だよ。それは。俺でもたまには褒めるぞ」
ブスッとしてハロルドが応える。

ハロルドは王族の正装をしていた。白地に金のラインが入っていてとても凛々しい。

「ハロルドもそれを着るととても立派に見えるわ」
私も褒め返しておいた。

「なんだかな。全然褒められた気がしないんだが」
「お互い様よ」
私が言うと思わずお互いに苦笑いをした。


「では、戦場に赴くとするか」
「くれぐれも龍ちゃんの出番が無いことを期待するわ」
私は胸に抱えた龍ちゃんを見た。

一応伝説の竜のつもりで連れて行くことにしたのだ。まあ、今回のスノードニア戦の表の勲功者でもあるし。皆からは白い目で見られるだろうが、伝説に乗っ取って連れて来たといえば良いだろう。皆はカーラと同じで竜もどきだと思うと思うし。



王宮について私達は馬車を降り立った。
私はハロルドにエスコートされて降り立つ。

皆の視線が突き刺さるのが判る。特に女性陣の鋭い視線が。
「だ、第一王子殿下よ」
「噂通り帰っていらっしゃったんだ」
「相変わらず、凛々しいわね」
「伝説の竜神様を召喚されたのだとか」
「始祖様の再来よね」
女どもがキャーキャー言っている。

「でも、何あの殿下の横の金髪の女」
「王国から殿下が連れてこられたのよ」
「平民じゃないの?」
「それにあの女、なんかペットを連れているわよ」
「信じられない」
「あれ、ひょっとして伝説の竜神様を真似ているんじゃない」
「竜神様って、あれ竜もどきでしょう」
「本当に馬鹿じゃないの」
「あんなトカゲ連れてきて」
女どもが話すたびに龍ちゃんがムッとして睨みつけるんだけど。

怒っている龍ちゃんを私は抱きしめた。

「駄目よ。怒って巨大化したら、あなたが大きくなったらこんな王宮一発で破壊してしまうんだから」
私は龍ちゃんを抱きしめていった。

「おいおい、王宮を壊すのは止めてくれよ」
慌ててハロルドが言うけれど、

「まあ、そうならないように祈っておくわ」
私はそう心から思った。


私達が会場に入ると皆が一斉にこちらを見た。
先ほどと同じような会話が一斉になされる。
まあ、噂されるのはなれきっているから私は問題ない。前は悪い噂や同情だったが、今回はやっかみだが。



「これは殿下。良くお戻りになられましたな」
そんな所へ宰相が寄ってきた。

「バージル、久しいな」
「そちらが噂のお方ですかな」
宰相が私を見て話しだした。

「これはアビントン様、お久しぶりでございます」
私はやむを得ず挨拶した。昔、外交で来た宰相と会ったことがあるのだ。

「えっ、シェ、シェフィールド公爵令嬢!」
宰相が目を見開いて言った。
私が王子の連れの相手だとは知らなかったようだ。

「えっ、シェフィールドって」
「ロンド王国の重鎮の」
「確か、ロンドの王太子に婚約破棄されて殺されそうになったっていう」
「それを騎士が助けられたと」
「その騎士がハロルド様だったの・・・・」
「嘘ーーー」
「じゃあ、ハロルド様のお相手って隣国の公爵家のお姫様・・・・」

ガーーーーン

なんか女性陣がショックを受けているのがありありと判った。

自国の王子が隣国の王宮での殺されそうになった公爵令嬢を助けてここまで連れてきたのだ。
自分らの出番がなくなったと思ったのも無理はない。

みんな、気にしないで。私はこの事が終わったら冒険者になるから。関係なくなるから。ハロルドの横なんて絶対に居ないから・・・・

私は心の中で叫んでいた。

その私をなんか嫌そうにハロルドが見ているんだけど。私はもう、王宮の腐りきったドロドロの世界は嫌なのだ。
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