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最後の決戦にならずに、ミニアンちゃんが丸く治めてしまいました

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敵のエスカールの6万の軍勢は大軍だった。王都の前の草原に展開している。

もっともこちらは12万もいたけれど、まあ、大半は戦が初めての軍だ。

メインは中核、クリステイーン様の6万だ。この6万で勝てるはずだ。

私も火の玉を出せば楽勝だろう。

そのクリステイーン様が馬に乗った。ついに戦いの始まりだ。

おそらく最後の大戦だ。

そして、クリステイーン様が剣を抜いた。



その時だ。

いきなり私達の前にミニあんちゃんとオットーと・・・・変な親父が現れたのだった。

ミニアンちゃんは相変わらずのコスチュームだ。赤白の服に、虫の仮面、そして白いマントだ。その後ろのオットーまで同じ格好なんだけど・・・・。

でも、その後ろの親父は仮面と黒いマントをしているんだけど。ひょっとして吸血ドラキュラ伯爵のつもりか?

「皆、待たせたな」
開口一番、ミニアンちゃんが叫んだ。

「いや、誰も待っていないって」
アルフのセリフが無言の皆の前に響いた。

「ほう、アルフはイェルドのやることに文句があるらしいぞ」
後ろを振り返って、変な親父にミニアンちゃんが言ってくれるんだけど、ひょっとして、後ろの変なドラキュラはイェルド様?



「まあ、アルフはトイレ掃除100年分で」
「いえ、申し訳ありません」
イェルド様の声を聞いた途端に、アルフは土下座して謝っていた。

私の周りのみんなも唖然としている。あの腹黒のイェルド様が何故、ミニアンちゃんに付き合っているのだろう?

ひょっとしてミニアンちゃんは史上最強? ひょっとしてその主人の私もイェルド様を顎で使えるんだろうか?
いや無理だ。あの黒いオーラに絶対に勝てない。傍若無人なミニアンちゃんだからこそ、イェルド様にあんなコトさせられるんだ。でも、後が怖い。私に文句言ってこないだろうか?
私はとても不安になった。


「貴様ら、何をやっているのだ。仮装大会ではないぞ」
敵軍からやじが上がった。

「わっはっはっはっは。待たせたな諸君。私はM78星雲の彼方から帰ってきたアントラマンだ」
ミニアンちゃんはそのやじを物ともせずに名乗ったのだ。

またやっている、と私は思ったが、

「私はアントラマン2号だ」
オットーまでやってくれているんだけど。

そして、3番めのドラキュラに皆の視線が集まる。果たしてイェルド様は何を言うんだろう?

「私は貴様らの爵位を忖度する忖度マンだ」
何なんだ。それは?

もうどうでも良くなってきたんだけど・・・・・
イェルド様が付き合っているのが信じられなかった。

「何が爵位を忖度するだ。そんな暇があったら命乞いでもしたらどうだ」
大声で敵の偉そうな男が叫んできた。

「そう言う貴様はラフティ公爵だな。今の生意気な言動で侯爵に降格だ」
「な、何を言うのだ。いきなり」
公爵が叫ぶが、イェルド様は紙にスラスラ書き出すとそれを大画面に映し出した。

そこにははっきりとラフティ、侯爵に降格と書かれていた。

「な、貴様、我らを愚弄するのか」
ラフティ公爵は叫んでいるがイェルド様は全く無視している。

「ちょっとイェルド、私に話させなさいよ」
そこへ主役を取られたミニアンちゃんが文句を言った。

「どうぞ、お話下さい」
「まあ、いいわ。ここにいるイェルドは、できたらクリスティーンにあなた達を殲滅させて全ての領地をいただこうとしていたんだけど、私がそれではあまりにも可愛そうだと哀れんであげたのよ。感謝しなさい」
ミニアンちゃんは最強だ。戦おうとしている相手に憐れみを向けるなんて。

「煩い。そこの小人。我らは遊びに来たのではないわ」
大男が叫んでいた。

「あーーーら、エーギル。あなた言うわね」
「な、なぜ俺の名を知っているのだ」
エーギル・スケバ公爵は驚いたみたいだ。エスカール王国は古いだけあって高位貴族が多い。5公爵10侯爵もいるのだ。その分、国王の直轄地が少なくて、これを機会にイェルド様が高位貴族の整理を考えていても全然不思議ではなかった。

「ひどーーーい、あなた私に恋文を送っておいて忘れてしまったの?」
「ふざけるな。俺は貴様みたいな変なやつに恋文なんて送っておらんわ」
そう言う公爵にミニアンちゃんはいきなりなりきって手紙を読み出したのだ。

「『ああ、アンネ様。あなたのように可憐な方にはお会いしたことはありません。あなたはひまわりのように明るくて、見た目は太陽の様に美しく輝いていらっしゃいます。そんなお美しい貴方様に私エーギル・スケバは恋してしまったのです』」
「わああああ、止めろ! 止めろ! 何故貴様がその恋文の中身を知っているのだ?」
スケバ公爵は大慌てで叫んでいた。

「だから言ったでしょ。私のことを忘れたのって」
ミニアンちゃんは仮面を外したのだ。

「あ、アンネ様」
ぽかんとしてミニあんちゃんを見つめてスケバ公爵は突っ立っていた。

えっ、ミニアンちゃんは産みの母のようなことを言っていたけれど、本当にそうなの? でも彼女は私が作り出した使い魔にで、使い魔に母の霊が宿ったのだろうか?

「これはオースティンに留学していたあなたから学園でもらったラブレターよ」
「しかし、貴方様はブルーノに殺されたのでは」
「そうよ。そこの国王にそそのかされたブルーノに殺されたのよ」
ミニアンちゃんが奥にいる国王を指さして言ったのだ。

「お、俺はブルーノをそそのかしていないぞ」
「何言っているのよ。妹のドロテーアに魅了でブルーノをそそのかして私を殺させたじゃない。エーギル。あなた私の敵のその男の手下として私に刃を向けるの?」
「えっ、いや、しかし」
ミニアンちゃんの言葉に公爵は慌てだした。

「ええい、茶番を何時までもしているではないわ」
その時隣の軍の中から馬にまたがった偉そうな男が叫んだ。確かイーサルミ公爵だ。

「あーーーら。そんな事言っていいの?」
ミニアンちゃんは白い目でイーサルミ公爵を見ると、今度はオットーに指示した。

「『イェルド様。我らは今まで国王の命で仕方なしに戦ったのです。決して貴方様に刃を向けるつもりはありませんでした。何卒お許し賜りますよう、女王陛下にお取次ぎ下さい。あなたのしもべフレデリク・イーサルミ』」
オットーはそう言うとその手紙をデカデカと画面に表示したのだった。

「いや、これは、なにかの間違いで」
公爵が必至に言い訳しようとするが、

「この書は公爵の直筆で間違いありません」
オットーが言い切った。

「な、何をしているさっさとその女を始末せよ」
国王が叫ぶ。

「ほうら。こうやって私は殺されたのよ。あなた達の国王によってね」

「その馬鹿な女を血祭りにあげてしまえ」
眼の前の男が叫んだ。確かあれはサポンリンナ公爵のはずだ。

近くの兵士たちが剣を握って突撃しようとしたその時だ。

オットーの手から爆裂魔術が放たれたのだ。

それは一瞬でサボンリンナ公爵を吹き飛ばしていた。

「勝手に動かないことね。彼は知っているわよね。オットー・スカンデイーナ。そうあなた方の王女ドロテーアの息子よ。動けば彼が瞬時に攻撃するわ」
「何故だ。何故、オットーが敵に」
国王が叫んでいた。

「母を見捨てたあなたに言われたくないな」
冷たくオットーが言い放つ。

「何をいう。私は止むに止まれぬ理由で帰ってきただけで」
「母を見捨てて殺したことには変わりない」
「そうよ。あなた達もよく考えなさい。止むに止まれぬ理由があれば国王を見捨ててもいいそうよ」
ミニアンちゃんが笑って言った。

「いや、そんな事は」

「国王はどうでもいいわ。どのみちここで殺される運命なんだから。後はあなた達も道連れで一緒に死ぬかどうかよ」
ミニアンちゃんがイェルド様並に黒い笑みで笑うんだけど。

「あなた達もよーく考えなさい。そこにいる私の娘のアンネローゼとその婚約者のフィリップはお人好しよ。私の後ろにいる腹黒宰相のイェルドよりもね」
ミニアンちゃんが何か言っているけど、イェルド様に面と向かって腹黒って言うなんて、私が後で監督責任を取らされそうなんですけど・・・・。

私の心配を無視してミニアンちゃんは続けた。
「何しろこのオットーの事も、ドロテーアが死ぬ間際に命に代えて助けと欲しいって二人にお願いしたから、助けてくれたくらいだから。敵の大将の息子を生かしておく?」

ミニアンちゃんの言葉に私はあんたが無理やり助けさせたんじゃない! と叫びたかった。

「腹黒宰相のイェルドならば殺しているわよ。エーギル、どうするの?」
「しかし、アンネ。私にも義理がある」
「えっ、この国王に、義理なんて感じる必要もないよ」

そう言うとミニアンちゃんはオットーに合図をした。

画面に部屋の様子がアップになる。そこではエスカール国王が側近と話していた。

「陛下、なんとか大貴族たちが軍をまとめてくれました」
「そうかそうか当然だな。何しろ私は国王なのだから」
鷹揚に国王が言う。

「しかし、陛下。このままではまた大貴族共が大きな顔をして威張り始めませんか?」
側近の1人が心配して聞いていた。

「なあに、そのときは公爵の1人、例えばスケバ公爵あたりを事故に見せかけて殺せば良いわ。そうすれば他の貴族共も大人しくなるだろうて」
国王がはっきりそう言うのが写っていたのだ。

「いや、これは陰謀だ。俺はそのようなことは」
必至で国王が言い訳しようとするが、

「叔父上。往生際が悪いですな。私が転移してはっきりと現場を見て保存させて頂きました」
オットーが笑って言った。

「さあ、どうするの。みんな。こんなぼんくら国王の盾となって死ぬか。それとも国王の首を差し出して我が娘たちに許しを請うのか。好きになさい」
勝ち誇ってミニアンちゃんか言ってくれたのだ。

次の瞬間には勝負はついた。

「皆の者、国王の首を上げよ」
「そうだ。生死は問わん」
「直ちにやるのだ」
残った貴族たちが叫んで、兵士たちが国王に殺到したのだ。

国王は一瞬で兵士たちの影に消えてしまった。

戦う前に我軍は勝利したのだった。

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ここまで読んでいただいて有難うございました。

明朝完結です。
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