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第8話 ー不正アクセス容疑ー ⑥
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放課後。
二年生の希望者が集まったコンピュータ室は、いつもとは少し違う緊張感を帯びていた。
共有端末の電源はすべて落とされ、机にはプリントとボールペンだけが並んでいる。システム担当の先生が前に立ち、ホワイトボードの前で全体を見渡した。
「集まってくれてありがとう。昨日の件について、もう少し詳しい説明と、これからの“自分の身の守り方”について話したいと思う」
先生は、簡単に昨日のまとめを話したあと、「では、生徒目線でもどういう点に気を付けるといいか考えてもらったから、情報委員の柏加さんから説明してもらうので聞いて」と真白の方を向いた。
十数人の視線が、一斉に集まる。
その中には、同じクラスの顔もあれば、別クラスの顔もあった。図書室で一緒にログイン画面に戸惑っていた二年生の姿も見える。
——大丈夫。
自分にそう言い聞かせて、真白は前に出た。
「えっと……二年C組の柏加です」
声は、思ったよりちゃんと出ている。
「昨日、図書室で偽のログイン画面が出た時、私もちょうど画面を見ていたので、その時の状況も踏まえてまとめてみました。私も、最初は“セッションが切れただけかな”って思いました。でも、URLがいつもと違うことに気づいて……」
ホワイトボードに書かれた「portal」と「porrtal」の文字を指さす。
「ほんの一文字の違いなんですけど、“こういう細かいところに気づけるかどうか”で、結果が変わることってあるんだなって思いました」
数人が、真剣な顔で頷いた。
「でも、全部を自分で見分けられる必要はないです。私が一番伝えたいのは、“変だと思ったら、その時点で止まって、先生に見せて相談する”ってことです」
昨日、職員室で先生に話したときと同じ言葉を、もう一度自分にも聞かせるように繰り返す。
「自分一人で“これは安全かどうか”を判断しようとすると、すごくしんどいし、ミスもしやすいと思うので……」
そこまで言ったところで、コンピュータ室の後ろの方から、誰かがそっと手を挙げた。
「……はい」
「質問いい?」
声の主は、隣のクラスの男子だった。昨日、図書室で「またログイン?」と呟いていた顔だ。
「そんな細かいとこ、正直、毎回見てらんないっていうか……慣れたら絶対サボると思うんだけど。そういうときって、どうすればいいの?」
ストレートな疑問だった。
真白は少しだけ考え込んだ。
「……そうですね。全部を毎回チェックするのは、確かに難しいと思います」
自分の経験からも、それはよくわかる。
「だから、“いつもと違うことが起きたときだけでもいいから、少し立ち止まる”のが現実的かなって、私は思ってます」
「いつもと違う、って?」
「さっきみたいに、急にログアウトされたりとか……。ページの読み込みが異常に遅くなったり、ポップアップがたくさん出たり、“普段は起きない動き”があったとき」
言いながら、自分でも頭の中で整理していく。
「そういうときだけでいいので、“URLを一回だけ確認する”、“全画面を見て、変な日本語になってないかチェックする”、“それでもよくわからなかったら、その場で誰かに相談する”……みたいに、ちょっとした習慣を足していけたら、だいぶ違うかなって」
男子は「なるほど」と呟いた。
「全部を完璧にやるのは、多分大人でも難しいので。できるところから、って感じで」
そう締めくくると、システム担当の先生が横から一歩前に出た。
「柏加さん、ありがとう」
先生はホワイトボードに、「止まる」「確認する」「相談する」という三つのキーワードを書き加える。
「今の話、とても大事なポイントだ。技術的な対策はこっちでできる限りやる。偽ドメインのブロックとか、一斉ログアウトとか。でも、“変だな”と感じる感覚や、“相談してくれる行動”は、こちらから強制することはできない。みんなにしかできない部分だ」
先生の言葉に、コンピュータ室の空気が少しだけ引き締まった。
「だから、今回の件を、“怖い出来事だった”で終わらせるんじゃなくて、“自分たちでできることを一つ増やせたきっかけ”にしてほしい。気のせいかもしれない、間違いかもしれないと思っても違和感をそのままにせずに相談する勇気を持つのは大事だってことを覚えておいてほしい」
そう言われて、真白は思わず視線を落とした。
勇気——。
自分の中では、「怖いから先生に投げた」くらいの感覚だった。それでも、それを「勇気」と呼んでくれる人がいるなら、それを信じてみたいと思った。
説明会が終わり、コンピュータ室の外に出ると、廊下の窓から夕焼けが見えた。
オレンジ色の光が差し込む中、壁にもたれかかって待っていた恋が、ぱっと顔を上げる。
「おつかれ、真白」
「……なんでここに」
「そりゃ、来るでしょ。真白が“みんなの前でしゃべる”って言うから。途中から後ろの方で見てた」
「えっ」
「途中で手挙げた男子の後ろあたり」
恋は、いたずらっぽく笑った。
「すっごくわかりやすかったよ。“全部やらなくていいから、変だと思ったときだけでも”ってやつ。あれ、あたしでもできそうって思った」
「ほんとに?」
「うん。てかやる」
恋は自分のスマホをぽん、と軽く叩いた。
「これからは、変な動きしたら“真白チェック”に出すから」
「いや、それは……先生に」
「先生にも出すけど、真白にも出すの。二段構え」
そう言われてしまうと、もう苦笑するしかない。
二人で並んで階段を降りながら、真白はふと口を開いた。
「……先生たちの話、聞いてて」
「うん?」
「被害が出てなかったって聞いて、すごくほっとしたのと同時に……“今回はたまたま運が良かっただけかもしれない”って思って」
踊り場の窓から見える空は、少しずつ紫色を帯びてきている。
「広くばら撒いて、誰か一人でも引っかかればいい、みたいな攻撃って、ネットの世界には、たぶんたくさんあって。全部を止めることなんて、多分できなくて」
「……うん」
「でも、少なくとも、自分の近くは、ちゃんと見ていたいなって思った」
真白は、自分の胸のあたりをそっと押さえた。
「恋とか、クラスのみんなとか。今回みたいに、“変だ”って気づいたら、ちゃんと止めて、繋ぐ……みたいな役割なら、私でもできるかもしれないから」
恋は少しだけ立ち止まり、真白の方を向いた。
「それ、めちゃくちゃ心強いんだけど」
「え?」
「“自分の近くは見ていたい”って言ってくれる人が、隣にいるのってさ。すごく安心するよ」
恋は軽く笑って、真白の肩を人差し指でつついた。
「あたし、その“近く”の中に入ってるんでしょ?」
「もちろん」
即答すると、恋は一瞬驚いた顔をしてから、ぱっと笑顔を咲かせた。
「やった。じゃあ、これからもよろしくお願いします、“近く担当”さん」
「その肩書き、なんか変」
「いいじゃん。真白っぽい」
くだらないやり取りを交わしながら、階段を降りる足取りは、不思議と軽かった。
その日の夜。
机の上には、プリントの束と、ノートパソコンと、狐のブックマーカーが並んでいた。
真白はパソコンを閉じ、代わりにプリントを手に取る。
二年生向けに配られた「パスワード変更の手順」は、もう必要ない。クラスメートたちから「やり方わからない」と質問されたときのために読み込んでいたが、放課後までにはほとんどの子が終わらせていた。
「……意外とみんな、ちゃんとやるんだ」
昼休み、廊下のあちこちでスマホ片手に「どこ押すんだっけ」「ここ?」と相談している姿を見て、そう思った。
「面倒だから後でいいや」と言う子も、いなかったわけではない。でも、そういう子の腕を引っ張って、「今やろ」と言ってくれる誰かが必ずいた。
——一人で全部守ろうとしなくても、いいのかもしれない。
そんな当たり前のことを、今日ようやく実感できた気がした。
机の端で、スマホが小さく震える。
『今日もおつかれさまー。説明会の真白、めっちゃカッコよかったよ』
恋からだった。またその単語だ、と苦笑しながら、真白は返信を打つ。
『本当に見てたんだね……恥ずかしい』
『なんで! ああいうときにちゃんと話せる真白、あたしは好きだよ』
“好き”という言葉に、また少しだけ胸が熱くなる。
『ありがとう。明日、情報の授業でまた少し話があるみたい』
『うん。真白の隣でちゃんと聞くから』
その一文が、どんな長文よりも心を軽くしてくれた。
スマホを伏せて、真白は狐のブックマーカーを指先でそっと弾く。小さなチャームが、カチ、とかすかな音を立てて揺れた。
「……今回は、巻き添えだったけど」
ぽつりと呟く。
「巻き添えで終わらせないで、よかった」
偽ログインページのコードも、0.2秒間隔のログも、まだ頭のどこかに残っている。広くばら撒かれた攻撃の怖さも、完全に消えたわけではない。
それでも——。
最近続いている外部のIPアドレス帯からの攻撃。
今回の雑で、乱暴で、それでいて誰かの足元をすくいかねない広撒き攻撃。
——今回のは、確実に二年生に絞って狙っていた。
——その先に狙っていたのは、一体何だったんだろう。
考え始めると、また胸のあたりがざわつきかけて、真白はそこで思考を止めた。
「……今は、いい」
小さく首を振る。
広い世界のどこかで、まだ誰かが0.2秒ごとにノックを続けているかもしれない。でも、自分はその全てに応えることはできない。
だからこそ、自分の手が届く範囲で、少しずつブレーキを踏める人でありたい。
その範囲には、恋がいて、クラスメートがいて——いつか、自分の知らない誰かも加わるかもしれない。
スタンドライトを消すと、部屋の中は柔らかな暗闇に包まれた。カーテンの隙間から差し込む街灯の光が、天井に淡い模様を描いている。
ベッドに身を滑り込ませながら、真白はそっと目を閉じた。
——明日も、できれば平穏で。
けれどもし、また何か“変なこと”が起きたら——。
今度もきっと、自分は「怖い」と思いながら、それでも立ち止まり、誰かに知らせるのだろう。
そのとき、隣にはきっと、あのミディアムボブの笑顔がある。
そんな光景をぼんやりと思い描きながら、真白はゆっくりと眠りへと沈んでいった。
二年生の希望者が集まったコンピュータ室は、いつもとは少し違う緊張感を帯びていた。
共有端末の電源はすべて落とされ、机にはプリントとボールペンだけが並んでいる。システム担当の先生が前に立ち、ホワイトボードの前で全体を見渡した。
「集まってくれてありがとう。昨日の件について、もう少し詳しい説明と、これからの“自分の身の守り方”について話したいと思う」
先生は、簡単に昨日のまとめを話したあと、「では、生徒目線でもどういう点に気を付けるといいか考えてもらったから、情報委員の柏加さんから説明してもらうので聞いて」と真白の方を向いた。
十数人の視線が、一斉に集まる。
その中には、同じクラスの顔もあれば、別クラスの顔もあった。図書室で一緒にログイン画面に戸惑っていた二年生の姿も見える。
——大丈夫。
自分にそう言い聞かせて、真白は前に出た。
「えっと……二年C組の柏加です」
声は、思ったよりちゃんと出ている。
「昨日、図書室で偽のログイン画面が出た時、私もちょうど画面を見ていたので、その時の状況も踏まえてまとめてみました。私も、最初は“セッションが切れただけかな”って思いました。でも、URLがいつもと違うことに気づいて……」
ホワイトボードに書かれた「portal」と「porrtal」の文字を指さす。
「ほんの一文字の違いなんですけど、“こういう細かいところに気づけるかどうか”で、結果が変わることってあるんだなって思いました」
数人が、真剣な顔で頷いた。
「でも、全部を自分で見分けられる必要はないです。私が一番伝えたいのは、“変だと思ったら、その時点で止まって、先生に見せて相談する”ってことです」
昨日、職員室で先生に話したときと同じ言葉を、もう一度自分にも聞かせるように繰り返す。
「自分一人で“これは安全かどうか”を判断しようとすると、すごくしんどいし、ミスもしやすいと思うので……」
そこまで言ったところで、コンピュータ室の後ろの方から、誰かがそっと手を挙げた。
「……はい」
「質問いい?」
声の主は、隣のクラスの男子だった。昨日、図書室で「またログイン?」と呟いていた顔だ。
「そんな細かいとこ、正直、毎回見てらんないっていうか……慣れたら絶対サボると思うんだけど。そういうときって、どうすればいいの?」
ストレートな疑問だった。
真白は少しだけ考え込んだ。
「……そうですね。全部を毎回チェックするのは、確かに難しいと思います」
自分の経験からも、それはよくわかる。
「だから、“いつもと違うことが起きたときだけでもいいから、少し立ち止まる”のが現実的かなって、私は思ってます」
「いつもと違う、って?」
「さっきみたいに、急にログアウトされたりとか……。ページの読み込みが異常に遅くなったり、ポップアップがたくさん出たり、“普段は起きない動き”があったとき」
言いながら、自分でも頭の中で整理していく。
「そういうときだけでいいので、“URLを一回だけ確認する”、“全画面を見て、変な日本語になってないかチェックする”、“それでもよくわからなかったら、その場で誰かに相談する”……みたいに、ちょっとした習慣を足していけたら、だいぶ違うかなって」
男子は「なるほど」と呟いた。
「全部を完璧にやるのは、多分大人でも難しいので。できるところから、って感じで」
そう締めくくると、システム担当の先生が横から一歩前に出た。
「柏加さん、ありがとう」
先生はホワイトボードに、「止まる」「確認する」「相談する」という三つのキーワードを書き加える。
「今の話、とても大事なポイントだ。技術的な対策はこっちでできる限りやる。偽ドメインのブロックとか、一斉ログアウトとか。でも、“変だな”と感じる感覚や、“相談してくれる行動”は、こちらから強制することはできない。みんなにしかできない部分だ」
先生の言葉に、コンピュータ室の空気が少しだけ引き締まった。
「だから、今回の件を、“怖い出来事だった”で終わらせるんじゃなくて、“自分たちでできることを一つ増やせたきっかけ”にしてほしい。気のせいかもしれない、間違いかもしれないと思っても違和感をそのままにせずに相談する勇気を持つのは大事だってことを覚えておいてほしい」
そう言われて、真白は思わず視線を落とした。
勇気——。
自分の中では、「怖いから先生に投げた」くらいの感覚だった。それでも、それを「勇気」と呼んでくれる人がいるなら、それを信じてみたいと思った。
説明会が終わり、コンピュータ室の外に出ると、廊下の窓から夕焼けが見えた。
オレンジ色の光が差し込む中、壁にもたれかかって待っていた恋が、ぱっと顔を上げる。
「おつかれ、真白」
「……なんでここに」
「そりゃ、来るでしょ。真白が“みんなの前でしゃべる”って言うから。途中から後ろの方で見てた」
「えっ」
「途中で手挙げた男子の後ろあたり」
恋は、いたずらっぽく笑った。
「すっごくわかりやすかったよ。“全部やらなくていいから、変だと思ったときだけでも”ってやつ。あれ、あたしでもできそうって思った」
「ほんとに?」
「うん。てかやる」
恋は自分のスマホをぽん、と軽く叩いた。
「これからは、変な動きしたら“真白チェック”に出すから」
「いや、それは……先生に」
「先生にも出すけど、真白にも出すの。二段構え」
そう言われてしまうと、もう苦笑するしかない。
二人で並んで階段を降りながら、真白はふと口を開いた。
「……先生たちの話、聞いてて」
「うん?」
「被害が出てなかったって聞いて、すごくほっとしたのと同時に……“今回はたまたま運が良かっただけかもしれない”って思って」
踊り場の窓から見える空は、少しずつ紫色を帯びてきている。
「広くばら撒いて、誰か一人でも引っかかればいい、みたいな攻撃って、ネットの世界には、たぶんたくさんあって。全部を止めることなんて、多分できなくて」
「……うん」
「でも、少なくとも、自分の近くは、ちゃんと見ていたいなって思った」
真白は、自分の胸のあたりをそっと押さえた。
「恋とか、クラスのみんなとか。今回みたいに、“変だ”って気づいたら、ちゃんと止めて、繋ぐ……みたいな役割なら、私でもできるかもしれないから」
恋は少しだけ立ち止まり、真白の方を向いた。
「それ、めちゃくちゃ心強いんだけど」
「え?」
「“自分の近くは見ていたい”って言ってくれる人が、隣にいるのってさ。すごく安心するよ」
恋は軽く笑って、真白の肩を人差し指でつついた。
「あたし、その“近く”の中に入ってるんでしょ?」
「もちろん」
即答すると、恋は一瞬驚いた顔をしてから、ぱっと笑顔を咲かせた。
「やった。じゃあ、これからもよろしくお願いします、“近く担当”さん」
「その肩書き、なんか変」
「いいじゃん。真白っぽい」
くだらないやり取りを交わしながら、階段を降りる足取りは、不思議と軽かった。
その日の夜。
机の上には、プリントの束と、ノートパソコンと、狐のブックマーカーが並んでいた。
真白はパソコンを閉じ、代わりにプリントを手に取る。
二年生向けに配られた「パスワード変更の手順」は、もう必要ない。クラスメートたちから「やり方わからない」と質問されたときのために読み込んでいたが、放課後までにはほとんどの子が終わらせていた。
「……意外とみんな、ちゃんとやるんだ」
昼休み、廊下のあちこちでスマホ片手に「どこ押すんだっけ」「ここ?」と相談している姿を見て、そう思った。
「面倒だから後でいいや」と言う子も、いなかったわけではない。でも、そういう子の腕を引っ張って、「今やろ」と言ってくれる誰かが必ずいた。
——一人で全部守ろうとしなくても、いいのかもしれない。
そんな当たり前のことを、今日ようやく実感できた気がした。
机の端で、スマホが小さく震える。
『今日もおつかれさまー。説明会の真白、めっちゃカッコよかったよ』
恋からだった。またその単語だ、と苦笑しながら、真白は返信を打つ。
『本当に見てたんだね……恥ずかしい』
『なんで! ああいうときにちゃんと話せる真白、あたしは好きだよ』
“好き”という言葉に、また少しだけ胸が熱くなる。
『ありがとう。明日、情報の授業でまた少し話があるみたい』
『うん。真白の隣でちゃんと聞くから』
その一文が、どんな長文よりも心を軽くしてくれた。
スマホを伏せて、真白は狐のブックマーカーを指先でそっと弾く。小さなチャームが、カチ、とかすかな音を立てて揺れた。
「……今回は、巻き添えだったけど」
ぽつりと呟く。
「巻き添えで終わらせないで、よかった」
偽ログインページのコードも、0.2秒間隔のログも、まだ頭のどこかに残っている。広くばら撒かれた攻撃の怖さも、完全に消えたわけではない。
それでも——。
最近続いている外部のIPアドレス帯からの攻撃。
今回の雑で、乱暴で、それでいて誰かの足元をすくいかねない広撒き攻撃。
——今回のは、確実に二年生に絞って狙っていた。
——その先に狙っていたのは、一体何だったんだろう。
考え始めると、また胸のあたりがざわつきかけて、真白はそこで思考を止めた。
「……今は、いい」
小さく首を振る。
広い世界のどこかで、まだ誰かが0.2秒ごとにノックを続けているかもしれない。でも、自分はその全てに応えることはできない。
だからこそ、自分の手が届く範囲で、少しずつブレーキを踏める人でありたい。
その範囲には、恋がいて、クラスメートがいて——いつか、自分の知らない誰かも加わるかもしれない。
スタンドライトを消すと、部屋の中は柔らかな暗闇に包まれた。カーテンの隙間から差し込む街灯の光が、天井に淡い模様を描いている。
ベッドに身を滑り込ませながら、真白はそっと目を閉じた。
——明日も、できれば平穏で。
けれどもし、また何か“変なこと”が起きたら——。
今度もきっと、自分は「怖い」と思いながら、それでも立ち止まり、誰かに知らせるのだろう。
そのとき、隣にはきっと、あのミディアムボブの笑顔がある。
そんな光景をぼんやりと思い描きながら、真白はゆっくりと眠りへと沈んでいった。
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