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第15話
「……その最強最悪のレジェンダリードラゴンってこれですか?」
広間の入口から透き通った声が響いた。
そこには黒尽くめの制服らしき服を着た少年が立っていた。
彼が片手で引き摺るのは――血を滴らせる巨大なドラゴンの生首。
その首からは禍々しいオーラが溢れ、ただのドラゴンでないことは明らかだった。
広間にいた人々は一瞬悲鳴を上げたが、すぐに大人しくなる。
今、話しに出ていた邪竜の首が目の前にある、そのことが信じられなかった。
すると少年は溜息を吐いて、こう語り出した。
「普通、こんな目立つ存在を復活させる企みに気付かない訳ないでしょう? あなたの企みを知った時から、対策は取っていました。まあ、魔法無効化を十キロ圏内に敷いて、その範囲内にいた人々には魔法障壁を張り、遠距離から即死効果を放つだけで倒せたので、対策もクソもないんですが――」
「は、はぁ……?」
バイロン王子は間の抜けた声を発し、椅子からずり落ちた。
エイリスは少年を見て、目を見開く――あれは先日会ったキリヤ・リュウゼンだ。
彼が、華奢な体つきをした彼が、邪竜を倒したというのか。
その時、エイリスのすぐ隣りから拍手の音が響いた。
目をやると、レイトが手を打っている。
「よくやった、キリヤ」
「ああ。ありがと、兄さん」
レイトは静まり返った広間を抜けて、入口へ歩いていく。
そして黒猫のようなキリヤの頭をよしよしと撫でた――キリヤは少し嫌そうな顔をして、その手を受け入れている。
エイリスが驚きの表情のままレイトに尋ねる。
「兄さん……? もしかしてキリヤは陛下の弟君なのですか……?」
「その通りです、聖女様。私は本名をレイト・リュウゼン・スライアと申します」
「そうなのですか……? しかしリュウゼンとは聞き慣れない姓ですね……?」
「ああ、私とキリヤは異世界からの転移者なんですよ」
「転移者……!? 陛下がですか……!?」
するとレイトとキリヤは頷き、こちらを見た。
背が高く髪も目も茶色のレイト、そしてまだ背が低く髪も目も黒色のキリヤはよく見れば鼻と口がそっくりだ――並んで紹介されたら、兄弟だとすぐに分かったはずだ。
そして二人は自分自身の能力を告げた。
「私、龍前怜人は日本という国から転移させられた時、王者スキルを――」
「僕、龍前霧也はあらゆるチートスキルを得たんですよ」
そう言って二人は目を合わせる。
そんな様子はいかにも仲良さげで微笑ましい。
しかし今はそれどころじゃないと、エイリスは尋ねた。
「そんな素晴らしいスキルを……? でもお二人は勇者ではないのですか……?」
「私達は勇者じゃなかったんだよな、キリヤ?」
「ええ、兄さん。それでも僕は世界最強に限りなく近いですけどね」
世界最強――確かにキリヤは邪竜を倒すことで、それを証明している。
その言葉に、椅子で伸びていた王子が虚ろに呟いた。
「せ、せかいさいきょう……だと……?」
「はい、その通りです」
キリヤはそう答え、王子の元に歩いていく。
そして王子の耳元に口を寄せると、はっきりと言った。
「もう二度と、エイリスさんに迷惑をかけないで下さい。彼女は咲かない花に蕾を持たせるような心優しい人なんです。今後、彼女のことはこの僕が責任を持って守ります。もし彼女に手を出そうとしたら――死よりも辛い責め苦を与えますよ?」
「ひっ……!? ひいぃぃぃ……!?」
王子はついに椅子から転げ落ちると、尻もちをついた。
そのまま後ろ向きに這っていくと、邪竜の生首にぶつかって悲鳴を上げる。
やがて王子は何度も生首にぶつかると、這う這うの体で王宮から逃げていった。
広間の入口から透き通った声が響いた。
そこには黒尽くめの制服らしき服を着た少年が立っていた。
彼が片手で引き摺るのは――血を滴らせる巨大なドラゴンの生首。
その首からは禍々しいオーラが溢れ、ただのドラゴンでないことは明らかだった。
広間にいた人々は一瞬悲鳴を上げたが、すぐに大人しくなる。
今、話しに出ていた邪竜の首が目の前にある、そのことが信じられなかった。
すると少年は溜息を吐いて、こう語り出した。
「普通、こんな目立つ存在を復活させる企みに気付かない訳ないでしょう? あなたの企みを知った時から、対策は取っていました。まあ、魔法無効化を十キロ圏内に敷いて、その範囲内にいた人々には魔法障壁を張り、遠距離から即死効果を放つだけで倒せたので、対策もクソもないんですが――」
「は、はぁ……?」
バイロン王子は間の抜けた声を発し、椅子からずり落ちた。
エイリスは少年を見て、目を見開く――あれは先日会ったキリヤ・リュウゼンだ。
彼が、華奢な体つきをした彼が、邪竜を倒したというのか。
その時、エイリスのすぐ隣りから拍手の音が響いた。
目をやると、レイトが手を打っている。
「よくやった、キリヤ」
「ああ。ありがと、兄さん」
レイトは静まり返った広間を抜けて、入口へ歩いていく。
そして黒猫のようなキリヤの頭をよしよしと撫でた――キリヤは少し嫌そうな顔をして、その手を受け入れている。
エイリスが驚きの表情のままレイトに尋ねる。
「兄さん……? もしかしてキリヤは陛下の弟君なのですか……?」
「その通りです、聖女様。私は本名をレイト・リュウゼン・スライアと申します」
「そうなのですか……? しかしリュウゼンとは聞き慣れない姓ですね……?」
「ああ、私とキリヤは異世界からの転移者なんですよ」
「転移者……!? 陛下がですか……!?」
するとレイトとキリヤは頷き、こちらを見た。
背が高く髪も目も茶色のレイト、そしてまだ背が低く髪も目も黒色のキリヤはよく見れば鼻と口がそっくりだ――並んで紹介されたら、兄弟だとすぐに分かったはずだ。
そして二人は自分自身の能力を告げた。
「私、龍前怜人は日本という国から転移させられた時、王者スキルを――」
「僕、龍前霧也はあらゆるチートスキルを得たんですよ」
そう言って二人は目を合わせる。
そんな様子はいかにも仲良さげで微笑ましい。
しかし今はそれどころじゃないと、エイリスは尋ねた。
「そんな素晴らしいスキルを……? でもお二人は勇者ではないのですか……?」
「私達は勇者じゃなかったんだよな、キリヤ?」
「ええ、兄さん。それでも僕は世界最強に限りなく近いですけどね」
世界最強――確かにキリヤは邪竜を倒すことで、それを証明している。
その言葉に、椅子で伸びていた王子が虚ろに呟いた。
「せ、せかいさいきょう……だと……?」
「はい、その通りです」
キリヤはそう答え、王子の元に歩いていく。
そして王子の耳元に口を寄せると、はっきりと言った。
「もう二度と、エイリスさんに迷惑をかけないで下さい。彼女は咲かない花に蕾を持たせるような心優しい人なんです。今後、彼女のことはこの僕が責任を持って守ります。もし彼女に手を出そうとしたら――死よりも辛い責め苦を与えますよ?」
「ひっ……!? ひいぃぃぃ……!?」
王子はついに椅子から転げ落ちると、尻もちをついた。
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やがて王子は何度も生首にぶつかると、這う這うの体で王宮から逃げていった。
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