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2章:望執dream truth.
伸ばした手
しおりを挟む────走る。桜の花が舞う夜の街を。どんどん湧き上がってくる身に覚えの無い記憶に頭痛を覚えながら。
何度か人とぶつかったような気がする。それでも、オレはただひたすらに走り続けた。
ずっと走り続けていたから息切れを起こしていて苦しい。……ただ、それ以上に酷く眠い。
こんな時に例の発作かよ、と悪づきながらそれでも走り続けた。
猛烈な眠気に耐えながら走り続けていると、街の交差点の信号が赤に変わり、仕方なくオレは立ち止まる。
眠気でふらつきそうになる身体を必死に持ち堪えながら息を整えていると、横で同じく信号待ちをしていた人混みの中から一歩、何かに押されたかのように幼い子どもが飛び出した。
未だ赤信号から変わっていない道路には大型車が子どもに向かって迫ってくるのが見える。
大型車は子どもに気がついていないのかスピードを落とす気配もなく、周りの人達も我関せず、と言ったように動く気配も騒ぐ気配もしない。
大型車はもうすぐそこに迫って来ているのに子どもは何が起きているのか分からない様子で、きょとんとしてオレを見ている気がして。
────気がついたら、オレは子どもを助けようと車道に飛び出していた。
流石の周りの人間もざわざわと騒ぎ出し、大型車もクラクションを鳴らしながらブレーキを踏む音が聞こえるが、きっと間に合わないだろう。
オレは子どもだけでも、と目の前の子どもを押しのけようと手を伸ばした。しかし、伸ばした手は空を切る。
「は……?」
先程まで居たはずの子どもはどこにも居らず、そのままバランスを崩したオレはその場に倒れ込んで。
「────勇樹くんッ!」
昔からずっと聞き続けたその声と、周囲の悲鳴が聞こえる。避けようと思うのに、眠気が酷くて、動けない。
我慢できずに意識が落ちるその瞬間に、強い衝撃がオレの身体を襲った。
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