1 / 4
1.男と黒い獣
しおりを挟む
俺は悪魔に魂を売った男なんだ。
そう男がおもむろに話しだした時、はじめ私は一笑に付してしまったものであった。
旅慣れた者はもの寂しい山中において他に野営者を見つけてもめったに声をかけることはない。何故ならいきなり相手が略奪者に豹変してしまう危険性があるからである。
なのに、何故彼には話しかけてしまったのかというと、若い冒険者と黒い獣の組み合わせに好奇心をかられたからである。
黒い珍しい見たことがない獣。
目は赤で角度によっては橙色にも変わる。まるで焔のゆらぎのようだ。
男はまだ青年から壮年の間くらいだろうか。茶色の髪に緑の瞳、肌は白い。話によると西方の出自であるというから、その地域の一般的な容姿であるといえるだろう。
獣を従えているから調教師かと思ってたのだが、剣士なのだという。
獣のことに言及すると言葉が重くなるので、それ以上こちらから触れることはしなかった。
冒険者は自分もそうであるように訳ありの者も多い。
そんな出会いであったが、一晩語り明かした末に私バードとその男ヒューゴは意気投合した。
私も根無し草の冒険者であるし、ヒューゴは旅をしながら人を探しているという。
ヒューゴの故郷はある冒険者グループの略奪によって滅ぼされてしまったのだという。その仇を探しているそうだ。
冒険者は山のようにいるから、その中から探し出すのは至難の技で、一生かかっても無理ではないかと思ったが、立ち入る必要もないため口には出さなかった。
そんなわけで我々はしばらく行動を共にすることになったのであった。
冒険者ギルドには様々な仕事依頼があるが、やはり一人よりは二人のほうが値のはる仕事がしやすいし、弓使いである私は近接戦闘が得意な相方がいるのは心強い。
そういった現実的な事情もあるが、ヒューゴといるのは楽しかった。
獣は側にいるとき思えば忽然と姿を消すときもあった。だがいなくなったと思っても気がつけば戻っている。
だが、いてもなにをするでもない。
伏せて顎をのせ、退屈そうに私たちの仕事をただ見ているだけであるからた。
それはヒューゴが窮地におちいっても、その姿勢は変わらないようだった
そんな日々を送っていたある日である。
宿をとろうとした所、折しもお祭りがあり混雑しているため、一部屋しかないという。
ヒューゴは神経質なため人がいると寝付けないと言っており、我々はお宿屋ではお互い一部屋ずつとることに決めていたのだが、この時はそうもいかなかった。
黒い獣ももちろんついてきていたが、うっそりと入ってくるといつものように伏せていたので、気に留めないようにしていた。
さて、私は夜中眠りについたが、ふと目がさめてしまった。
うめき声がする。
ヒューゴがうなされているのだと思い、もう一方の寝台に近づき揺り動かす。
大丈夫か?と声をかけたり揺さぶったりしてみたが、脂汗をかき、耐えるように歯を食いしばり、体をかたくしているが、どうしても起こすことがならない。
困惑した私はなにげなく周りをみまわし、獣と目があった。
獣は微動だにせず伏せているが、暗闇の中に小さな2つの炎のような瞳が燃えていた。
にやりと笑いかけられたような気がして、私は我知らずぞっとした。
初めてその獣がこわいと思ったのである。
朝になると、ヒューゴは普通に起きてきた。
「俺はうなされてなかっただろうか?」
「うなされていたが、起こそうとしても起きなかったからほおっておいたが」
「ありがとう。バードのそういうところが助かる」
私の無関心さにヒューゴはホッとしたようであった。
このようなことは付き合いが長くなるにつれて何度かあったが、触れてほしくなさそうなので無関心を貫いていた。
ある時、野営をして二人で飲んでいた時であった。
ヒューゴの目の下にはくまがくっきりと出ている。
「最近寝れていないのか?」
珍しくかなり深酒していたのと、寝不足で酒がまわったのだろう、ヒューゴはとろんとした目で私を見て、はぐらかさずに答えた。
「寝るのが怖いんだ」
「怖い?眠るのが??」
「何故か聞きたい?」
別にいい、と言わなかったのは、私も酔っていたからかもしれない。
「俺は悪魔に魂を売った男なんだ」
そう男がおもむろに話しだした時、はじめ私は一笑に付してしまったものであった。
旅慣れた者はもの寂しい山中において他に野営者を見つけてもめったに声をかけることはない。何故ならいきなり相手が略奪者に豹変してしまう危険性があるからである。
なのに、何故彼には話しかけてしまったのかというと、若い冒険者と黒い獣の組み合わせに好奇心をかられたからである。
黒い珍しい見たことがない獣。
目は赤で角度によっては橙色にも変わる。まるで焔のゆらぎのようだ。
男はまだ青年から壮年の間くらいだろうか。茶色の髪に緑の瞳、肌は白い。話によると西方の出自であるというから、その地域の一般的な容姿であるといえるだろう。
獣を従えているから調教師かと思ってたのだが、剣士なのだという。
獣のことに言及すると言葉が重くなるので、それ以上こちらから触れることはしなかった。
冒険者は自分もそうであるように訳ありの者も多い。
そんな出会いであったが、一晩語り明かした末に私バードとその男ヒューゴは意気投合した。
私も根無し草の冒険者であるし、ヒューゴは旅をしながら人を探しているという。
ヒューゴの故郷はある冒険者グループの略奪によって滅ぼされてしまったのだという。その仇を探しているそうだ。
冒険者は山のようにいるから、その中から探し出すのは至難の技で、一生かかっても無理ではないかと思ったが、立ち入る必要もないため口には出さなかった。
そんなわけで我々はしばらく行動を共にすることになったのであった。
冒険者ギルドには様々な仕事依頼があるが、やはり一人よりは二人のほうが値のはる仕事がしやすいし、弓使いである私は近接戦闘が得意な相方がいるのは心強い。
そういった現実的な事情もあるが、ヒューゴといるのは楽しかった。
獣は側にいるとき思えば忽然と姿を消すときもあった。だがいなくなったと思っても気がつけば戻っている。
だが、いてもなにをするでもない。
伏せて顎をのせ、退屈そうに私たちの仕事をただ見ているだけであるからた。
それはヒューゴが窮地におちいっても、その姿勢は変わらないようだった
そんな日々を送っていたある日である。
宿をとろうとした所、折しもお祭りがあり混雑しているため、一部屋しかないという。
ヒューゴは神経質なため人がいると寝付けないと言っており、我々はお宿屋ではお互い一部屋ずつとることに決めていたのだが、この時はそうもいかなかった。
黒い獣ももちろんついてきていたが、うっそりと入ってくるといつものように伏せていたので、気に留めないようにしていた。
さて、私は夜中眠りについたが、ふと目がさめてしまった。
うめき声がする。
ヒューゴがうなされているのだと思い、もう一方の寝台に近づき揺り動かす。
大丈夫か?と声をかけたり揺さぶったりしてみたが、脂汗をかき、耐えるように歯を食いしばり、体をかたくしているが、どうしても起こすことがならない。
困惑した私はなにげなく周りをみまわし、獣と目があった。
獣は微動だにせず伏せているが、暗闇の中に小さな2つの炎のような瞳が燃えていた。
にやりと笑いかけられたような気がして、私は我知らずぞっとした。
初めてその獣がこわいと思ったのである。
朝になると、ヒューゴは普通に起きてきた。
「俺はうなされてなかっただろうか?」
「うなされていたが、起こそうとしても起きなかったからほおっておいたが」
「ありがとう。バードのそういうところが助かる」
私の無関心さにヒューゴはホッとしたようであった。
このようなことは付き合いが長くなるにつれて何度かあったが、触れてほしくなさそうなので無関心を貫いていた。
ある時、野営をして二人で飲んでいた時であった。
ヒューゴの目の下にはくまがくっきりと出ている。
「最近寝れていないのか?」
珍しくかなり深酒していたのと、寝不足で酒がまわったのだろう、ヒューゴはとろんとした目で私を見て、はぐらかさずに答えた。
「寝るのが怖いんだ」
「怖い?眠るのが??」
「何故か聞きたい?」
別にいい、と言わなかったのは、私も酔っていたからかもしれない。
「俺は悪魔に魂を売った男なんだ」
0
あなたにおすすめの小説
博愛主義の成れの果て
135
BL
子宮持ちで子供が産める侯爵家嫡男の俺の婚約者は、博愛主義者だ。
俺と同じように子宮持ちの令息にだって優しくしてしまう男。
そんな婚約を白紙にしたところ、元婚約者がおかしくなりはじめた……。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
神父様に捧げるセレナーデ
石月煤子
BL
「ところで、そろそろ厳重に閉じられたその足を開いてくれるか」
「足を開くのですか?」
「股開かないと始められないだろうが」
「そ、そうですね、その通りです」
「魔物狩りの報酬はお前自身、そうだろう?」
「…………」
■俺様最強旅人×健気美人♂神父■
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる