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9.DOMはかしずく
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「DISOBEDIENCE」
プレイ開始ののっけから、おもむろに犬飼はあのコマンドを口にした。
『嫌なことは、コマンドに従わないでもいいっていう意味です』
犬飼の言葉を脳裏で反芻する。
従わないことに命じるなんて本当に聞いたことがない。
変なDOMだと思うが、気が楽になることは確かだった。
「じゃあまず、KISS」
「……おい、調子にのんな」
キス!?
この前は勝手にされたが、冗談じゃないと怒って口を引き結ぶ桐原に、犬飼は破顔してみせた。
「怒らないで。イレギュラーなコマンドなので、ちゃんと効いてるか確認しただけです。最も、効いてなくてもキスしてもらえるからラッキーだけど」
「犬飼!!」
「桐原さんのためだけのコマンドですからね…ま、とりあえず大丈夫そうですね。そんな感じで、嫌なことは無視してくださいね。SHUSH 部長、もうプレイ始めてますよ」
コマンドに桐原は口をつぐまされた。
「楽にして。何も考えないで。そのままゆっくり深呼吸して」
まだプレイに入りきれない桐原に、犬飼が声をかけてくる。
命じられたくないという反発心と、同時に命じられることへの安堵感が不思議とわいてくる。
それから、これはしなければいけないことなのだという諦念。
どんなに反発してもSUBの本能はDOMを求めている。
観念して犬飼の言葉にならい深呼吸して頭をカラッポにすると、少しずつ深く入りこんでゆく感覚がした。
そう、今はプレイ中だ。
だから今の自分は普段とは違う。
自分はただ言うとおりにし、委ねていればいいのだと思えば張り詰めていた神経が少しずつ緩んでいく。
それにこのDOMは従わなくてよいという許しを与えてくれた。
桐原のためのコマンドだと言った。
DOMの命令は絶対なのに、それに従わないことを許すという心づかいはまるで愛情だった。
ふわりと心が軽くなる。
アルコールの助けもあるのかもしれないが、ザルで普段はほとんど酔わない桐原なのにほろ酔いにも似た感覚にとらわれた。
犬飼のグレアがコントロールがいまいちなは本当のようで、先日と違い今日は家で気が緩んでるからか、時々グレアがよくわからないタイミングでふわりともれてくる。
意図せずそれを受けてしまうが気持ちよかった。
もっと欲しい。
「COME。今日は触れてもよいですか?桐原さんの望まないことはしないので」
「わかった…」
答えながらだんだん朦朧としてくる。
望まないとってなんだろうか、やはりエロいことか?と頭の冷静な部分で考える。
当然望んでいないが、プレイ中は無防備だから犬飼が本気でしたいと思えば心も体も簡単に制圧されてしまうはずだ。そんなことを考えると戦慄がはしり抜けたが、それはどこか被虐の甘さを潜めていた。
だが、犬飼はそんなことをしない。
彼が自分の欲望のままにしないのは、桐原の意にに従っているからだ。
自分は犬飼に従っているが、犬飼もまた桐原に従っている。
そのことに気づいた瞬間、ゆっくりと犬飼に向けて気持ちが開いてゆくのを感じた。
「SIT、STAY…」
椅子を勧められるがままに座る。
その足元に、犬飼がかしずくように座る。
まるで、DOMのなのにSUBみたいだ。
もしくはお座りする犬か。
思わず少し笑ってしまう。
「桐原さん、圭司って、名前を呼んでいいですか?」
「嫌だ」
「即答…。でも、嫌なことちゃんと言えてGOOD BOYですね」
名前を何で呼ばせなければいけないとはねつけると、残念そうに笑った気配の後の思わぬGOODのコマンドに、桐原はビクッと身体を震わせた。
こんなことまでも褒められるなんて、不意打ちすぎてやばい。
犬飼は桐原の抵抗心をちゃんとありのままを理解しようとしてくれ、嫌といってもそれを許容し、褒めさえする。
喜びの甘い痺れが脳の芯に生まれた。
まずい、こんな風に甘やかされるのは。
「……あ、…」
いつも。
いつでも気を張り詰めさせてきたから、こんな風に、甘やかされるのはいつぶりなのか。
それなのにさらにご褒美のようにグレアが降り注ぎ、桐原は目眩を覚えるほど快感を覚えた。
肉体的な快感ではない、精神的なそれの充足感。
気持ちよすぎてたまらない。
…
支配の先にさらなる快感があるのを、桐原は知らないけれども知ってる。
されるがままになりたい。
……そう思ったとき、誰も入れないようにしてきた心に、するりとグレアとともに桐原の中に犬飼がはいってきた。
ような気がした。
プレイ開始ののっけから、おもむろに犬飼はあのコマンドを口にした。
『嫌なことは、コマンドに従わないでもいいっていう意味です』
犬飼の言葉を脳裏で反芻する。
従わないことに命じるなんて本当に聞いたことがない。
変なDOMだと思うが、気が楽になることは確かだった。
「じゃあまず、KISS」
「……おい、調子にのんな」
キス!?
この前は勝手にされたが、冗談じゃないと怒って口を引き結ぶ桐原に、犬飼は破顔してみせた。
「怒らないで。イレギュラーなコマンドなので、ちゃんと効いてるか確認しただけです。最も、効いてなくてもキスしてもらえるからラッキーだけど」
「犬飼!!」
「桐原さんのためだけのコマンドですからね…ま、とりあえず大丈夫そうですね。そんな感じで、嫌なことは無視してくださいね。SHUSH 部長、もうプレイ始めてますよ」
コマンドに桐原は口をつぐまされた。
「楽にして。何も考えないで。そのままゆっくり深呼吸して」
まだプレイに入りきれない桐原に、犬飼が声をかけてくる。
命じられたくないという反発心と、同時に命じられることへの安堵感が不思議とわいてくる。
それから、これはしなければいけないことなのだという諦念。
どんなに反発してもSUBの本能はDOMを求めている。
観念して犬飼の言葉にならい深呼吸して頭をカラッポにすると、少しずつ深く入りこんでゆく感覚がした。
そう、今はプレイ中だ。
だから今の自分は普段とは違う。
自分はただ言うとおりにし、委ねていればいいのだと思えば張り詰めていた神経が少しずつ緩んでいく。
それにこのDOMは従わなくてよいという許しを与えてくれた。
桐原のためのコマンドだと言った。
DOMの命令は絶対なのに、それに従わないことを許すという心づかいはまるで愛情だった。
ふわりと心が軽くなる。
アルコールの助けもあるのかもしれないが、ザルで普段はほとんど酔わない桐原なのにほろ酔いにも似た感覚にとらわれた。
犬飼のグレアがコントロールがいまいちなは本当のようで、先日と違い今日は家で気が緩んでるからか、時々グレアがよくわからないタイミングでふわりともれてくる。
意図せずそれを受けてしまうが気持ちよかった。
もっと欲しい。
「COME。今日は触れてもよいですか?桐原さんの望まないことはしないので」
「わかった…」
答えながらだんだん朦朧としてくる。
望まないとってなんだろうか、やはりエロいことか?と頭の冷静な部分で考える。
当然望んでいないが、プレイ中は無防備だから犬飼が本気でしたいと思えば心も体も簡単に制圧されてしまうはずだ。そんなことを考えると戦慄がはしり抜けたが、それはどこか被虐の甘さを潜めていた。
だが、犬飼はそんなことをしない。
彼が自分の欲望のままにしないのは、桐原の意にに従っているからだ。
自分は犬飼に従っているが、犬飼もまた桐原に従っている。
そのことに気づいた瞬間、ゆっくりと犬飼に向けて気持ちが開いてゆくのを感じた。
「SIT、STAY…」
椅子を勧められるがままに座る。
その足元に、犬飼がかしずくように座る。
まるで、DOMのなのにSUBみたいだ。
もしくはお座りする犬か。
思わず少し笑ってしまう。
「桐原さん、圭司って、名前を呼んでいいですか?」
「嫌だ」
「即答…。でも、嫌なことちゃんと言えてGOOD BOYですね」
名前を何で呼ばせなければいけないとはねつけると、残念そうに笑った気配の後の思わぬGOODのコマンドに、桐原はビクッと身体を震わせた。
こんなことまでも褒められるなんて、不意打ちすぎてやばい。
犬飼は桐原の抵抗心をちゃんとありのままを理解しようとしてくれ、嫌といってもそれを許容し、褒めさえする。
喜びの甘い痺れが脳の芯に生まれた。
まずい、こんな風に甘やかされるのは。
「……あ、…」
いつも。
いつでも気を張り詰めさせてきたから、こんな風に、甘やかされるのはいつぶりなのか。
それなのにさらにご褒美のようにグレアが降り注ぎ、桐原は目眩を覚えるほど快感を覚えた。
肉体的な快感ではない、精神的なそれの充足感。
気持ちよすぎてたまらない。
…
支配の先にさらなる快感があるのを、桐原は知らないけれども知ってる。
されるがままになりたい。
……そう思ったとき、誰も入れないようにしてきた心に、するりとグレアとともに桐原の中に犬飼がはいってきた。
ような気がした。
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