××男と異常女共

シイタ

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ゴミ女の深夜バイト

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◯二〇二号室の隣人◯ Sight : キリヤ

 適度に揺れを起こし窓外の景色を流して、車は進んで行く。俺は流れる景色を眺めながら、後部座席左側に座っていた。
 前の方では大神とかいう胡散臭そうな男が、頭の上で二つのリボン立ててた御五智という女と、会話している声が聞こえてくる。いや、会話というか男の方が一方的に話しかけている感じだ。
 端から見たら胡散臭いおじさんが女子高生にナンパしているように見えるのかもしれないが、車の中だからセーフなのだろう。たぶん。

「何を考えているのかな? 八切くん」

 隣からの声に反応してそちらを見ると、俺をこのバイトに誘ってきた白髪の女が隣に座っていた。
 白髪という時点で目立つ女だが、それに拍車をかけるように目立つものをその女は身体に身につけている。首、両腕、片足、顔半分にぐるぐるぐると白い巻物、包帯をその女は巻いていた。
 まるでエジプトの化け物モンスターを催すようなその格好を見て俺はその女を『ミイラ女』と呼んでいる。だけど、それを名付けてから今にして思えば、この女の見た目は身体全体に包帯を纏っているミイラではなく、中二病を患っている痛い女として見て取れるんじゃないだろうか。

 これからは『ミイラ女』ではなく、『中二病女』と呼ぶことにするかどうするか。

 そんなどうでもいいことを考えて、俺は木乃伊みいら未来みらいを見ていた。

「……何も。それより給料は?」

「お仕事放棄しようとした人が、何を言っているのかな?」

「放棄もなにも、手伝うことないって言われたんだから帰っただけだ。俺別に悪くなくねぇし、結局お仕事したし」

「私に言われてだけどね」

 俺は未来の言葉に口を紡ぎ、そしてその時のことを思い出す。
 あの現場で雨がっぱを着た金髪の女と会った後、俺は家に帰ろうとした。わざわざ足を運んだのに、無駄足を踏んだと不満を胸に抱きながら。
 そりゃそうだ、ヘルプに来たのに何も手伝うことがないと言われれば誰だってそう思うだろう。俺は不満をぶつけようとこのヘルプを頼んできた女、木乃伊未来に電話を掛けた。
 するとどうだろうか、電話が繋がりこちらが不満を口に出す前に未来は言った。

『回れ右して仕事に戻って、彼女が捕まるその前に』

 こちらに有無を言わせず、それで電話が切れる。
 仕方なく、言われた通りに回れを右をして戻ってみると、もう先程の場所に金髪の女は存在せず、どうするかと思っていたら未来からメッセージが送られてきた。
 メッセージの内容は俺がいる場所から、金髪の女がゴミを運ぶ目的地であろう場所の経路図。俺はその経路図に描かれたルートを頭に入れて、その目的地に向かった。
 まるで俺が電話を掛けることが分かっていたかのような言葉とタイミングが良すぎるメッセージ。俺は未来に手のひらで踊らされてるような感覚に陥ったが、これも初めてのことじゃないと割り切って気にしないことにした。

 経路通りに向かってみれば、金髪の女の後ろ姿を見つける。そして、同時にある場所に目がいった。それは金髪の女の前方、十字路に取り付けてあるカーブミラーだ。そのカーブミラーは反射して左の道を映しており、そこには二つの光が揺れ動いているのを俺は見つけた。
 それが人であることを俺はすぐさま察知し、先程の有無を言わせない電話で未来が言っていた『捕まる』という単語から、十中八九その光を照らしているのが巡回中の警察官であろうと考えた。
 このまま行けば金髪の女はその警察官に補導されてしまい、ゴミ箱の中身を確認されてしまうだろう。そうなれば、ゴミ箱の中にある死体が見つかりお仕事は失敗おじゃん、ここまで来て給料ももらえなくなる。
 俺はそうなる前に金髪の女の肩を掴んで止め、隠れたのだ。そうしてなんとか事なきを得て、俺はお仕事を終わらせた。

「……何で感謝も言われないで攻められてんの俺?」

「褒められたいの? よく出来ました、えらいえらいって頭を撫でて欲しいの?」

「いや全然。感謝も褒め言葉もいらないから金をくれ」

 俺は手を出して給料を催促する。しかし、その手は未来によって下げられた。

「それは、明日八切くんのポスト届けられるから、それまでお楽しみね」

「……これで激安だったらバラしてやる」

「まー、怖い。いったいいつから八切くんは脅迫というものを覚えたのかな?」

「さーてね。言葉だけなら小中の時じゃねぇーの、知らんけど。お前は初めて言った嘘とか覚えていんのかよ」

「私は嘘というものをついたことがないから覚えてないかな。この白い髪に白い肌、白い包帯が私の身の潔白を証明してるよ」

「…………意味不イミフ

「だったら、このお話はここでお終いにしましょうか」

 パンッと仕切り直すように両手を叩いて「はい、お終い」と未来は言った。
 その後、俺も未来もすぐには何かを喋ったりはせず、少しの沈黙が両者の間に出来上がる。初めにその沈黙を破ったのは俺だった。
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