××男と異常女共

シイタ

文字の大きさ
60 / 111
ゴミ女の深夜バイト

4-14

しおりを挟む
「そんで、お仕事ってこれっきりなのか?」

「別にどっちでもいいよ。一応手伝って欲しい時は連絡入れるし、面倒だと思ったら手伝わなくてもいい。でもこれっきりだったら困るのは八切くんじゃない? バイト見つけれてないんでしょ」

「……御察しの通りで」

「だったら、このお仕事は八切くんにとっては喉から手が出るほど、とまではいかないかもしれないけど、まだマシなものなんじゃない。それに他人に笑顔を振り撒いて、愛想を浮かべて、上の者に従うお仕事なんて、君には似合わないしね」

「……このお仕事が俺にピッタリとでも?」

「ピッタリじゃなくても八切くんの性には合ってるんじゃない。深夜徘徊を趣味にしてるんだから、それのついでだと思ってやるぐらいでいいと思うし、こっちとしても口が軽い人より固い人の方が好都合だしね」

 未来はそう言って後ろを見た。俺も釣られて後ろを見れば、そこにはカーゴスペースにポツンと置かれたデカイゴミ箱が一つあるだけ。
 中身は言わずもだが、確かにこのお仕事は口が軽い奴なんかに任せられるようなものじゃない。むしろそんな奴がこのお仕事をすれば、最後はこのゴミ箱に入れられてしまうだろう。長生きしたければ、関わらない喋らない思い出さないを心がけるしかない。

 それにしても、この中身はいったい何に使われるのだろうか?

 そんな素朴な疑問を俺は抱いた。
 焼却でもされて証拠隠滅されるのか、コンクリートにでも埋められて東京湾に沈められるのか、深い深い人が寄り付かない樹海の中に埋められてしまうのか、それとも……。
 俺は首を振って思考を中断させる。そんなことは考えても仕方のないことだし、どうでもいいことだ。
 事なしを得たければ、長生きするための方法とほとんどおんなじことをすればいい。面倒ごとは厄介極まりない人生の毒である。それを飲まないためにも、何も聞いてはいけないのだ。

 車のスピードが落ちたと思うと、すぐにブレーキが掛かって窓外で流れていた景色が止まった。
 外を見れば、俺が今住んでいるアパートが目の前に見える。

「じゃあね、八切くん。また会いましょう」

「……あぁ」

 俺は外に出てすぐに扉を閉めようとすると、未来が思い出したかのように「あ、それと」と声を出す。

「分かってると思うけど?このことは他言無用だからね」

「へいへい」

 俺が今度こそ扉を閉めようとすると、未来はまだ何かあるのか「あと」と付け加えてきた。

「ん?」

「彼女とは仲良くね」

「は?」

 意味が分からんと思いながら、未来の顔を見て何も説明してくれないのだろうと察した俺は、三度目の正直で扉を閉めた。
 するとすぐに黒いバンは発進し、先にある曲がり角を曲がって見えなくなった。

「……彼女って誰だよ。……?」

 そこで、俺はあることに気付く。二つのリボンを頭の上で立たせた金髪の女が、俺の隣に立っていることに。

「お前何してんの?」

「家に帰ってきた」

「家ってどこよ?」

「……ここ」

 金髪の女が指差す場所は、俺が住んでいるアパートである。知ってて言わなかったなあのミイラめ、と俺は心の中で愚痴った。

「あなたもここに住んでるの?」

「そうだけど」

「……何号室?」

 嫌な予感がするなと思いながら、俺は答えることにする。

「……二〇一」

「……おぉ、お隣さんだ」

 嫌な予感は見事に的中した。
 金髪の女は驚いたような声を出しているが、表情にはあまり驚きが出ていない。気持ちがあまり表情に出ない奴なのだろうということがそれで分かった。

御五智みごち姶良あいら。……よろしく」

「……八切やぎりキリヤだ。……シクヨロ」

 これが『ゴミ女』と俺の出会いだった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

黒に染まった華を摘む

馬場 蓮実
青春
夏の終わりに転校してきたのは、忘れられない初恋の相手だった——。 高須明希は、人生で“二番目”に好きになった相手——河西栞に密かに想いを寄せている。 「夏休み明けの初日。この席替えで、彼女との距離を縮めたい。話すきっかけがほしい——」 そんな願いを胸に登校したその朝、クラスに一人の転校生がやってくる。 彼女の名は、立石麻美。 昔の面影を残しながらも、まるで別人のような気配をまとう彼女は——明希にとって、忘れられない“初恋の人”だった。 この再会が、静かだった日常に波紋を広げていく。 その日の放課後。 明希は、"性の衝動"に溺れる自身の姿を、麻美に見られてしまう——。 塞がっていた何かが、ゆっくりと崩れはじめる。 そして鬱屈した青春は、想像もしていなかった熱と痛みを帯びて動き出す。 すべてに触れたとき、 明希は何を守り、何を選ぶのか。 光と影が交錯する、“遅れてきた”ひと夏の物語。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...