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ゴミ女の深夜バイト
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「そんで、お仕事ってこれっきりなのか?」
「別にどっちでもいいよ。一応手伝って欲しい時は連絡入れるし、面倒だと思ったら手伝わなくてもいい。でもこれっきりだったら困るのは八切くんじゃない? バイト見つけれてないんでしょ」
「……御察しの通りで」
「だったら、このお仕事は八切くんにとっては喉から手が出るほど、とまではいかないかもしれないけど、まだマシなものなんじゃない。それに他人に笑顔を振り撒いて、愛想を浮かべて、上の者に従うお仕事なんて、君には似合わないしね」
「……このお仕事が俺にピッタリとでも?」
「ピッタリじゃなくても八切くんの性には合ってるんじゃない。深夜徘徊を趣味にしてるんだから、それのついでだと思ってやるぐらいでいいと思うし、こっちとしても口が軽い人より固い人の方が好都合だしね」
未来はそう言って後ろを見た。俺も釣られて後ろを見れば、そこにはカーゴスペースにポツンと置かれたデカイゴミ箱が一つあるだけ。
中身は言わずもだが、確かにこのお仕事は口が軽い奴なんかに任せられるようなものじゃない。むしろそんな奴がこのお仕事をすれば、最後はこのゴミ箱に入れられてしまうだろう。長生きしたければ、関わらない喋らない思い出さないを心がけるしかない。
それにしても、この中身はいったい何に使われるのだろうか?
そんな素朴な疑問を俺は抱いた。
焼却でもされて証拠隠滅されるのか、コンクリートにでも埋められて東京湾に沈められるのか、深い深い人が寄り付かない樹海の中に埋められてしまうのか、それとも……。
俺は首を振って思考を中断させる。そんなことは考えても仕方のないことだし、どうでもいいことだ。
事なしを得たければ、長生きするための方法とほとんどおんなじことをすればいい。面倒ごとは厄介極まりない人生の毒である。それを飲まないためにも、何も聞いてはいけないのだ。
車のスピードが落ちたと思うと、すぐにブレーキが掛かって窓外で流れていた景色が止まった。
外を見れば、俺が今住んでいるアパートが目の前に見える。
「じゃあね、八切くん。また会いましょう」
「……あぁ」
俺は外に出てすぐに扉を閉めようとすると、未来が思い出したかのように「あ、それと」と声を出す。
「分かってると思うけど?このことは他言無用だからね」
「へいへい」
俺が今度こそ扉を閉めようとすると、未来はまだ何かあるのか「あと」と付け加えてきた。
「ん?」
「彼女とは仲良くね」
「は?」
意味が分からんと思いながら、未来の顔を見て何も説明してくれないのだろうと察した俺は、三度目の正直で扉を閉めた。
するとすぐに黒いバンは発進し、先にある曲がり角を曲がって見えなくなった。
「……彼女って誰だよ。……?」
そこで、俺はあることに気付く。二つのリボンを頭の上で立たせた金髪の女が、俺の隣に立っていることに。
「お前何してんの?」
「家に帰ってきた」
「家ってどこよ?」
「……ここ」
金髪の女が指差す場所は、俺が住んでいるアパートである。知ってて言わなかったなあのミイラめ、と俺は心の中で愚痴った。
「あなたもここに住んでるの?」
「そうだけど」
「……何号室?」
嫌な予感がするなと思いながら、俺は答えることにする。
「……二〇一」
「……おぉ、お隣さんだ」
嫌な予感は見事に的中した。
金髪の女は驚いたような声を出しているが、表情にはあまり驚きが出ていない。気持ちがあまり表情に出ない奴なのだろうということがそれで分かった。
「御五智姶良。……よろしく」
「……八切キリヤだ。……シクヨロ」
これが『ゴミ女』と俺の出会いだった。
「別にどっちでもいいよ。一応手伝って欲しい時は連絡入れるし、面倒だと思ったら手伝わなくてもいい。でもこれっきりだったら困るのは八切くんじゃない? バイト見つけれてないんでしょ」
「……御察しの通りで」
「だったら、このお仕事は八切くんにとっては喉から手が出るほど、とまではいかないかもしれないけど、まだマシなものなんじゃない。それに他人に笑顔を振り撒いて、愛想を浮かべて、上の者に従うお仕事なんて、君には似合わないしね」
「……このお仕事が俺にピッタリとでも?」
「ピッタリじゃなくても八切くんの性には合ってるんじゃない。深夜徘徊を趣味にしてるんだから、それのついでだと思ってやるぐらいでいいと思うし、こっちとしても口が軽い人より固い人の方が好都合だしね」
未来はそう言って後ろを見た。俺も釣られて後ろを見れば、そこにはカーゴスペースにポツンと置かれたデカイゴミ箱が一つあるだけ。
中身は言わずもだが、確かにこのお仕事は口が軽い奴なんかに任せられるようなものじゃない。むしろそんな奴がこのお仕事をすれば、最後はこのゴミ箱に入れられてしまうだろう。長生きしたければ、関わらない喋らない思い出さないを心がけるしかない。
それにしても、この中身はいったい何に使われるのだろうか?
そんな素朴な疑問を俺は抱いた。
焼却でもされて証拠隠滅されるのか、コンクリートにでも埋められて東京湾に沈められるのか、深い深い人が寄り付かない樹海の中に埋められてしまうのか、それとも……。
俺は首を振って思考を中断させる。そんなことは考えても仕方のないことだし、どうでもいいことだ。
事なしを得たければ、長生きするための方法とほとんどおんなじことをすればいい。面倒ごとは厄介極まりない人生の毒である。それを飲まないためにも、何も聞いてはいけないのだ。
車のスピードが落ちたと思うと、すぐにブレーキが掛かって窓外で流れていた景色が止まった。
外を見れば、俺が今住んでいるアパートが目の前に見える。
「じゃあね、八切くん。また会いましょう」
「……あぁ」
俺は外に出てすぐに扉を閉めようとすると、未来が思い出したかのように「あ、それと」と声を出す。
「分かってると思うけど?このことは他言無用だからね」
「へいへい」
俺が今度こそ扉を閉めようとすると、未来はまだ何かあるのか「あと」と付け加えてきた。
「ん?」
「彼女とは仲良くね」
「は?」
意味が分からんと思いながら、未来の顔を見て何も説明してくれないのだろうと察した俺は、三度目の正直で扉を閉めた。
するとすぐに黒いバンは発進し、先にある曲がり角を曲がって見えなくなった。
「……彼女って誰だよ。……?」
そこで、俺はあることに気付く。二つのリボンを頭の上で立たせた金髪の女が、俺の隣に立っていることに。
「お前何してんの?」
「家に帰ってきた」
「家ってどこよ?」
「……ここ」
金髪の女が指差す場所は、俺が住んでいるアパートである。知ってて言わなかったなあのミイラめ、と俺は心の中で愚痴った。
「あなたもここに住んでるの?」
「そうだけど」
「……何号室?」
嫌な予感がするなと思いながら、俺は答えることにする。
「……二〇一」
「……おぉ、お隣さんだ」
嫌な予感は見事に的中した。
金髪の女は驚いたような声を出しているが、表情にはあまり驚きが出ていない。気持ちがあまり表情に出ない奴なのだろうということがそれで分かった。
「御五智姶良。……よろしく」
「……八切キリヤだ。……シクヨロ」
これが『ゴミ女』と俺の出会いだった。
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