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Ignorance is bliss.
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水原と佐倉が何も知らない一雄にスマホを使い話の種になっている白猫と白兎のキャラのことを教えている間、俺は倫太郎に向かって不満げに視線を飛ばした。
「なぁにキィちゃん? 俺の顔になんか付いてる?」
「あぁ、目と鼻と口が付いてるよ。邪魔そうだから取ってやろうか?」
「キィちゃんの心づかいは嬉しいけど遠慮しとくよ。まだまだ俺の目と鼻と口には、それぞれ重要な役目というものがあるからね」
「どうせしょうもない役目だろ」
「そんなことないよ。目はまだ見ぬ美しく可愛い少女を見るためでしょう。鼻はその少女の香りを嗅ぐためで。そして、口はそんな少女とのファーストキッスのためにあるんだから。とっても重要でしょ」
嬉々として堂々とそう答える倫太郎。
よくもまあ恥ずかしげもな言えるもんだと思いながら、俺は適当に「あっそ」と応えておいた。
「それよりさっきの態度、俺に喧嘩でも売ってたのか?」
「俺がキィちゃんに? そんなことするわけないじゃん。被害妄想が過ぎるよ、キィちゃん」
「だったら、あのドヤ顔はなんなんだよ? 説明してみろ」
「あれは、キィちゃんのピクリともしない表情が、俺のドヤ顔で少しでも動いてくれたらいいなぁと思ってやったんだ」
「……それって、やっぱ喧嘩売ってたことだよな?」
「えぇ、違うよぉ。気のせいだよぉ~って、痛っ! 痛いよ、キィちゃん」
あさっての方向を向いて喋る倫太郎にイラつきを覚えた俺は、蹴りを繰り出して鬱憤を晴らすことにした。
そこで一雄に白キャラのことを教え終わったのか、一雄と佐倉と水原がこちらの会話に入ってくる。
「確かに若林の言う通りよね。八切って表情がなさすぎ。いっつも機嫌悪そうにしか見えないんだけど」
「言えてる。だからいつも話しかけるのに躊躇するんだよ。何考えてるか分かんないから」
「目つきの悪さが拍車を掛けてるよねぇ」
佐倉、一雄、倫太郎が順に俺の顔にケチをつけてくる。水原だけは何も言わずに黙っているだけだ。
「あ? なに、文句でもあるの?」
「ある」
「あ、ある」
「ある?」
俺の問いに、佐倉ははっきりと、一雄はつっかえりながら、倫太郎は疑問形で、肯定してきた。
そんな三人の答えに、俺は「あっそ」とどうでも良さそうに応える。というか、それ以外に応えようもなければ、どうしようもない。機嫌が悪そうに見えるのも、倫太郎が言う目つきの悪さも、生まれつきなのだから。
……どうでもいい。
チラリと、俺は相変わらず黙っている水原に意図を持って視線を向ける。
するとその視線に気付いた水原は少し慌てた反応を見せて、「わ、私は特に八切くんの顔に文句とかないよ」と言った。
その答えが水原の本音かはたまた優しさかどうかは知らないが、そんなことを聞きたくて視線を向けたわけではないのだけど。それを指摘する必要はなくなった。
「それで、ゆりかが言ってた、八切とキ◯ィーが似てるって話しだけど、……何処が?」
俺の顔を見て、首を傾げる佐倉。今彼女が聞いた質問が正に俺が水原に聞きたかったことである。
白くて、可愛くて、人気のあるキャラクターが、いつも機嫌が悪そうで、目つきが悪く、人気がない俺と何処が似ているというのだろうか。普通に気になるところではある。
「そういえば、そんな話ししてたねぇ、水原ちゃん。なんで話が逸れたんだっけ? キィちゃん?」
「お前がキテ◯ーをミ◯フィーと勘違いしてた所為だろうが」
「……あぁ、そういえば。ごめんね、話逸らしちゃって」
「いいよ、全然気にしなくて。私も全然気にしてないし」
両手を合わせて倫太郎が謝ると、水原は気にした様子を見せずにそう言う。
「それより、八切くんとキ◯ィーちゃんの似ているところだよね。話を戻すけど、さっきも言ってた通りキテ◯ーちゃんには口がないよね」
今度は分かりやすいように、水原はスマホの画面にキティの画像を見せながら前置きをする。さっきもそうやって話を進めていれば、倫太郎の間違いから始まった話の逸れが起こることも、倫太郎のあのムカつく顔を見ることも、なかったのではないだろうか。
今更そんなことを思ってもどうしようもないことだが、俺は水原のスマホを見てそう思った。
「その口がない所為でキ◯ィーちゃんって表情が分からないようになってて、いつ見ても無表情なんだけど、そのいつも無表情っていうには八切くんに似てるなって思ったんだ」
「ふぅん……」
水原の言葉を聞いて相槌を入れる佐倉だが、その顔には何処か納得のいってないという感じだ。それは他の二人も同じで、「う~ん」という考え顔である。
「確かにいつも無表情ってところは、似てるかもしれないわね。でも……」
「でも?」
佐倉はそこで言葉を止めて、水原の顔を見た後に俺の顔を見てくる。
なんとなくだが、俺は次の佐倉の言葉が予想できた。佐倉はきっと、こう言うだろう。
「『やっぱり似てないわよ』」
俺の予想通りに佐倉はその言葉を発し、その言葉を聞いた倫太郎と一雄「だよねぇ」と言った感じで賛同していた。水原は、「そうかなぁ」と佐倉達の応えに疑問を示している。
人の感性はそれぞれだが、俺も含めてここにいる四人の中で水原と同じ感覚を持った人間は一人としていなかった。
「なぁにキィちゃん? 俺の顔になんか付いてる?」
「あぁ、目と鼻と口が付いてるよ。邪魔そうだから取ってやろうか?」
「キィちゃんの心づかいは嬉しいけど遠慮しとくよ。まだまだ俺の目と鼻と口には、それぞれ重要な役目というものがあるからね」
「どうせしょうもない役目だろ」
「そんなことないよ。目はまだ見ぬ美しく可愛い少女を見るためでしょう。鼻はその少女の香りを嗅ぐためで。そして、口はそんな少女とのファーストキッスのためにあるんだから。とっても重要でしょ」
嬉々として堂々とそう答える倫太郎。
よくもまあ恥ずかしげもな言えるもんだと思いながら、俺は適当に「あっそ」と応えておいた。
「それよりさっきの態度、俺に喧嘩でも売ってたのか?」
「俺がキィちゃんに? そんなことするわけないじゃん。被害妄想が過ぎるよ、キィちゃん」
「だったら、あのドヤ顔はなんなんだよ? 説明してみろ」
「あれは、キィちゃんのピクリともしない表情が、俺のドヤ顔で少しでも動いてくれたらいいなぁと思ってやったんだ」
「……それって、やっぱ喧嘩売ってたことだよな?」
「えぇ、違うよぉ。気のせいだよぉ~って、痛っ! 痛いよ、キィちゃん」
あさっての方向を向いて喋る倫太郎にイラつきを覚えた俺は、蹴りを繰り出して鬱憤を晴らすことにした。
そこで一雄に白キャラのことを教え終わったのか、一雄と佐倉と水原がこちらの会話に入ってくる。
「確かに若林の言う通りよね。八切って表情がなさすぎ。いっつも機嫌悪そうにしか見えないんだけど」
「言えてる。だからいつも話しかけるのに躊躇するんだよ。何考えてるか分かんないから」
「目つきの悪さが拍車を掛けてるよねぇ」
佐倉、一雄、倫太郎が順に俺の顔にケチをつけてくる。水原だけは何も言わずに黙っているだけだ。
「あ? なに、文句でもあるの?」
「ある」
「あ、ある」
「ある?」
俺の問いに、佐倉ははっきりと、一雄はつっかえりながら、倫太郎は疑問形で、肯定してきた。
そんな三人の答えに、俺は「あっそ」とどうでも良さそうに応える。というか、それ以外に応えようもなければ、どうしようもない。機嫌が悪そうに見えるのも、倫太郎が言う目つきの悪さも、生まれつきなのだから。
……どうでもいい。
チラリと、俺は相変わらず黙っている水原に意図を持って視線を向ける。
するとその視線に気付いた水原は少し慌てた反応を見せて、「わ、私は特に八切くんの顔に文句とかないよ」と言った。
その答えが水原の本音かはたまた優しさかどうかは知らないが、そんなことを聞きたくて視線を向けたわけではないのだけど。それを指摘する必要はなくなった。
「それで、ゆりかが言ってた、八切とキ◯ィーが似てるって話しだけど、……何処が?」
俺の顔を見て、首を傾げる佐倉。今彼女が聞いた質問が正に俺が水原に聞きたかったことである。
白くて、可愛くて、人気のあるキャラクターが、いつも機嫌が悪そうで、目つきが悪く、人気がない俺と何処が似ているというのだろうか。普通に気になるところではある。
「そういえば、そんな話ししてたねぇ、水原ちゃん。なんで話が逸れたんだっけ? キィちゃん?」
「お前がキテ◯ーをミ◯フィーと勘違いしてた所為だろうが」
「……あぁ、そういえば。ごめんね、話逸らしちゃって」
「いいよ、全然気にしなくて。私も全然気にしてないし」
両手を合わせて倫太郎が謝ると、水原は気にした様子を見せずにそう言う。
「それより、八切くんとキ◯ィーちゃんの似ているところだよね。話を戻すけど、さっきも言ってた通りキテ◯ーちゃんには口がないよね」
今度は分かりやすいように、水原はスマホの画面にキティの画像を見せながら前置きをする。さっきもそうやって話を進めていれば、倫太郎の間違いから始まった話の逸れが起こることも、倫太郎のあのムカつく顔を見ることも、なかったのではないだろうか。
今更そんなことを思ってもどうしようもないことだが、俺は水原のスマホを見てそう思った。
「その口がない所為でキ◯ィーちゃんって表情が分からないようになってて、いつ見ても無表情なんだけど、そのいつも無表情っていうには八切くんに似てるなって思ったんだ」
「ふぅん……」
水原の言葉を聞いて相槌を入れる佐倉だが、その顔には何処か納得のいってないという感じだ。それは他の二人も同じで、「う~ん」という考え顔である。
「確かにいつも無表情ってところは、似てるかもしれないわね。でも……」
「でも?」
佐倉はそこで言葉を止めて、水原の顔を見た後に俺の顔を見てくる。
なんとなくだが、俺は次の佐倉の言葉が予想できた。佐倉はきっと、こう言うだろう。
「『やっぱり似てないわよ』」
俺の予想通りに佐倉はその言葉を発し、その言葉を聞いた倫太郎と一雄「だよねぇ」と言った感じで賛同していた。水原は、「そうかなぁ」と佐倉達の応えに疑問を示している。
人の感性はそれぞれだが、俺も含めてここにいる四人の中で水原と同じ感覚を持った人間は一人としていなかった。
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