××男と異常女共

シイタ

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Ignorance is bliss.

6-16

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 ゲーセンの中は相変わらず騒がしく、ゲーム機一台一台から出るBGMが混じり合い、それが雑音になって耳に入ってくる。
 超うるさい。ここに入る度にいつもそう思う。
 しかし、このうるささも時間が経てば慣れてきて、いつの間にか気にならなくなってくるのだ。
 それまで我慢である。

「じゃあ、あそこにあるゴミ箱に捨てといて。分別はちゃんとしてね。私は店長のところに行くから」

「ああ」

 ケインはそう言ってゲーセンの店長がいるのであろうカウンターに歩いて行き、俺たちはゴミ箱がある場所に向かって行った。
 ゴミ袋を姶良に処理させ、やっとのことでゲームに足を向けられる。
 ゲーセンに入ってまずゴミ箱に向かうなんて今まで初めてのことだが、別に思うところは何もない。
 とりあえず、どうするか。

「お前って今までゲーセン来たことある?」
 
 俺の問いに姶良はふるふると首を横に降る。
 まあ、予想通りの答えだ。

 こいつが一人でゲーセンに入っていく所なんて想像できないし、そんな暇があったら町中のゴミを拾っているだろうしな。

 つまり、姶良はゲーセンにあるゲームなど手をつけたことがないどころか、見るのも初めてなのだろう。
 それなら、人生初ゲームというものをやらせてみるのもいいかもしれない。初めはユウノの機嫌買いに使う道具を手に入れるついでにお祝いのプレゼントを贈るだけのつもりだったが、せっかくのお祝いなのだ、やるだけやらせてみよう。
 まずはクレーンゲームのやり方を教えながら俺がやってみるか。

 ユウノの機嫌買いに使えそうな道具景品を探しながら、ゲーセンの中を姶良と共に探索していく。
 クレーンゲームの景品の中にはぬいぐるみ、フィギュア、お菓子、おもちゃなど色々ある。
 その中でユウノの機嫌が買えそうなもの。すぐ思い付くのは一つだ。
 それは前にユウノがクレーンゲームで取ったスライムのぬいぐるみ。
 あれと同じものではないが、似たようなものを使えばユウノの機嫌を買うこともできるだろう。
 部屋であれだけスライムのぬいぐるみを気に入っているのだ。多分、間違いない。
 
 ――ということで見つけたスライムのぬいぐるみが景品とされているクレーンゲーム。
 そのスライムは部屋うちにあるものと同じで、丸くてクッションになりそうなぐらいの大きさに色は青色だ。
 しかし、全く同じものではない。少しだけ部屋にあるスライムとは違うところがある。
 そのスライムの頭には、幽霊が付けているような白い三角巾が付けられていた。
 それを見た瞬間、ユウノにはピッタリなぬいぐるみだと確信した。あいつは頭に三角巾なんて付けてはいないが、幽霊は幽霊だ。
 俺はユウノの機嫌買いに使う道具をこれにすることに決めた。
 
「ちゃんと見てろよ」

「……」

 お金を入れてボタンを押し、アームを動かしてスライムの元へ落としていく。
 三本のアームが簡単に丸いスライムを取ってくれそうな見た目をしているが、そう簡単にはいかない。
 がっしりとアームに掴まれたように見えたスライムが、持ち上がった次の瞬間にはスルッとアームから抜け落ちる。
 この通り、見た目に反してこのアームにはちからがない。そのため、まともにやってもスライムを取ることはできやしないのだ。
 まともにやって取ることができるのは、その日に運を持ってる奴か、お金をつぎ込んだ奴だけ。
 どうやら今日の俺は運を持っていないらしい。だからといって、たかがゲームに何千円もつぎ込むようなことはしたくない。
 ならばどうやって取るのかという話だが、簡単なことだ。
 まともにやって取れないのなら、まともにやらなければいいだけの話である。

 もともと、一発で取れるなんて思っていない。取れたらいいなとは思ったが、そこまで期待はしていなかった。
 今の一発目は、ただの下準備に過ぎない。
 取りこぼしたスライムは、今は逆さまになって置かれてる。そして逆さまになったスライムの背からは、さっきは見えなかった商品タグが剥き出しなっていた。
 狙うはその剥き出しになったタグ。
 もう一度お金を入れてボタンを押し、アームを動かして次はそのタグの元へ落としていく。
 アームで掴むのではなく、アームの爪にタグを引っ掛けて取る。そうすれば、アームに力がなかったとしても関係ない。


 ――ボトっとスライムが落ちた。
 先ほどまであった場所ではなく、景品ゲットとなる落とし口に。
 なんとか手に入れることができた。なかなかアームにタグを引っ掛けることができず、少し時間とお金が掛かってしまったが、取れたのだから結果的には良しである。
 取り出し口からスライムを回収し、ゲーセン内に置かれている景品持ち帰り用の袋にそれを入れる。
 さて、当初の目的は達成できた。あとはもう一つの目的を達成するだけだ。
 
「姶良」

「……何?」

「やってみろ」

「……どうして?」

「どうしてって、ゲーセンに来たんだからゲームしないでどうすんだよ。それに初めてのゲーセンなんだろ、せっかくなんだからやってみろ。金は俺が出してやるから」

「……」

「ああ、あとやるんだったらこっちの奴にしとけ。景品がお前にピッタリだからな」

「……」

 姶良は何も言わず俺の言うことに従い、隣のクレーンゲーム機に向かう。
 隣のクレーンゲーム機の景品は同じくスライムだが、色は黄色で頭にはうさぎの耳みたいなリボンを付けている。
 何処かの誰かを連想してしまいそうな見た目だ。まさに、その何処かの誰かにピッタリなスライムである。
 俺がお金を入れると、チャラリンという高い効果音が鳴りアームを動かすボタンが光りだす。
 ゲームスタートだ。
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