××男と異常女共

シイタ

文字の大きさ
23 / 111
ストーカー女のストーカー

2-17

しおりを挟む
◯約束のもの◯ Sight : ???


「ひゃああああああああぁぁぁぁぁぁぁ」

 男の人は絶叫しながら、走り去って行った。

「何あの人、いきなり大声で走り出して」

「幽霊でも見たんじゃないの?」

「ていうか、さっきから何かぶつぶつ言ってなかった? あそこのベンチに座ってで」

「なにそれ怖っ」

 近くでたむろっていた学生たちが、走って行った男について語り合う。
 私はそんな学生たちを無視してそこから離れようとすると、私のスマホが震え出し、メッセージを受信したことを伝えてきた。私はメッセージを一読すると、そこに書かれた場所に向かって歩き出す。

 向かった先はすぐ近くの裏道。人の気配はまったく感じられず、女の子が一人こんな時間に来るには、少しばかり危ない場所だ。
 そんな場所に呼び出すとは本当に変な人だ、と私は思いながら呼び出した本人を探す。するとその人物は、すぐに見つかけることができた。

「終わりましたよ、空乃先輩」

 空乃先輩は弄っていたスマホから顔上げると?私の方を見てニコッと笑った。

「お疲れさま、ちゃん。ごめんね、こんな面倒なことやらせちゃって」

 空乃先輩が両手を合わせて申し訳なさそうに謝ってくるが、その顔は全然申し訳なさそうに見えずとても軽い感じだ。
 全然悪いとは思っていなさそう。

「もっと誠意が見えるように謝ったらどうですか?」

「あれ見えなかった? 誠意?」

「全然。……いや、別にいいんですけど。それより、もうこういうのは勘弁して下さい。好きでもない人のもの盗んで、好きでもない人のために家事して、好きでもない人にとか口にするのは、流石に心身ともに疲れました」

「最後のは三影ちゃんが勝手にしたことだと思うんだけど?」

「むぅ、そうですけど。あの変態野郎にとどめを刺してあげたんですから、感謝してくださいよ」

「うんうん。三影ちゃん、えらいえらい」

 空乃先輩がニコニコ顔で近づいてきて、私の頭をナデナデしてくる。家族以外の人に頭を撫でられるのは、これが初めてかもしれない。

「それよりも約束、守ってくれますよね?」

「もちろん、そんなに心配した顔しなくてもしっかりと守るよ。あのメガネも、これでもう私にも、キリヤくんにも、ちょっかい出してくることはないだろしね」

 空乃先輩は肩に下げている鞄から、何かを取り出すとそれを私に差し出しきた。

「はい、これ。約束のもの♪」

「ありがとうございます」

 私はお礼を言ってそれを受け取った。空乃先輩が私に渡してきたのは一つのUSBメモリー。私が空乃先輩のストーカーを撃退する手伝いを受けた理由が、これである。もちろん、USBメモリー本体が欲しかった訳ではない、その中に入っている写真データが欲しかったのだ。

「それにしても、これぐらいのものなら三影ちゃんの方がうまく集められると思うんだけど、本当にこれでよかったの?」

「はい、これが良かったんです。私は空乃先輩みたいに、執拗に先輩に付き纏うことはできないので。それに、先輩に嫌われたくありませんし」

 私は、大事にそのUSBメモリーをポケットに入れた。
 早く帰って、中身を確かめたい。

「嫌われたくないのに、キリヤくんの写真集は欲しいんだね」

の写真が欲しいと思うのは、恋する人には当然の欲だと思いますけど……」

 私は見えない自分の顔が少し赤くなっていることを自覚し、恥ずかしげもなさそうに答えた。空乃先輩には私の見栄はバレバレだろうけど。
 彼女には初めから知られていることだから、今更恥ずかしくなることもない、と頭で理解していても、心と体はどうしようもなく『好きな人』という単語に反応してしまう。
 これが恋をする人間の自然な反応なのだろうと、私は密かに期待していた。

「それもそうだね。三影ちゃんは恋する乙女だもんねぇ~」

「むぅ、茶化さないでください。それに、それを言ったら空乃先輩だって恋する乙女じゃないですか」

「……それもそうだね」

 空を見上げ、何故か声のトーンを下げて応える空乃先輩。

 乙女と聞いて、乙女座でも探し始めたのだろうか?

 そんな的外れな考えをしながら、私はどれが乙女座か分からないまま、空乃先輩につられるように空の星を眺めた。
 空は暗いが雲はなく、星のきらめきと月の輝きが夜を照らしてくれている。
 明日は晴れになるだろう、と私は予想した。

 夜空を見上げて数分。

「それでは私は帰りますよ、空乃先輩」

「りょーかーい。またねぇ、三影ちゃん」

「はい、ではまた」

 空乃先輩はまだ夜空を見たまま動く様子もなく、私はそんな先輩に背を向けて帰路に立つ。
 その足取りはいつもより少し早い、私は先輩の写真集をすごく楽しみしていた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

(学園 + アイドル ÷ 未成年)× オッサン ≠ いちゃらぶ生活

まみ夜
キャラ文芸
年の差ラブコメ X 学園モノ X オッサン頭脳 様々な分野の専門家、様々な年齢を集め、それぞれ一芸をもっている学生が講師も務めて教え合う教育特区の学園へ出向した五十歳オッサンが、十七歳現役アイドルと同級生に。 子役出身の女優、芸能事務所社長、元セクシー女優なども登場し、学園の日常はハーレム展開? 第二巻は、ホラー風味です。 【ご注意ください】 ※物語のキーワードとして、摂食障害が出てきます ※ヒロインの少女には、ストーカー気質があります ※主人公はいい年してるくせに、ぐちぐち悩みます 第二巻「夏は、夜」の改定版が完結いたしました。 この後、第三巻へ続くかはわかりませんが、万が一開始したときのために、「お気に入り」登録すると忘れたころに始まって、通知が意外とウザいと思われます。 表紙イラストはAI作成です。 (セミロング女性アイドルが彼氏の腕を抱く 茶色ブレザー制服 アニメ) 題名が「(同級生+アイドル÷未成年)×オッサン≠いちゃらぶ」から変更されております

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

黒に染まった華を摘む

馬場 蓮実
青春
夏の終わりに転校してきたのは、忘れられない初恋の相手だった——。 高須明希は、人生で“二番目”に好きになった相手——河西栞に密かに想いを寄せている。 「夏休み明けの初日。この席替えで、彼女との距離を縮めたい。話すきっかけがほしい——」 そんな願いを胸に登校したその朝、クラスに一人の転校生がやってくる。 彼女の名は、立石麻美。 昔の面影を残しながらも、まるで別人のような気配をまとう彼女は——明希にとって、忘れられない“初恋の人”だった。 この再会が、静かだった日常に波紋を広げていく。 その日の放課後。 明希は、"性の衝動"に溺れる自身の姿を、麻美に見られてしまう——。 塞がっていた何かが、ゆっくりと崩れはじめる。 そして鬱屈した青春は、想像もしていなかった熱と痛みを帯びて動き出す。 すべてに触れたとき、 明希は何を守り、何を選ぶのか。 光と影が交錯する、“遅れてきた”ひと夏の物語。

処理中です...