恋人は副会長

福山ともゑ

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(90)フミオSide

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例の死角にあるソファ。
そこには、ソファに横たわっていた二人が居た。
そのことに、コウキは気が付いていなかった。

 「フミオ。俺は見なかったことにするからな」
 「俺達、何か見たっけ?」
 「机と椅子の位置」
 「元々、ああいう位置だったろ」

お互い顔を見合わせ、溜息をつきながら元に戻していった。
(コウキ、この借りは高く付くからな)と、思っていた。

 「でも、コウキも成長したな…」
 「喧嘩しなれてない、というか」
 「ヒットはしなかったが、良い線いってた」
 「まだのびてるけど…。代わりにやる?」
 「いや、しない」


片付け終わって、廊下を歩きながら話をしていた。
テルが言ってくる。
 「でも用事って、なんの用事だったんだろ?」
 「俺が知るかっ」
 「好きな人って、誰なのか気になる?」
 「俺に聞いてる?」
 「うん」
 「知らんっ」

即答かよ、と言ってくるが…。
反対に聞いてやる。
 「テルは知ってるのか?」
 「ああ。でも、コウキの片思いだと思うな」
 「ふーん…」
 「気になる?」
 「別に」
 「コウキの好きな人は、夏に出会った人だよ」
 「夏に、ね」
 「おそらく、黒張り二刀流の男。」
言い切ってきた、テルの言葉に驚いた。
 「は?」
 「でも、それは正体である人物ではない。闘ってる姿を見て、一目惚れしたんだな。
よくあるじゃない。助けて貰った相手に好意を持つ。って、いうのが」
 「あー…。なるほどね」
 「それに、正体を知った時の、あの顔。覚えてる?『嘘だ、信じないぞ』と顔だけでなく、身体全体で表していたよな。」
 「ああ、あれね。人をポッコリのデブと言いやがって…」
 「そうそう、それ。今年の夏は楽しかったな…」


 「ところで、iPhone直ったのか?」
 「ああ、これから受け取りに行く。」

内心は、こう思っていた。
(でもな、テル。お前の観察眼というか、それは良い線いってるぞ。
弘毅と俺は恋人だ。七夕祭の1週間前だから、夏だな。
デートは、まだ1回しかしてないけどな…。そろそろ2回目したいな。)

夜、家に戻ると直ってきたiPhoneを充電する。
充電させながら、今日の弘毅の言動を思い出していた。
バイトをしだしてからは会ってないが、少しでも自分の身を守るという事をしたのを目にしては、成長したんだなあ…。と、思い返していた。
喧嘩し慣れてない感はあるが、でも無駄な動きは無かったな。
これを本人に言うと、怒るだろうな。
 「見てたのなら、助けに来てくれても良いでしょっ!」って。


でも、これに懲りてヤリチン野郎も、手は出してこないだろうな。
シャワーも浴びすっきりしたところで、iPhoneも充電完了していた。
起動させ待つこと数分。
色々なアプリに通知が次々に入ってくる。
弘毅の名前をタッチしてメールしよう、と思った。
だが、メールが送れない。
どうして?
だから、電話を掛けることにした。


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