上 下
4 / 20

たまには街道を歩くのも悪くないわ

しおりを挟む
バカな子……じゃなくて、アルフレッドを引き連れて街道を歩いて行く。

馬車に乗っても良かったんだけど、これで見納めだと思うとゆっくり見たくなったの。別にこの国に愛着があるわけではないけど、景色を楽しみながらゆっくりと進む。

今はまだ遠くに見える魔の森も、人の心に癒やしを与える景色の一部でしかないわ。

日が当たって気持ちが良いわ。少し前までは不自由な生活だったし、自由を感じるってこんなに素晴らしいことなのね。

「このままだと、リーン公国に着くのは三日後になりそうです」
「あら、いいじゃない。ちょうど良いタイミングになると思うわよ」
「……どういうことでしょうか?」

私の執事を続けるのであれば、この程度の情報で察してほしいものね。でもその抜け具合が愛嬌になっているのだから、憎めないのよね。

それに、あなたには知力より武力を期待しているし、そのぐらい答えてあげる。

「三日後であれば、私が聖女の立場を追われたことがリーン公国にも届いて、対応方針が決まっている頃かしらね」
「なるほど……。って、それだとマズイのではないでしょうか!?」
「なんでかしら?」

何を焦っているのかしら?
ほんと、この子は予想が出来ないことばかりするのね。

「何の後ろ盾もないと分かれば、拘束されてしまいます。その後は、都合の良いように使われて――」
「そうならないためにアルフレッドがいるんでしょ? 期待していますよ」

そうは言ったものの、そんなことになるとは思っていないの。
脳筋の国王が治めている国と違って、リーン公国はすごく理性的。真面目すぎるのがたまにキズだけど、だからこそ信頼できる相手ともいえる。

そういった相手は予想がしやすいのよ。だから安心しなさい。

「もちろんです! この命に代えてもお嬢様をお守りいたします!」

と思ってても、盛り上がっている彼には言わないけどね。

「あなたが死んだら、その後は誰が守ってくるのかしら? 命に代えてはダメ。困難は乗り越えて生き残りなさい。命令よ」
「はっ! そのご命令、しかと承りました!」

土がむき出しの地面だというのに、膝をついて忠誠を誓うアルフレッド。ほんと、そんな動作をするなんて思いも寄らなかったわ。

「そう思うなら、着いてきなさい」

手を差し出してあげようかと悩んだけど、調子に乗りそうだからやめておいたわ。
その代わり、今晩は美味しいご飯をごちそうしてあげる。
だからこれからも、ずっと着いてくるのよ。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

ハーレムエンドを迎えましたが、ヒロインは誰を選ぶんでしょうね?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:49pt お気に入り:2,766

ブラック・スワン  ~『無能』な兄は、優美な黒鳥の皮を被る~ 

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,392pt お気に入り:191

士官学校の爆笑王 ~ヴァイリス英雄譚~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:127

〔仮〕悪役令嬢は婚約破棄で自由を謳歌する

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:28pt お気に入り:3,338

スキル「糸」を手に入れた転生者。糸をバカにする奴は全員ぶっ飛ばす

Gai
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:8,748pt お気に入り:5,980

万分の一の確率でパートナーが見つかるって、そんな事あるのか?

Gai
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,434pt お気に入り:3,456

転生司祭は逃げだしたい!!

児童書・童話 / 連載中 24h.ポイント:340pt お気に入り:118

処理中です...