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もう聖女にならないって決めたの

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「バカな女に騙された国王から追い出された。ただそれだけのことよ」

起こった出来事は一言でまとめられるほど簡単なことだった。
でも、その影響は大きいわ。私の祈りがなくなったノ―ディン王国の結界はすぐに解かれてしまう。ロミルダでしたっけ? 彼女じゃ代わりにすらならない。

「なんてことだ……」

マグヌスが手で顔をおおう。
これから迫りくる困難を想像しているのでしょう。この動作一つだけで、ノーディン王国の貴族より優秀なのは確定ね。

「結界がとけてしまうのは、いつですか?」
「翌日には間違いなく」

私は3日に1回、神殿で祈りをささげていた。それは、聖魔法を使わなければ3日しか持たないことを意味するわ。それまでにロミルダが祈りをささげると思うけど……延長できて1分ね。もう誤差の範囲。気にしなくていいでしょう。

「分かりました……。それでは、入国を許すには一つだけ条件があります」

条件と聞いてアルフレッドが騒がしくなりそうだったので、目で制す。
もちろん、彼は反抗しない。行儀よく口を閉じてくれたわ。

「その条件を教えてください」
「リーン公国の聖女になっていただけないでしょうか?」

なるほど。そういうことね。マグヌス様は私が想像していた以上に優秀な方なのかもしれない。
ノーディン王国の結界がなくなれば魔の森から魔物が攻めてくるわ。国を荒らし、崩壊させた後は……当然、隣国に攻めてくるわよね。

そう、リーン公国も無関係ではいられないの。
だからこそ私の力が必要というわけね。

「神殿で祈りを捧げよ。魔物の脅威からリーン公国を守ってほしい……そいうことでしょうか?」
「ご慈悲を賜りたく!」

あらあら、膝をついて頭を下げちゃうなんて。騎士様は必死ね。
でも、どんなにお願いされてもダメ。もう聖女になるつもりはないの。せっかくチャンスをもらったのだし、自由に生きたいじゃない?

「聖女にはなりません」

捨てられた猫のような顔をしないの。聖女にならないといっただけじゃない。

「私は誰の目も気にせず、自由に生きたいです。ですからマグヌス様が望むような聖女にはなりません。ですが、リーン公国は荒れてほしくないとも思っています」
「では!」

今度は誰もが見とれしまうような笑顔になる。
表情がコロコロと変わって楽しいわね。もう少しイジメたくなるけど……お遊びは後にしましょうか。

「祈りの結界はします。でも、私がやっていることは隠してもらえないでしょうか」
「このマグヌスの名にかけて、アルド大公を説得して見せましょう!」

交渉成立ね。マグヌス様、期待しているわよ。
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