81 / 95
五章 アルファの家系
34-1 二人だけの作戦会議
しおりを挟むこうなったことの簡単なあらましと、俺の思い。
匠海とは偶然会ったことで、相談に乗ってもらったこと。
そのお陰で良い感じに進みそうなこと。
今はその準備段階で大変忙しいこと。
それらを俺は、蜜希さんに全て話した。
それはもう、言われるがまま。根掘り葉掘り、全て。
「それ、もっと前に僕に相談出来たんじゃない?」
「出来ましたけど……俺のやったことに蜜希さんを巻き込む形になるので……」
「家出先で会ってる時点で、もう巻き込まれてるような気はするけど」
それもそうだ。
俺はなんとも言えない、申し訳ない気持ちになった。
「それとも、僕じゃ頼りないと思った?」
「! そんなことないです!」
「ふーん? まあいいけどね。それで? 街風谷くんに『味方だよ』って言われて嬉しくなっちゃったんだ?」
蜜希さんは未だ口を尖らせたまま、そう呟く。
まるでいつも遊んでいるメンバーに、仲間外れにされた子供みたいだ。
「そう……かもしれませんが、引っ張りますね、それ」
「だって、僕はまだ許してないからね」
「僕よりぽっと出の街風谷くんに相談したこと」と、蜜希さんが呟く。
(あー……)
俺は心臓がきゅんきゅんと、音を立てるのがわかった。
いつか蜜希さんに心臓の核を射抜かれて、この世とおさらばしそうだ。
祖父の言いつけを今すぐ放り投げてしまいたい衝動に駆られながら、俺は小さく咳をする。
「す、すみませんでした」
「ん。よろしい」
蜜希さんは満足気に微笑む。
早速心臓が射抜かれた。そういうのはずるいって言ってるでしょう。
「そこで、暁月くんに朗報なんだけど」
「朗報?」
「その話聞いて、僕もひとつ気づいたことがあるんだよね。――どうする? 聞いてみる?」
挑戦的に笑う蜜希さんに、俺は無意識に頷いていた。
もちろん。聞いてみたい。
蜜希さんの話なら、なんだって。
「聞きたいです」
「そうだよね。でも、今のままじゃ教えられないなぁ」
「えっ?」
「何か言うことがあるんじゃない?」
蜜希さんは笑う。
俺は静かに目を伏せた。
(蜜希さんが欲しい言葉……)
そんなの、考えたとてわかるわけがない。
天を仰ぎ、大きく深呼吸をする。
蜜希さんを見て、俺は彼を見つめる。
「蜜希さん」
「なあに」
自信満々な顔で俺の言葉を待つ。何を言われても動じないとばかりの視線だ。
俺はそれを少し崩してみたいと思いつつも、出来る気はしなかった。
だから、正直に言うしかない。
「俺は蜜希さんが好きです」
「うん……うん?」
蜜希さんが僅かに動揺する。
俺は彼の前に行き、片膝を付いた。
おとぎ話に出て来る王子を想像してもらえたら嬉しい。もちろん、俺はそんな大層な人間ではないが。
蜜希さんの白い手を取り、両手で包み込む。
びくりと蜜希さんの肩が跳ねた。
「俺は蜜希さんの為なら何でも出来ます。蜜希さんのことなら、全部知りたい。――蜜希さんが欲しいです」
「っ、ちょ、と」
「駄目ですか?」
「だ、だめもなにも……っ」
蜜希さんの顔に朱が走る。
俺は彼の手を強く握りしめた。
「蜜希さんの案が使えるかどうか、今現時点ではわかりませんし、どうなるかわかりません。でも、もし使った時は報酬はお支払いするつもりです」
「報酬って……別にそんなのいらないけど」
「そんなわけにはいきません。思考は人の財産ですから」
考えること。アイディア。
その全てに価値があり、それに相当する報酬を払うのは雇用者としては当然の義務だ。
俺は別に蜜希さんの雇用者ではないが、それを上に伝える義務はある。
「蜜希さんの全てに価値があるんです。そんなに投げやりにならないで、どうか俺に力を貸してください」
頭を垂れるように、蜜希さんの手の甲に額を付ける。
まるで聖女に力を乞う騎士のようだ。
蜜希さんは確かに癒しの力を持っているけど、女性ではないし、俺も騎士なんかじゃないけれど。
疲れているからか、ホテルで見た子供たちの王女様ごっこが頭から離れない。
小さな女の子が自身を王女だと名乗り、父親が騎士、母親が魔法使いの役をやっていた。「今、ハマっているアニメがあって……」と恥ずかしそうにご両親が言っていたのを思い出す。
じっと彼を見つめていれば、蜜希さんがキッと目尻を吊り上げる。
パッと手が引かれる。あっ、と声が出た。
離れた熱が惜しいと、こんな状況でも思ってしまう。
「あ、かつきくん! ちょっとやり過ぎ!」
「え?」
「ああもう! わかったってばっ、話してあげるから!」
「あ、ありがとうございます」
蜜希さんは投げやりに言うと、思案していたことを言葉にしてくれた。
どんどん言葉にしていくと共に、俺の中で燻っていた火が徐々に大きくなっていくのがわかる。
今まで見えていなかった部分が、照らされた火の光で見えていくような感覚だった。
蜜希さんの目が輝いていく。
意外とこういう策を練るのは、蜜希さんの方が得意なのかもいしれない。
「蜜希さん、最高です」
「ふふふ。頼られた以上、下手なことは言えないでしょ。それで? どうする?」
やるかやらないかは、暁月くん次第だよ。
俺は頷く。
この作戦が吉と出るか、凶と出るかはやってみないとわからない。
それでも、蜜希さんが考えてくれた以上、やってみたいとも思う。
「ちなみに、僕も協力するよ」
「やりましょう。絶対に」
俺は頷いた。
蜜希さんの考えてくれた案を蹴り飛ばすなんてこと、最初から出来るわけがなかった。
10
あなたにおすすめの小説
流れる星、どうかお願い
ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる)
オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年
高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼
そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ
”要が幸せになりますように”
オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ
王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに!
一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので
ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが
お付き合いください!
六年目の恋、もう一度手をつなぐ
高穂もか
BL
幼なじみで恋人のつむぎと渉は互いにオメガ・アルファの親公認のカップルだ。
順調な交際も六年目――最近の渉はデートもしないし、手もつながなくなった。
「もう、おればっかりが好きなんやろか?」
馴ればっかりの関係に、寂しさを覚えるつむぎ。
そのうえ、渉は二人の通う高校にやってきた美貌の転校生・沙也にかまってばかりで。他のオメガには、優しく甘く接する恋人にもやもやしてしまう。
嫉妬をしても、「友達なんやから面倒なこというなって」と笑われ、遂にはお泊りまでしたと聞き……
「そっちがその気なら、もういい!」
堪忍袋の緒が切れたつむぎは、別れを切り出す。すると、渉は意外な反応を……?
倦怠期を乗り越えて、もう一度恋をする。幼なじみオメガバースBLです♡
僕の幸せは
春夏
BL
【完結しました】
【エールいただきました。ありがとうございます】
【たくさんの“いいね”ありがとうございます】
【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】
恋人に捨てられた悠の心情。
話は別れから始まります。全編が悠の視点です。
【完結】選ばれない僕の生きる道
谷絵 ちぐり
BL
三度、婚約解消された僕。
選ばれない僕が幸せを選ぶ話。
※地名などは架空(と作者が思ってる)のものです
※設定は独自のものです
※Rシーンを追加した加筆修正版をムーンライトノベルズに掲載しています。
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
泡にはならない/泡にはさせない
玲
BL
――やっと見つけた、オレの『運命』……のはずなのに秒でフラれました。――
明るくてお調子者、だけど憎めない。そんなアルファの大学生・加原 夏樹(かはらなつき)が、ふとした瞬間に嗅いだ香り。今までに経験したことのない、心の奥底をかき乱す“それ”に導かれるまま、出会ったのは——まるで人魚のようなスイマーだった。白磁の肌、滴る水、鋭く澄んだ瞳、そしてフェロモンが、理性を吹き飛ばす。出会った瞬間、確信した。
「『運命だ』!オレと『番』になってくれ!」
衝動のままに告げた愛の言葉。けれど……。
「運命論者は、間に合ってますんで。」
返ってきたのは、冷たい拒絶……。
これは、『運命』に憧れる一途なアルファと、『運命』なんて信じない冷静なオメガの、正反対なふたりが織りなす、もどかしくて、熱くて、ちょっと切ない恋のはじまり。
オメガバースという世界の中で、「個」として「愛」を選び取るための物語。
彼が彼を選ぶまで。彼が彼を認めるまで。
——『運命』が、ただの言葉ではなくなるその日まで。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる