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「グラディス・ロイヤル」
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ルックナー 軍服を着用してゼーアドラーのセットの上に立っている
舞台、下手に船のセットがわずかに見えている。
パーミェン 艦長、前方に船が見えます!汽船です。
エルトマン 艦上にアンテナ線は見えません、無線を積んでいない船です。
クリンチ 海軍省の命令では、汽船は狙わずともよい、ということでした。
ルックナー 帆船で汽船に勝てないと考えているからな。だが、ここでやらないと士気が下がる。無線を積んでいないなら時間を少々かけてもかまわん。総員、戦闘準備!
そう言ってルックナー 近くに置いてあったコートを軍服の上から羽織る
ルックナー こうやって軍服を隠しておかないと、双眼鏡で見られた時に仮装巡洋艦とバレるからな。
パーミェン 十分接近したところで脱ぐんですね。
ルックナー そうしないと戦時国際法違反だし、何より、皇帝陛下の臣下たるもの、軍服を着用せずに戦うわけにはいかん。国際法より、そちらの方が大事だ。
観客席 言ってくれるものよ、嬉しく思うぞ。
ルックナー 観客席に軽く一礼する。
ルックナー そうそう、戦闘開始時は、旗もノルウェー国旗からドイツ国旗に変えるんだぞ。
パーミェン 承知しています。それも戦時国際法違反ですからな。
舞台上でセットが動く。「ゼーアドラー」が上手に引っ込み、その分下手の船のセットがせり出してくる。
ルックナー 近寄ってきた。仕事にかかるぞ!パーミェン、旗流信号を。
パーミェン 「正確な時刻をお知らせ乞う」、了解!
ナレーション 「正確な時刻をお知らせ乞う」これは、無線の無い時代、帆船同士が大海原で遭遇した時、掲げられる信号である。汽船であってもこの信号に応じ、時刻や現在位置の確認などを20世紀に入っても行っていた。
クランチ 汽船より「了解」の信号!
ルックナー かかったな。ドイツ国旗掲揚!
パーミェン 了解!
国旗がノルウェー国旗からドイツ国旗に変わる
ルックナー 砲撃開始!ただし一発目は当てるな。
キルヒアイス 了解!船首にぎりぎりにぶちこんでやります。
轟音と共に、舞台中央に水柱が上がる。
キルヒアイス チッ、ちょいと遠いか。もう一発
轟音と共に、今度は船首に水柱が上がる。
キルヒアイス どうよ!
下手の船、ゆっくりと下手に引き込まれる
ルックナー 動きを変える?逃げるつもりか?
キルヒアイス もう一発
ルックナー まだだ、まだ当てるな、威嚇にとどめろ
キルヒアイス まだ当てちゃいけませんか?
ルックナー 前に言ったが、世界中の船員はオレの友人だ。殺したりケガさせたくない。
キルヒアイス 了解。
今度の水柱は、船の舷側に上がった。
クリンチ 停船しました。ボートを下ろしています。
ルックナー 勝負ついたか。船長は丁重にお迎えしろ。
船長 「ゼーアドラー」の甲板に上がってくる
船長 「グラディス・ロイヤル」の船長です
ルックナー ドイツ仮装巡洋艦「ゼーアドラー」艦長フェリックス・フォン・ルックナーだ。
船長 まったく、上手くかつがれましたよ。長い事海に出ていますが、こんなことは初めてだ。
ルックナー 船長、あなたの船は沈めます。総員を退艦させて下さい。
船長 やはり沈めるのですか。中立国のアルゼンチンに石炭を運んでいるだけです。ドイツに敵対はしていないつもりです。
ルックナー それを我がドイツの商船が言った時、大英帝国海軍は容赦するでしょうか?
船長 いえ……。わかりました。
ルックナー プライス、「グラディス・ロイヤル」に乗り込んで食料など有益と思われるものを接収せよ。
プライス 了解。しかるのち爆薬を設置して沈める、でよろしいですな。
ルックナー その通りだが、沈めるのは夜になってからだ。爆発の閃光や煙、音でジョンブルの巡洋艦を呼び寄せたくない。
プライス 了解しました。
ルックナー 特に食料は根こそぎ頼む。長い航海になる。我らだけでなく、捕虜にもいいものを食べさせたいからな。
プライス 世界の船乗りは皆友達、ですか。
ルックナー そうだ、よろしく頼む。
プライス 了解。
プライス カッターで「グラディス・ロイヤル」に移乗する
しばしすると、照明が絞られてくる。
プライス カッターで「ゼーアドラー」に帰艦する。
プライス 爆薬に点火しました。もう少しすれば爆発し、沈没します。
ルックナー ご苦労。貴官の働きで食糧庫も潤った。
爆発音
「グラディス・ロイヤル」が下手に引き込まれていく。
ルックナー 船長とそれを見守る
船長 あぁ、ワシの船が沈んでしまった。
ルックナー ご愁傷様だが、これも戦争。許してくれ。
船長 あぁ、許して欲しいのなら一つ願いを聞いて欲しいのだがな。
ルックナー 何か?
船長 あてがわれたキャビンの居心地はいいのだが、一人では広い。話し相手が欲しい。
ルックナー わかった、早目に話し相手を用意しよう。待っていてくれ。
舞台、下手に船のセットがわずかに見えている。
パーミェン 艦長、前方に船が見えます!汽船です。
エルトマン 艦上にアンテナ線は見えません、無線を積んでいない船です。
クリンチ 海軍省の命令では、汽船は狙わずともよい、ということでした。
ルックナー 帆船で汽船に勝てないと考えているからな。だが、ここでやらないと士気が下がる。無線を積んでいないなら時間を少々かけてもかまわん。総員、戦闘準備!
そう言ってルックナー 近くに置いてあったコートを軍服の上から羽織る
ルックナー こうやって軍服を隠しておかないと、双眼鏡で見られた時に仮装巡洋艦とバレるからな。
パーミェン 十分接近したところで脱ぐんですね。
ルックナー そうしないと戦時国際法違反だし、何より、皇帝陛下の臣下たるもの、軍服を着用せずに戦うわけにはいかん。国際法より、そちらの方が大事だ。
観客席 言ってくれるものよ、嬉しく思うぞ。
ルックナー 観客席に軽く一礼する。
ルックナー そうそう、戦闘開始時は、旗もノルウェー国旗からドイツ国旗に変えるんだぞ。
パーミェン 承知しています。それも戦時国際法違反ですからな。
舞台上でセットが動く。「ゼーアドラー」が上手に引っ込み、その分下手の船のセットがせり出してくる。
ルックナー 近寄ってきた。仕事にかかるぞ!パーミェン、旗流信号を。
パーミェン 「正確な時刻をお知らせ乞う」、了解!
ナレーション 「正確な時刻をお知らせ乞う」これは、無線の無い時代、帆船同士が大海原で遭遇した時、掲げられる信号である。汽船であってもこの信号に応じ、時刻や現在位置の確認などを20世紀に入っても行っていた。
クランチ 汽船より「了解」の信号!
ルックナー かかったな。ドイツ国旗掲揚!
パーミェン 了解!
国旗がノルウェー国旗からドイツ国旗に変わる
ルックナー 砲撃開始!ただし一発目は当てるな。
キルヒアイス 了解!船首にぎりぎりにぶちこんでやります。
轟音と共に、舞台中央に水柱が上がる。
キルヒアイス チッ、ちょいと遠いか。もう一発
轟音と共に、今度は船首に水柱が上がる。
キルヒアイス どうよ!
下手の船、ゆっくりと下手に引き込まれる
ルックナー 動きを変える?逃げるつもりか?
キルヒアイス もう一発
ルックナー まだだ、まだ当てるな、威嚇にとどめろ
キルヒアイス まだ当てちゃいけませんか?
ルックナー 前に言ったが、世界中の船員はオレの友人だ。殺したりケガさせたくない。
キルヒアイス 了解。
今度の水柱は、船の舷側に上がった。
クリンチ 停船しました。ボートを下ろしています。
ルックナー 勝負ついたか。船長は丁重にお迎えしろ。
船長 「ゼーアドラー」の甲板に上がってくる
船長 「グラディス・ロイヤル」の船長です
ルックナー ドイツ仮装巡洋艦「ゼーアドラー」艦長フェリックス・フォン・ルックナーだ。
船長 まったく、上手くかつがれましたよ。長い事海に出ていますが、こんなことは初めてだ。
ルックナー 船長、あなたの船は沈めます。総員を退艦させて下さい。
船長 やはり沈めるのですか。中立国のアルゼンチンに石炭を運んでいるだけです。ドイツに敵対はしていないつもりです。
ルックナー それを我がドイツの商船が言った時、大英帝国海軍は容赦するでしょうか?
船長 いえ……。わかりました。
ルックナー プライス、「グラディス・ロイヤル」に乗り込んで食料など有益と思われるものを接収せよ。
プライス 了解。しかるのち爆薬を設置して沈める、でよろしいですな。
ルックナー その通りだが、沈めるのは夜になってからだ。爆発の閃光や煙、音でジョンブルの巡洋艦を呼び寄せたくない。
プライス 了解しました。
ルックナー 特に食料は根こそぎ頼む。長い航海になる。我らだけでなく、捕虜にもいいものを食べさせたいからな。
プライス 世界の船乗りは皆友達、ですか。
ルックナー そうだ、よろしく頼む。
プライス 了解。
プライス カッターで「グラディス・ロイヤル」に移乗する
しばしすると、照明が絞られてくる。
プライス カッターで「ゼーアドラー」に帰艦する。
プライス 爆薬に点火しました。もう少しすれば爆発し、沈没します。
ルックナー ご苦労。貴官の働きで食糧庫も潤った。
爆発音
「グラディス・ロイヤル」が下手に引き込まれていく。
ルックナー 船長とそれを見守る
船長 あぁ、ワシの船が沈んでしまった。
ルックナー ご愁傷様だが、これも戦争。許してくれ。
船長 あぁ、許して欲しいのなら一つ願いを聞いて欲しいのだがな。
ルックナー 何か?
船長 あてがわれたキャビンの居心地はいいのだが、一人では広い。話し相手が欲しい。
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