25 / 31
ルックナー 若き日の自分を語る
しおりを挟む
ナレーション かくして「ゼーアドラー」は南下する。
ルックナー クック諸島方面より無電だと?
クリンチ はい、通信室より報告が上がりました。
ルックナー 付近を航行している船からの無電ではないのか?
クリンチ 出力からして陸上のものである可能性が高いと。
ロイデマン 奈落より登場
ロイデマン 艦長、捕虜と話してみたんですが、クック諸島に最近無線局が開設されているらしいです。
ルックナー マジか?
ロイデマン 通信が取れるようになって便利だと言ってますから、間違いないでしょう。
ルックナー 行先を変更せねばならんな。どこか島は無いか?
クリンチ 早くしませんと、捕虜どもがうるさいです。下手をすると暴動です。
ロイデマン 俺が話した奴も、どこでもいい、無人島でいいから下ろしてくれ。これ以上海にいたくない、とうるさ
かったですね。
ルックナー ええい、クック諸島の近くに……ソシエテ諸島……ここだ!
ルックナー 海図を指差す
クリンチ リーワード諸島、モペリア島*1?
ルックナー ここならクック諸島から離れている。これはリーワード諸島の島々に言えることだが、海底火山の活動でできた島で、接岸するのが難しく、人が住まない無人島ばかりだ。そんなところに、手間暇かけて無線局を開設などすまい。
ロイデマン 詳しいですね。艦長、この辺を航海したことがおありで?
ルックナー いやない。
ロイデマン 無いんですか。てっきりこの辺はオレにとって庭みたいなもんだ、と豪語するものだと。
ルックナー まぁ話を聞いたくらいだ。オーストラリアで灯台守の下働きしてた時にな。
クリンチ カンガルーの大陸にもおられたんでしたな。
ルックナー ヒンズー教の秘術を学んだのもオーストラリアでの話だ。
ロイデマン 色々な話がありそうですな。
ルックナー ドイツのハンブルグから、帆船「ニオベ」号に乗り組んで来たのが、オーストラリアだ。救世軍の一員になって、そこで灯台守の下働きの仕事を紹介された。
クリンチ 安全そうな仕事なのに、どうして辞めたんですか?
ルックナー 海が俺を呼んでいたから、と言いたいが逃げ出しただけだ。
ロイデマン 何をやらかしたんです?
ルックナー 灯台守の娘に手を出した。
ロイデマン そんなことで。
ルックナー オレだって命は惜しい。あの時、灯台守がショットガンを置いている部屋に飛んで行ったからな。
クリンチ ……激しい父親ですな。
ルックナー オレの部屋の扉を叩いていたのは、ショットガンのストックで間違いない。財布と時計引っ掴んで窓から逃げなかったら、フリーマントル(オーストラリア西部の都市)の海で魚の餌だ。
ロイデマン 逃げてどうしたんです?
ルックナー 色々だな。製材所で働いたり、猟師やったり、ヒンズー教の高僧から秘術を授かったりしているうちに、ボクサーとしてスカウトされた。
ロイデマン 落ち着かない人生で。
ルックナー いやボクサーとして一人前になったら、サンフランシスコでデビューさせてやると言われてな。アメリカには行きたかったもんでな。
ロイデマン で、ボクサーになったんですか?
ルックナー いや月給45ドルでホノルル行きの帆船の船員に、と勧誘されて、さっさとホノルルに行ってそれから、アメリカ本土だ。
ロイデマン 定着しない人ですな。この時期何も積み上げなかったんですな。
ルックナー そんなことはない。貯金だけはちゃんとした。だから、ドイツに戻った時、自分の金で航海士の学校に行くこともできた。そして、こうやって海軍士官にもなれた*2。
クリンチ 放蕩者なのか堅実なのかわかりませんな、若い頃の艦長は。
*1マウハピア島、とも、モピア島とも表記される。
*2ルックナーは、航海士の資格を取得後、一年志願兵制度*3を利用して海軍大尉となっている。
*3ドイツ海軍が、戦争に備え予備役士官を確保するために設けた制度。一年の軍務と所定の学科の取得で、士官学校に行かずとも海軍大尉となれる。
ルックナー クック諸島方面より無電だと?
クリンチ はい、通信室より報告が上がりました。
ルックナー 付近を航行している船からの無電ではないのか?
クリンチ 出力からして陸上のものである可能性が高いと。
ロイデマン 奈落より登場
ロイデマン 艦長、捕虜と話してみたんですが、クック諸島に最近無線局が開設されているらしいです。
ルックナー マジか?
ロイデマン 通信が取れるようになって便利だと言ってますから、間違いないでしょう。
ルックナー 行先を変更せねばならんな。どこか島は無いか?
クリンチ 早くしませんと、捕虜どもがうるさいです。下手をすると暴動です。
ロイデマン 俺が話した奴も、どこでもいい、無人島でいいから下ろしてくれ。これ以上海にいたくない、とうるさ
かったですね。
ルックナー ええい、クック諸島の近くに……ソシエテ諸島……ここだ!
ルックナー 海図を指差す
クリンチ リーワード諸島、モペリア島*1?
ルックナー ここならクック諸島から離れている。これはリーワード諸島の島々に言えることだが、海底火山の活動でできた島で、接岸するのが難しく、人が住まない無人島ばかりだ。そんなところに、手間暇かけて無線局を開設などすまい。
ロイデマン 詳しいですね。艦長、この辺を航海したことがおありで?
ルックナー いやない。
ロイデマン 無いんですか。てっきりこの辺はオレにとって庭みたいなもんだ、と豪語するものだと。
ルックナー まぁ話を聞いたくらいだ。オーストラリアで灯台守の下働きしてた時にな。
クリンチ カンガルーの大陸にもおられたんでしたな。
ルックナー ヒンズー教の秘術を学んだのもオーストラリアでの話だ。
ロイデマン 色々な話がありそうですな。
ルックナー ドイツのハンブルグから、帆船「ニオベ」号に乗り組んで来たのが、オーストラリアだ。救世軍の一員になって、そこで灯台守の下働きの仕事を紹介された。
クリンチ 安全そうな仕事なのに、どうして辞めたんですか?
ルックナー 海が俺を呼んでいたから、と言いたいが逃げ出しただけだ。
ロイデマン 何をやらかしたんです?
ルックナー 灯台守の娘に手を出した。
ロイデマン そんなことで。
ルックナー オレだって命は惜しい。あの時、灯台守がショットガンを置いている部屋に飛んで行ったからな。
クリンチ ……激しい父親ですな。
ルックナー オレの部屋の扉を叩いていたのは、ショットガンのストックで間違いない。財布と時計引っ掴んで窓から逃げなかったら、フリーマントル(オーストラリア西部の都市)の海で魚の餌だ。
ロイデマン 逃げてどうしたんです?
ルックナー 色々だな。製材所で働いたり、猟師やったり、ヒンズー教の高僧から秘術を授かったりしているうちに、ボクサーとしてスカウトされた。
ロイデマン 落ち着かない人生で。
ルックナー いやボクサーとして一人前になったら、サンフランシスコでデビューさせてやると言われてな。アメリカには行きたかったもんでな。
ロイデマン で、ボクサーになったんですか?
ルックナー いや月給45ドルでホノルル行きの帆船の船員に、と勧誘されて、さっさとホノルルに行ってそれから、アメリカ本土だ。
ロイデマン 定着しない人ですな。この時期何も積み上げなかったんですな。
ルックナー そんなことはない。貯金だけはちゃんとした。だから、ドイツに戻った時、自分の金で航海士の学校に行くこともできた。そして、こうやって海軍士官にもなれた*2。
クリンチ 放蕩者なのか堅実なのかわかりませんな、若い頃の艦長は。
*1マウハピア島、とも、モピア島とも表記される。
*2ルックナーは、航海士の資格を取得後、一年志願兵制度*3を利用して海軍大尉となっている。
*3ドイツ海軍が、戦争に備え予備役士官を確保するために設けた制度。一年の軍務と所定の学科の取得で、士官学校に行かずとも海軍大尉となれる。
0
あなたにおすすめの小説
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
徳川慶勝、黒船を討つ
克全
歴史・時代
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
尾張徳川家(尾張藩)の第14代・第17代当主の徳川慶勝が、美濃高須藩主・松平義建の次男・秀之助ではなく、夭折した長男・源之助が継いでおり、彼が攘夷派の名君となっていた場合の仮想戦記を書いてみました。夭折した兄弟が活躍します。尾張徳川家15代藩主・徳川茂徳、会津藩主・松平容保、桑名藩主・松平定敬、特に会津藩主・松平容保と会津藩士にリベンジしてもらいます。
もしかしたら、消去するかもしれません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる