王妃様、残念でしたっ!

久保 倫

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おまけ ボツネタ

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 ドラード公襲撃後のお話


 ドラード公が去ってからが大変でした。
 負傷した4人は、運び出され、治癒魔術により緊急治療され、一命をとりとめました。

 イルダ様とイシドラは、メリナを産湯につかわすために母屋へ。

 私とウルファは……ウルファがドラード公の気を引くため、庭に放った下着の回収に。

「恥ずかしかったんですよぉ。あんな脂ぎったオッサンに、あんなこと言って。おまけに……。」
「うんうん、そうやって時間稼いでくれたから、みんな助かったんだよ。」

 泣きそうな顔するウルファを慰めながら、死傷者を運び出す兵士の目を盗んで庭を探し、血と泥にまみれた下着を探しあてました。
 もう使えませんが、ただの布切れと思われていた証拠ですから気が楽です。
 男性に、自分の脱ぎたての下着差し出されるなんて、拷問以外の何物でもありませんから。

「ウルファ、お店が開いたら、買いに行こう。お金出すからおしゃれなの選んで。」
「はい。」
 ウルファも、ほっとした顔になった時。


 一陣の風がウルファのネグリジェを巻き上げ……。


 ウルファは三日間、部屋に閉じこもって出てきませんでした。

「あの時は、お屋敷の客間の一つを三日間独占して申し訳ありませんでした。」
「いいのよ。それより、ウルファ痩せたんじゃない。ろくに食事をしなかったじゃない。」
「えぇ、体重は落ちましたけどぉ。」

 ウルファは、胸を持ち上げます。

「ここの肉は落ちなかったんですよぉ。」

 ピシィッ!

 なんでしょう、非常にムカつくんですけど。

「あら、そうなの。」 
「はい、今までダイエットしたことあるんですけどぉ、ここの肉だけ落ちないんですよぉ。」

 ピシピシィ!!

 イシドラやエルゼも顔を引きつらせてます。

「貴女もなの。」
「伯爵夫人もですかぁ。」
「えぇ、食事を抜いたことがあったけど、それでも落ちなかったのよね、ここだけ。」

 伯爵夫人も胸元に目を落とします。


 ピシピシピシィッ!!!


 その場にいた伯爵夫人のメイド達までも、青筋をたてているのがわかります。

 オラシオやアズナールまでもが、逃亡したくなるような険悪な雰囲気。

 そんな中、イシドラが、口を開きます。

「まあ、なんだ。私もダイエットしたことがあるが、胸の肉は落ちたことが無いぞ。」
「それって、落ちる肉が無かっただけっしょ。」

 オラシオ。
 あんたって……。
 アズナールは、申し訳なさそうな顔してオラシオから離れます。

「気付け!」

 抜く手も見せずに、小瓶を取り出し栓を抜いたイシドラが、オラシオに気付け薬アンモニアをかざします。
「ぐへっ!」
 悪臭にオラシオはたまらず、のけぞります。
「ごめん。」
 ちっとも悪いと思っていない表情のエルゼが、オラシオの足を払います。
 簡単に背中から倒れるオラシオ。

「まぁ、とっても臭い。」
「こんな匂い、メリナ様に嗅がせるわけには参りません。」
「ドラードは、水で洗い流したそうよ。」
「水、ね。」

 イルダ様に仕えるメイド達が、花瓶や水差し、お茶のポットまで手にします。

「えい。」
 侍女達が、それぞれの水を倒れたオラシオにぶっかけます。
「うげっ、ひでぇ!」

 言うてはならんこと言うからよ、オラシオ。

 オラシオは、ごろごろ転がって難を避けようとします。
 それをメイド達は、面白がって追いかけながら手元の水をかけます。

 オラシオも何か楽しんでいるような。

 手元の水が無くなった時点で終わり、オラシオはアズナールの足元に転がります。

「お前、口は災いのもとって知ってるか?」
「いや、幸せ。」
「何が?」
「あのメイド達、右からさ、白、ピンク、レース、紐パンだぜ。」

 メイド達が、スカートの前を押さえます。

「オラシオ、お前。」
「フッ、戦士への訓戒の一。戦士たる者、敵の些細な隙も見逃がすべからず。」
 カッコつけて言ってますが、水をかけられ転がりながらも、スカートの中を覗いたと。

 すごいのかもしれませんが……。

「イヤーッ!」
「エッチ!」
「スケベ!」
「死んじゃえ!」
 
 今度は、モップやホウキを手にオラシオを叩きます。

「うへっ。」 
「頭から、今見たこと掃き出してやる!」
「無理だね。深く刻んだから。」
「バカーッ!」

 もう楽しんでやってるでしょ、オラシオ。 

「あいつも、あの状況でちゃんと見て覚えているのがすごいですけど。」
 確かに、一瞬の機会を逃さず見て誰がどうなのか把握しているのは、すごいです。
「アズナールだって。」
「何、エルゼ?」
「誰がどの下着か覚えてるはず。」
「まぁ、今なら、右からレース、白、紐パン、ピンクか。」
 アズナールも、一度聞いただけで把握したんだ。

 ん、それって……。

 メイド達の動きが止まります。

「あっ……。」
 事態を悟ったエルゼが、申し訳なさそうな顔をします。

 でも、しっかり逃げるんだ。

「ちょっ……。」
「サイテー!」
「何、しっかり聞いてんの!」
「貴方も忘れなさい!」
「待て、僕は見ていない!」
「うっさい!」
「やっちゃえ!」

 今度はアズナールが標的になりました。

「た、助けて……。」
 アズナールが情けない悲鳴をあげます。

「ふんぎゃ。」
 あらかわいいお声。
 メリア様、とってもかわいらしい。

「イ、イルダさ……。」
「本当にかわいいわ。現実のことなんて見てるだけで忘れちゃう。」
 イルダ様の言う通り。
「そ……。」

 どか
 ばき
 びし

「ふぇ。」
 あぁ、メリナ様、かわいい。
「ぐは。」

 

 収拾つきそうにないので、この辺でボツにしました。

 お馬鹿なドタバタは、結構好きです。
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