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第7章 躍進 -乙女豹アルテミス編-
第279歩目 エロマンガとかで見たことあるやつー!
しおりを挟む前回までのあらすじ
みーんな裸でよくなーい?r(・ω・`;)
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恐らく、ミシーネさんはアルテミス様が気に入らないのだと思う。
受付嬢という仕事柄、即座にアルテミス様の性格を読み取った節がある。
実際、ギルドを出てから今まで一度も会話をしていない。声を掛ける素振りすらなかった。
というか、アルテミス様もアルテミス様で、ミシーネさんのことなど眼中にないと言わんばかりの態度が露骨に出ている。人として認識していないのは明らかで、もしかしたら存在自体も認識していない恐れすらある。
きっと、そういう態度が、雰囲気が、ミシーネさんに伝わっているのだと思う。
だとしたら、誰も手伝おうなどとは思わないはずだ。俺だって、そうかもしれない。
(要はあれか? 俺だけ貧乏くじを引かされたと?)
今更文句を言っても始まらないので、ミシーネさんより教わった知識をフル活用して、アルテミス様をコーディネートしていくことにする。
まずは『色合い』を決めていこう。
アルテミス様は168cmと女性にしては上背があり、活発なイメージを連想させる『狩猟の女神』様らしいスラッとしたモデル体型だ。
以上の観点から考えると、アテナとは逆の寒色系の色合いのほうが良いということになる。暖色系の色合いはふわっとした膨らみのある印象を与えるのに対し、寒色系はキュッと引き締まった印象を与えるのだという。それは体のラインを強調させるという効果もあるらしいので、モデル体型なアルテミス様にはピッタリだと思う。
(だとすると、青色系統だけど......)
俺はアルテミス様をまじまじと見た。
「なんか違うんだなぁ」
「はぁ? いきなりなんだい?」
寒色系は主に落ち着いた女性、大人の女性の印象を与える色合いだ。
では、アルテミス様にそういうイメージがあるかというと、正直全くない。
どちらかというと、ニケさんにこそ似合いそうな色合いだと思う。
敢えて、「大人の女性のイメージを持ってもらう為に」という選択肢もあるにはあるだろうが、どうにもしっくりこない。アルテミス様と言えば、ガキ大将または野山を駆け巡る獣みたいな印象が非常に強いからだ。それに、アルテミス様の燃え盛るような灼熱色の髪とも合わない気がする。
(となると、ここはやはり髪色に合わせた赤か。それも少し暗めの赤)
結局、俺が選んだのは少し暗めの赤である『ワインレッド』だった。
少し危険な女性という印象を与えるなら『ヴァイオレットレッド』なんかもいいかも。
「アルテミス様、こんな感じの色にしようと思うのですが、どうですか?」
「あん? 色なんかなんでもいいよ。好きにしな」
「......」
うん。知ってた。
■■■■■
次は『ドレスのデザイン』を決めていこう。
とはいえ、ドレスと言えば、直ぐに思い浮かぶのはウェディングドレスぐらいだ。
結婚式などでよく見る、スカート部分が裾に向かって大きく膨らんだ『あれ』である。
ミシーネさん曰く、『プリンセスライン』というらしい。
多くの女性が憧れる人気のデザインだと、ニケさんに説明していた。
まぁ、名称からしても、まず間違いなく文化大革命後に広まったものだと思う。
となると、あれか? ウェディング用というよりは、恐らくコスプ......げふんげふん。
ちなみに、『プリンセスライン』は女性勇者の間でも人気とのこと。
驚いた。意外と異世界で結婚している勇者は多いのかもしれない。
そういえば、時尾さんもその1人だった。もう随分と会っていないな。
(それにしても、女性に人気ねぇ)
確かに王道かつかわいらしく、まるでどこかのお姫様のようにも見える。
俺も結婚式等には人並みに参加してきたが、大体はこのタイプが多かった気がする。
女性勇者の間でも人気というのは、ある意味当然なのかもしれない。
(だとすると、これが一番無難なんだろうけど......)
俺は再びアルテミス様をまじまじと見た。
「やっぱり、なんか違うんだなぁ」
「だから、いきなりなんなんだい!?」
いくら人気のデザインとはいえ、やはりアルテミス様にはしっくりこない。
というか、アルテミス様がお姫様とか(笑)
いやいや、そういうアルテミス様も一度ぐらいは見てみたい気がする。
所謂、怖いもの見たさってやつ? 本人の前では決して言えないけどさ。
正直、『プリンセスライン』のようなお姫様デザインはアテナやドール向きな気がする。
ラズリさんなんかも凄く似合いそうだ。あー、ドールは和装のほうがいいかな?
そもそも、アルテミス様の場合は色合いで赤を選択した以上、膨らみのあるデザインは対象外だ。それこそ身体にぴったりとフィットしたもので、ラインが強調されるようなデザインが(個人的には)見てみた───いや、好ましい。
そんな訳で、色々物色しつつ、アルテミス様に合うドレスを選んでいく。
その際、俺の下卑た希望も織り混ぜていったのはアルテミス様には内緒だ。ぐへへへ。
「お待たせしました、アルテミス様。いくつか候補を選びました」
「あいよ......って、なんだか多くないかい?」
「そ、そうですか?」
確かに、軽く見積もっても10着近くはあると思う。
あれも着せたい、これも着せたいと選んでいたら、思ったよりも数が増えてしまった。
それだけ魅力的で品数豊富な店だということだ。決して煩悩に従った訳ではない。
「とりあえず、一度着てみた上で気に入ったものを選んでください」
「じゃあ、そうしてみるかね」
俺がある程度までは選べても、最終的な判断をするのはアルテミス様だ。
特に衣類等は着心地なんかも合う、合わないが人それぞれ異なるはず。
ここは一度着てもらう他はない。
実際に触れてみて、自分に合った使いやすいマウスを選ぶようなものだ。
「試着室はあそこみたいですね」
俺は店内の奥のほうを指差した。
今まさに、ニケさん達がドレスを抱え、そこへ向かっているので一目瞭然だ。
「着替え終わったら声を掛けてください」
試着室はざっと見ても十分な数がある。
これなら、順番待ち、みたいな状況は起こらないと見ていいだろう。
それだけ確認して、俺は試着室外で待機しているつもりだったが───。
「何言ってるんだい? 誰が、これを着させるって言うのさ」
「え?」
「見てみなよ。みんな付き添っているじゃないか」
確かに、アテナにはニケさんが、モリオン達にはミシーネさんが付き添っている。
というか、ドレスによっては1人で着るには明らかに困難なものがあることぐらい、選んでいた時に薄々気付いてはいた。まぁ、庶民階級が着るような代物じゃないしな。ドレスそのものが、元から誰かに着付けを手伝わせる前提で作られているんだと思う。
とはいえ、今回はニケさんも居ることだし......。
「いや、でも、それはさすがに......少しお待ちください。今、店員さんにお願いしてきますので」
「いちいちそんなのを呼ぶの面倒臭いだろ。アユムっちが手伝えばいいだけだよ。グチグチ言ってないで、ほら行くよ。男らしくエスコートしな!」
「ちょっ!? アルテミス様!? マズいですって!!」
あれ? デジャブ?
前にもこんなことがあったような......。
こうして、俺は問答無用で試着室の中へと引きずり込まれてしまった。
■■■■■
素晴らしい。
実に素晴らしい。
エロスの極致とも言える素晴らしい肢体が、今目の前に存在している。
試着室に入るやいなや、アルテミス様は素早い身のこなしで、以前と同じようにすっぽんぽんになってしまった。
小麦色に焼けた褐色肌に、アテナ未満ナイトさん以上の豊満な胸。
狩猟の女神を冠するに相応しい、くびれたウエストと引き締まったボディーライン。
アルテミス様は風呂に入られないので、その肢体をお目にかかれる機会は滅多にない。
だからだろうか、今は目を離せそうにない───いや、離したくないというのが本音だ。
「じろじろ見過ぎだろw 女の裸なんて、アテナっちとかで見慣れてるんじゃないのかい?」
「それはそうですが、褐色肌は別腹と言いますか、そうでもないんですよ」
「それはなにかい? あたしは特別ってことかい?」
「そうですね。そこは否定しません」
褐色肌好き、意外と多いと思います。
健康的な褐色肌は美しさの象徴である白肌よりもエロさが段違いだからな。
「本当にアユムっちは欲望に忠実だねぇ」
アルテミス様に呆れられつつも(───いや、ちょっと嬉しそうかな?)、俺は感謝の念を捧げ素早くドレスを着付けていく。
最初に着付けたのは『マーメイドライン』と呼ばれるものだ。
ニュース等でしか見たことはないが、長身な海外セレブとかがよく着ている印象がある。
膝まで身体にぴったりとフィットし、裾が人魚の尾ひれのように広がっている、とてもメリハリのあるデザイン。S字を思わせる曲線を描き、動くたびに身体のラインが強調されるので、スリムなアルテミス様にはよくお似合いである。
(やっぱり、この女神様はちゃんとした身なりにすると映えるな)
己の審美眼に恐ろしさを感じてしまう。
一目見て「これだ!」と思って選んでみたが、想像以上の結果だった。
(それにしても、アルテミス様はビシッと決めるとかっこいいよな。羨ましい)
少しだけ男装もさせてみたくなったぞ、ちくしょう! 絶対に似合うはずだ。
アルテミス様は美しいだけではなく、宝塚ト○プスターばりのかっこよさも兼ね揃えている。
仮に男装でもさせようものなら、ご令嬢や淑女方の黄色い声はおろか、その場で失神してしまう方々もきっと出てくるに違いない。
ちなみに、俺はというと......。
失神してしまったご令嬢や淑女方を会場から運び出す救護役がお似合いかな?
「どうだい? 似合うかい?」
「......」
「アユムっち?」
「あ、すいません。似合うとかいうレベルじゃないです。とてもお美しいですよ」
「そ、そうかい?......お、お世辞でも嬉しいよ」
いやいやいや。お世辞って......。
相変わらず、自己評価は低いようだ。
アテナほどとは言わないが、それでも群を抜いた美しさだというのに。
自信を持てと偉そうには言えないが、少しぐらい自覚はしたほうが良いと思う。
「お世辞なんかじゃないですよ。宮廷午餐会では、きっとアルテミス様の美しさに目を奪われる男が多数居ることでしょうね」
「そ、それはアユムっちもかい?」
「目を奪われるどころじゃないです。マジで見惚れてましたから」
「み、見惚れて!?」
そして、相変わらず、誉められ慣れてもいないようだ。
そっぽを向きつつ、顔を赤くして照れている姿にはグッとくるものがある。
そう、グッとくるものがあるのだが───。
「......」
「......」
試着室内に静寂が広がる。
俺としてはありのままを述べたに過ぎない。見惚れてたのもマジだ。
しかし、その効果は想像以上に大きかったようで、アルテミス様は急にしおらしくなってしまった。
恥ずかしいのか、視線だけちらちらとこちらに向けてくるだけで、一向に顔を合わせようとはしてこない。
(う、うーん。そんな反応をされると、俺まで恥ずかしくなってくるな)
なんとも言えない空気が漂ってしまった。
まだドレスを選別中だというのに......。
かと言って、このままで良いはずがない。色々な意味で。
「あ、あの、アルテミス様?」
「───ないよ」
「え? 今なんて言ったんですか?」
「こっち見るんじゃないよ! 恥ずかしいだろ!!」
「ちょっ!?」
突然の大声に、思わずアルテミス様の口を強引に塞いでしまった。その際、神界で急激なパワーアップを果たした影響も相まり、アルテミス様の身体ごと壁にドンッと押し付けるような形になった。これが所謂本当の壁ドンってやつ? なんちゃって(笑)
「もごもごもごもご!?」
「しー! 静かにしてください! 隣にはニケさんが居るんですよ?」
「!!」
アルテミス様もどういう状況なのか理解出来たようだ。
神妙な面持ちで、コクコクと首を縦に振った。
とりあえず、先程の大声で怪しまれていないか、しばらく静観しよう。
「お客様? 何やら大きな物音が聞こえましたが、大丈夫ですか?」
「!!」
「!!」
全く大丈夫じゃなかった!
俺はアルテミス様の口を押さえたまま、「しー!」と静かにするよう仕草で伝える。
そして、「この場は俺が何とかする」という意味を込めて自分自身を指差した。
それを見たアルテミス様は、再び神妙な面持ちで、コクコクと首を縦に振る。
「え、えぇ。大丈夫です。転んでしまっただけですから」
「それは大変。お怪我はございませんか?」
「大丈夫です。ご迷惑をお掛けしました」
「そうですか。お怪我がなくて何よりです。それではごゆっくりどうぞ」
店員さんの遠ざかっていく足音が聞こえて一安心。なんとか怪しまれずに済んだようだ。
スリルのある刺激的な日常も悪くはないが、こういうのは遠慮願いたい。
ただでさえ、こんな状況をニケさんに見られでもしたらヤバいというのに......。
「んー! んー!」
心から安堵していたら、アルテミス様に腕をパンパンと軽く叩かれた。
そういえば、口を塞いだままだったな。これはマズい。
(......って、手が涎まみれじゃねぇか!? なんで!?)
確かに、強引に口を押さえはした。
しかし、涎まみれになるほど強くしたかというと......。
「ぷはッ............はぁ。はぁ。ちょっとアユムっち? 苦しいじゃないか!」
「す、すいません。咄嗟のことでつい」
「まぁ、あたしも原因の一端だし、今回は特別に許してやるよ」
「あ、ありがとうございます」
いやいや。なぜ俺が許してもらう側なのだろうか?
元はといえば、アルテミス様に全ての原因が......とは、決して言えない。
ただ、アルテミス様が普段通りの傲慢さを取り戻しているので、これで良しとしよう。
そう無理矢理納得していたのも束の間───。
「それにさ......」
「それに?」
何やらアルテミス様の様子がおかしい。
その姿は恥じらっているようにも見えるが、先程のウブなものとは少し違う。
なんとも形容し難いが、恍惚な表情を浮かべ、快感に酔っているようにも見える。
(みょ、妙に色っぽくなったが、急にどうした?)
しばらくすると、アルテミス様の口から爆弾発言が飛び出してきた。
「い、意外と悪くなかった」
「は? 悪くなかった? 何がですか?」
「無理矢理されるっていうのかね? 男に───いや、アユムっちだからだろうね。好きな男に力尽くで征服されるってのは意外と悪くなかったよ。苦しかったけど、キュンときた。不覚にも「あたしはただのメスなんだな」ってことを強烈に思わされたよ」
「ふぁ!?」
何言っちゃてんの、この女神様は!?
無理矢理が良いとかドMかよ!?
しかし、アルテミス様の暴走は、それだけに止まることはなかった。
おもむろに、口を塞いでいたほうの俺の手───つまり、涎まみれになっているほうの俺の手を取ったアルテミス様。
「はぁ......」
「ア、アルテミス様?」
そして、その手を愛おしそうにうっとりと見つめた後、狂おしい程の熱い溜め息を一つ。
それはまるで恋する乙女の姿。
恋に情熱を燃やす一人の女性の姿であった。
いや、実際はそんな可愛いげのあるものではないかもしれない。
恋を貪っているというか、我を失っているように見えなくもない。
これは、そう───。
(は、発情しているのか?......ハッ!? い、いや、まさかな?)
そんなアルテミス様の様子から、俺はある一つの予想に辿り着いた。
それは『なぜ口を塞いでいたほうの手が涎まみれになっていたのか』だ。
てっきり、俺は力を込め過ぎたせいだろうと思っていた。
咄嗟のことで、偶然アルテミス様の口の中に手が入ってしまった結果だろうと。
しかし、しかしだ。
仮に、あの時点で既にアルテミス様が発情されていたとしたら......。
「うひっ!?」
背筋にビリリッと電気が走ったような衝撃が駆け巡る。
「ア、アルテミス様!? なにを!?」
どうやら、俺の予想は正しかったようだ。
俺の手が涎まみれになっていたのは偶然ではなかったのである。
「はぁ......なんだろうねぇ。この手が凄く愛おしいよ」
アルテミス様はしきりにそう呟きながら、俺の手をチロチロと舐め回している。
それはまるでアイスを食べているかのように、実に美味しそうにペロペロと......。
時にはパクッと口に咥えて貪るように吸い付くなど、バリエーションも様々だ。
「あつ!?」
口の中は思った以上に熱くて驚いた。だが、ずっと浸っていたい心地好さ。
ぷにぷにした柔らかい唇の感触や愛情を感じさせる舌の動きはとても気持ち良い。
更には、指を舐めさせるという行為がどこか背徳的にさえ感じられる。
これで「興奮するな」というほうが無理なくらいだ。
感覚的にも、視覚的にも、意識せざるを得ない程の気持ち良さなのだから。
「ねぇ、アユムっち? アユムっちも気持ち良くなってくれているかい?」
「うぁ......あ......」
言葉にならない。
指を舐められるという行為が、ここまで気持ち良いとは思わなかった。
あまりの快感で腰が砕けそうだ。指が、脳が蕩けそうになる感覚に陥る。
当然、俺の張○氏も「喝!」の準備に入ろうと、むくむくとズボンを押し上げる。
「はぁ......いいねぇ。その顔、たまらないよ。もっと、もっと尽くしてあげたくなるねぇ」
アルテミス様は嬉しそうな表情とともに魔性の笑みを浮かべると、指舐めだけでは飽きたらず、自身の身体を俺の身体に重ね合わせるようにグイグイと押し付けてきた。快楽に溺れていた俺はその勢いを受け止めきれず、今度は逆壁ドンされる形に。
(ね、狙われている!?)
俺の直感が、そう告げる。
今の俺は猛獣の前に差し出された餌に等しい。
後は欲望のままに喰われ、犯され、搾取されるのみ。
アルテミス様の虚ろな瞳が、そのことを悠然と物語っている。
また───。
試着室内に充満するアルテミス臭。
愛おしく、時に狂おしいまでに愛撫される俺の指。
身体がぴったりと重なり合っているおかげで、幸せな感触が胸一杯に。
俺の息子をしつこく攻め立ててきているアルテミス様の太股のいやらしい動き。
(き、きもちえぇ......)
それら全てが俺の理性を壊そうと押し寄せてきている。
アルテミス様の仰る通り、俺もただ一匹のオスと化そうとしていた。
(も、もう、ダメ、かもしれない......)
この時の俺は本当にヤバかった。
ドールの色仕掛けに拐かされた時(=第80歩目)以来のピンチを向かえていた。
下手したら、本当にアルテミス様を欲望のままに征服してしまっていたかもしれない。
「おうふ......」
しかし、それは唐突に訪れた。
俺の張○氏が我慢できずに「喝!」と怒声を張り上げてしまったのだ。
快感耐性が低い故に迎えた、あまりにも早い暴発の終着点。
その飛沫は俺のズボンだけには止まらず、アルテミス様のドレスにまでベッタリと......。
やはり異世界製の衣類は網目が粗くてダメだな。
全ての飛沫感染を防止出来なかったよ。HAHAHA。
だが、敢えて言わせてもらうなら、基本再生産数が一人だったことは重畳と見るべきだ。
(※汚してしまったドレスは俺が責任を持って買い取りました)
「ふぅ..................」
「え? アユムっち、これって......」
深い吐息とともに、押し寄せてくるのは程好い疲労感。
それと同時に冷静さも取り戻し始めた。解放感や虚脱感も少しあるかな?
(スッキリしたぁ......)
今のは本当に危なかった。危うく、ニケさんを悲しませるところだった。
俺の初めてはニケさんに全て捧げる、そう約束したばかりだというのに。
あのままだと、最終的には行き着くところまで行っていたような気がしてならない。
むしろ童貞だからこそ、助かったとも言える。
童貞に深い感謝を! ザーメン!
しかし、良いことばかりではないようで───。
「......なに一人で満足してるんだい?」
スッキリした俺とは対照的に、アルテミス様は少しご機嫌斜めのようだ。
気持ちは分からなくもない。
これからという時に暴発されては堪ったものではないだろう。
だが、童貞のキャパシティの低さを侮ってもらっては困る。
童貞とはおしなべてこんなものだ。......だよな?
故に俺に限った話ではないので、責められる謂れはない......はず。
「まぁ、良いか。満足したんだったら、あたしにもしておくれよ。それぐらい良いだろ?」
「アルテミス様にも?」
「そうさ。何を......なんて野暮なこと聞くんじゃないよ? 分かってるだろ?」
アルテミス様からはニィと小悪魔的な眼差しが向けられた。
そこには期待の色がハッキリと見て取れる。
「......」
ここまであからさまだと、さすがの俺でも何を求められているのかぐらいは見当が付く。
そして、少し前の俺だったら、まず間違いなくその要求に応じていたことも......。
だが、今の俺は───賢者モードを迎えている今の俺は一味違った。
「申し訳ありません。それは出来かねます」
「それはニケちゃんに悪いからかい?」
「その通りです。分かっているじゃないですか」
「分かってるよ。二人の邪魔をするつもりはないからね」
俺にとってニケさんは絶対であり、二度と手放したくない存在だ。
だからこそ、ニケさんを悲しませるような真似だけは絶対にしたくない。
そんな俺の健気な思いが通じているからだと思う。
たとえ、俺が正気を失うようなピンチが今後訪れたとしても、今までの経験上、俺は【DTフィールド(※絶対童貞領域)】に護られているので事なきを得るに違いない。......そう願いたい。
それは今もそうだ......【DTフィールド】展開!
「でもさ、それはそれ。これはこれだよ。少しぐらいは良いだろ? ちょっとした摘まみ食い、息抜きってやつさ」
「うぐッ......す、少しもクソもありません。そういう気の緩みが一番危険なんです」
「ふーん......って、偉そうなこと言ってる割には、まだまだ元気みたいだけど?w 身体は正直だねぇ、アユムっち? あひゃひゃひゃひゃひゃw」
いまだ、アルテミス様の太股のいやらしい動きは健在だ。
俺の息子を的確に、グリグリグリと程好い強さでこねくり回してくる。
そこには「一回だけでは済まさないよッ!」という強い執念が読み取れる。
(や、やめ......はぅ......グ、グリグリ......グリグリしちゃ、らめぇぇえええええ!)
気持ち良いことは気持ち良いが、暴発後は敏感になっているので勘弁して欲しい。仮にDTフィールドを展開していなかったら、見事な『即落ち2コマシリーズ』が出来上がっていたことだろう。
「欲望に身を委ねちゃいなよ、アユムっち」
悪い神様が、耳元でポツリと甘く囁いた。
耳元で囁かれるのは妙に擽ったい。
だが、熱を帯びた吐息がかかる心地好さは病み付きにもなる。
「ニケちゃんにバレなきゃ、へーきへーき。今ならあたしを自由に出来る大チャンスだよ?」
「じ、自由に!?」
「そう自由に。今はそういう気分だしね。アユムっちだって興味あるだろ?」
「......(ごくッ)」
口の中が急速に干上がっていく。
興味ないはずがない。むしろ、興味ありまくりだ。
アルテミス様(の身体)を自由にして良いなんて、夢がひろがりんぐ!
「......ねぇ、アユムっち、どうする? しちゃう?」
挑発的かつ魅惑的な眼差しと男に媚びるような猫なで声。
それは男のスケベ心と下半身をいきり立たせるには十分な効果のあるダブルパンチだった。
そんな童貞殺しの刺激的な誘惑に、DTフィールド崩壊寸前の俺は───。
というか、試着室内でのイチャイチャシーンとか......。
こういう展開、エロマンガとかで見たことあるやつー!
応援ありがとうございます!
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