それから 本町絢と水島基は

すんのはじめ

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第12章

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 彼等が帰った後、部長の誠一郎さんに言われた

「水島君が彼氏なんだろう 直ぐ、わかったよ 顔も紅くなっていたよ」

「はい まさか、来るなんて」

「ああ 突然だったからな なるほどと、思ったよ いい青年じゃぁないか そろそろ、彼との馴れ初めを聞かせてくれても、良いんじゃあない?」

「はい そのうち、機会がありましたら」

 私は、モトシが越してきてから、週に2回は通って、ご飯を用意したりしている。郷子さんが、子供を産む前に、乗っていたという古い原付バイクを貸してもらっていた。それだと20分ほどで着く。土曜、日曜になると、彼は近くの海に潜りに行くから、そんな時は、ご飯を用意して、戻ってきて絵を描いて過ごした。天気が悪い時は、私は嬉しかった。彼も出掛け無いので、二人で過ごせるし、彼の腕の中に抱かれていられるからだ。もう 新婚さんの気分を味わっていたのだ。

 その日、私は、誠一郎さんのお宅に呼ばれていた。新しいお家で、開くんが産まれた後、建てたんだと言っていた。

「あのね お義父さんが、あんまり、家にいないでしょ お義母さんが、私達に一緒に住もうってうるさいのよ 孫が出来るとよけいに言ってくるでしょ だから、建てちゃったのよ こんな言い方、悪いけど、絢ちゃんが来てくれて、一安心よ 気がまぎれるでしょう」と、郷子さんが言っていた。

 お昼ご飯なんだけど、誠一郎さんは、ビールを飲んでいた。そろそろ、この地方も、じめじめと湿気の多い時期になる。彼氏のこと、話してくれよと言われて、私は、小さい頃から人と話すのが苦手で、特に男の子は嫌いだったこと、だから絵ばっかり描いていたこと、モトシから一緒に勉強しようと言われて、初めて嬉しかったことから、今までのことを、全て、話した。誠一郎さんはきっと、モトシの力になってくれると、私の打算があったのかも知れないし、この人は信用できると思っていたのかも知れない。

「そうかー 彼は 原石を見抜いて宝石のようにして・・・絢ちゃんも、どんどんと 磨きをかけてきたんだね いい ふたりだなぁー」

「なんか、絢ちゃん、すごいね そこまで、男の人を好きになるのって、幸せよね でも、お家の人も、よく許してくれたわね 娘さん一人でしょーう 私、そこまで、この人のこと、追いかけられたかしら」

「おい 郷子 子供の前で、いまさら何言ってんだよ 逃げてても、僕が掴まえていたよ」

「あら ありがとう 私も、捕まっていたけどね 私達、高校の同級生なのよ」

「部長 お二人 仲いいんですね 私、見習います」

「絢ちゃん 会社、離れた時は、誠一郎でいいよ 僕も、絢ちゃんと呼ぶから」

「でも、絢ちゃんみたいに、可愛い人 いろいろ声を掛けられてきたでしょう?」

「そんなに、もてないんですよ でも、声掛けられても、私、水島基が好きなんですって、はっきり言って、お断りしてましたから」

「もう、素晴らしいわね あなた、うちの会社、独身の男の人居なくて良かったわね みんな、振られているところだったわ」

「そーだよね でも、みんなに人気があって 可愛がられているんだよ 女の人にも 素直だからね」

「絢ちゃん この人ね 最近、すごく、張り切っているのよ 今まで、社長の息子だからって、ウジウジしてたんだけど・・あなたが現れてから、元気いっぱいよ 良かったわ」

「郷子さんに、そー言ってもらえて、私、嬉しいです みんないい人ばっかりで、会社も楽しいですし、拾ってもらえて、本当に感謝してます 私、彼に付いて行くなんて、実際 どうしょうと思っていたから」

「あなた、本当に、良い娘ね この人も、いつも、あなたの話ばっかりでね 好きなのよ でも、浮気はしないでね」

「それは、大丈夫です 私は、モトシが居ますから」

「じょーだんよ 真剣に返すとこ、真面目なのね そーいうとこ、可愛いわね すこし、意地悪したくなったのよ」

「郷子 そーいうの 悪趣味だよ それより、僕は、水島君と、もっと話がしたくなったんだ どうだろう 絢ちやん」

「聞いてみます 彼も、こっちに来て、あんまり知り合い居ないはずだから 喜ぶと思います」
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