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第2章
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年末に向かって、お店と仕出しは29日までで30.31はおせち料理の準備になっていた。30日は親方と健也さんは煮物とか仕込みをやっていて、私はお重の準備をしていた。そして、次の日は朝早いからと、その日は4時頃に終えていた。
次の日はバイトの大学生を3人呼んでいると言っていたので、私は桔梗にも手伝いなさいと言ったのだけど
「なんでよー ウチなんか 邪魔するだけやしー」と、渋っていた。
「邪魔にならんように手伝えばええやん 1年1回のことやし 少しでもお父さんの手助けになったらええやん いつも ウチ等の好き勝手させてもらってるんやから・・」
「・・・」
「わかったぁー バイトの人達 6時に来るからね!」
「それってぇー ・・・」
お父さん達は3時から仕事に入ると言っていた。早朝というより、深夜だ。私もなんとかとは思っているのだ。
そして、なんとか健也さんと私は親方より早く作業場に居て、二人で「おはようございます」と、挨拶をすると、親方は私を見て
「山葵 いくらの和え物を作れ 作り方は健也に聞いて とりあえず先に50個、カップに入れてナ」と、言い放って、自分は鰤の処理に取り掛かっていた。
初めて、作らせてもらえるんだと思いながら、私は少し緊張しながら、健也さんに教えてもらったように、えのきとか筍を小さめにカットしていくらと作ってあったタレと混ぜ合わせて、小鉢のようなカップに分けていったのだ。その後も、チョコチョコと親方の手伝いをさせられて、6時になるとバイトの人、そして、お母さんの後ろから桔梗の姿もあった。お母さんは盛り付けと仕上げの包装にそれぞれ指示をして振り分けていた。
そして、10時前に30セット、11時前に20セット、それぞれ地元のスーパーと個人の八百屋さんに配達の人が持って出て、残り50セット程はぼちぼちとお店にお客様が取りに来ていた。4時前にすべてが終わって、バイトの人は帰ってもらって私達だけで最後の掃除に取り掛かっていたのだけど、途中でお父さんが桔梗に
「今日は ありがとう 助かったよ 後はワシ等だけでやるから 桔梗は家でお母さんの手伝いをしなさい 健也と打ち上げするから、その用意」
なんでー 私には、一言もありがとうなんて言ってもらったことも無いのにー。今日も、お尻をベシッとやられることも無く、ちゃんと教えられたようにやってたじゃぁない と、私は少し不満だった。
お店の中も調理器具なんかもすべてきれいにして、最後に健也さんと〆飾りを取り付けて謹賀新年の張り紙をして、お店の中に戻ると、親方は鏡餅を飾っていた。親方と健也さんがその前に並んで「今年も1年 無事でありがとうございました 来年もよろしくお願い申し上げます」と、私も仕方なく、併せて唱和してしまった。
3人で店の裏手にある家に戻るとダイニングのテーブルにはお料理が並んでいて、桔梗も珍しく台所で何かのお手伝いをしていた。
「健也 今年もご苦労さん」と、早くもお父さん達はお酒を飲み始めたのだ。
「健也 地元に帰るんだろう?」
「えぇ まぁ 明日の昼過ぎにぶらっと 帰るカナって思ってます 正月はあんまり良い魚が無いんですけどネ それでも三国のほうがうまい魚とか 喰えますからー」
「そうだろうなぁー ワシも もう5年ほど行ってないかなぁー 健也はウチに来て7年になるなぁ 早いものだ だけど、健也が居てくれて 本当に助かってるよ」
「俺なんて そんなことないっす まだまだ 親方に仕込んでもらわないと 半人前です」
二人は、箸も進んでいて、ようやく私達3人がその横で食事をとり始めたとき
「山葵 冷蔵庫に いくらの和え物の食材があるはずだから 健也とワシに作ってきてくれ」と、お父さんが急に言い出して、リビングのソファーに健也さんと移動していった。
なんでー 私 ようやく 食事にありつけたのにー なんか、私に厳しいーよぉーお父さん。
「いえ 親方 俺はいいですよ 山葵は ご飯を・・・」
「いいの 気にしないで 健也さん 作るから 食べて」と、私は席を立って冷蔵庫に向かった。
桔梗はさっさと先にお風呂に入って部屋に引っ込んでしまったのだが、私とお母さんは酔っぱらってきているお父さん達のつまらない話に付き合っていたのだ。私とお母さんはお父さんより先にお風呂に入ったことが無かった。私は試合の日でもシャワーだけ済ませて、昔から後で入っていたのだ。その間にもお母さんは酔っ払いの突き出しを作っていて、10時頃になって、お父さんが
「そば だ 山葵 だし汁作れるだろう?」と、私に、また、無茶振りしてきた。私 そんな二人に出せるような味のもの作れないのにー。だけど、今年の締めくくりの蕎麦になるはずだろうからと、酔っ払いにおいしいものをと、考えながらありったけの知識で作っていた。
桔梗はもういらないと言っていたので、4人分を作って、最後にとろろ昆布を乗せてー、恐る恐る出したのだけど、健也さんが一口食べて
「うまい! うまいっすよ いゃー お嬢さんの作ったのって 感激です」と、おつゆも全部 飲み干してくれた。お嬢さんって もう 戻ってたけど。そして、お父さんも何にも言わなかったけど、やっぱり飲み干してくれていたのだ。私は、自分ではおいしいとは感じていなかった。ごく普通、どっちかと言うとおいしいとは言えない。
健也さんも帰って、お父さんはお風呂に行って、お母さんと洗い物をしている時
「ねぇ お母さん さっきのおだし汁どうだった?」と、聞くと、首を横に振っているだけだったのだ。
私は、お父さんの考えていることがわからず、どうして まずいって言わないの・・・悶々として新年を迎えるのだ。
次の日はバイトの大学生を3人呼んでいると言っていたので、私は桔梗にも手伝いなさいと言ったのだけど
「なんでよー ウチなんか 邪魔するだけやしー」と、渋っていた。
「邪魔にならんように手伝えばええやん 1年1回のことやし 少しでもお父さんの手助けになったらええやん いつも ウチ等の好き勝手させてもらってるんやから・・」
「・・・」
「わかったぁー バイトの人達 6時に来るからね!」
「それってぇー ・・・」
お父さん達は3時から仕事に入ると言っていた。早朝というより、深夜だ。私もなんとかとは思っているのだ。
そして、なんとか健也さんと私は親方より早く作業場に居て、二人で「おはようございます」と、挨拶をすると、親方は私を見て
「山葵 いくらの和え物を作れ 作り方は健也に聞いて とりあえず先に50個、カップに入れてナ」と、言い放って、自分は鰤の処理に取り掛かっていた。
初めて、作らせてもらえるんだと思いながら、私は少し緊張しながら、健也さんに教えてもらったように、えのきとか筍を小さめにカットしていくらと作ってあったタレと混ぜ合わせて、小鉢のようなカップに分けていったのだ。その後も、チョコチョコと親方の手伝いをさせられて、6時になるとバイトの人、そして、お母さんの後ろから桔梗の姿もあった。お母さんは盛り付けと仕上げの包装にそれぞれ指示をして振り分けていた。
そして、10時前に30セット、11時前に20セット、それぞれ地元のスーパーと個人の八百屋さんに配達の人が持って出て、残り50セット程はぼちぼちとお店にお客様が取りに来ていた。4時前にすべてが終わって、バイトの人は帰ってもらって私達だけで最後の掃除に取り掛かっていたのだけど、途中でお父さんが桔梗に
「今日は ありがとう 助かったよ 後はワシ等だけでやるから 桔梗は家でお母さんの手伝いをしなさい 健也と打ち上げするから、その用意」
なんでー 私には、一言もありがとうなんて言ってもらったことも無いのにー。今日も、お尻をベシッとやられることも無く、ちゃんと教えられたようにやってたじゃぁない と、私は少し不満だった。
お店の中も調理器具なんかもすべてきれいにして、最後に健也さんと〆飾りを取り付けて謹賀新年の張り紙をして、お店の中に戻ると、親方は鏡餅を飾っていた。親方と健也さんがその前に並んで「今年も1年 無事でありがとうございました 来年もよろしくお願い申し上げます」と、私も仕方なく、併せて唱和してしまった。
3人で店の裏手にある家に戻るとダイニングのテーブルにはお料理が並んでいて、桔梗も珍しく台所で何かのお手伝いをしていた。
「健也 今年もご苦労さん」と、早くもお父さん達はお酒を飲み始めたのだ。
「健也 地元に帰るんだろう?」
「えぇ まぁ 明日の昼過ぎにぶらっと 帰るカナって思ってます 正月はあんまり良い魚が無いんですけどネ それでも三国のほうがうまい魚とか 喰えますからー」
「そうだろうなぁー ワシも もう5年ほど行ってないかなぁー 健也はウチに来て7年になるなぁ 早いものだ だけど、健也が居てくれて 本当に助かってるよ」
「俺なんて そんなことないっす まだまだ 親方に仕込んでもらわないと 半人前です」
二人は、箸も進んでいて、ようやく私達3人がその横で食事をとり始めたとき
「山葵 冷蔵庫に いくらの和え物の食材があるはずだから 健也とワシに作ってきてくれ」と、お父さんが急に言い出して、リビングのソファーに健也さんと移動していった。
なんでー 私 ようやく 食事にありつけたのにー なんか、私に厳しいーよぉーお父さん。
「いえ 親方 俺はいいですよ 山葵は ご飯を・・・」
「いいの 気にしないで 健也さん 作るから 食べて」と、私は席を立って冷蔵庫に向かった。
桔梗はさっさと先にお風呂に入って部屋に引っ込んでしまったのだが、私とお母さんは酔っぱらってきているお父さん達のつまらない話に付き合っていたのだ。私とお母さんはお父さんより先にお風呂に入ったことが無かった。私は試合の日でもシャワーだけ済ませて、昔から後で入っていたのだ。その間にもお母さんは酔っ払いの突き出しを作っていて、10時頃になって、お父さんが
「そば だ 山葵 だし汁作れるだろう?」と、私に、また、無茶振りしてきた。私 そんな二人に出せるような味のもの作れないのにー。だけど、今年の締めくくりの蕎麦になるはずだろうからと、酔っ払いにおいしいものをと、考えながらありったけの知識で作っていた。
桔梗はもういらないと言っていたので、4人分を作って、最後にとろろ昆布を乗せてー、恐る恐る出したのだけど、健也さんが一口食べて
「うまい! うまいっすよ いゃー お嬢さんの作ったのって 感激です」と、おつゆも全部 飲み干してくれた。お嬢さんって もう 戻ってたけど。そして、お父さんも何にも言わなかったけど、やっぱり飲み干してくれていたのだ。私は、自分ではおいしいとは感じていなかった。ごく普通、どっちかと言うとおいしいとは言えない。
健也さんも帰って、お父さんはお風呂に行って、お母さんと洗い物をしている時
「ねぇ お母さん さっきのおだし汁どうだった?」と、聞くと、首を横に振っているだけだったのだ。
私は、お父さんの考えていることがわからず、どうして まずいって言わないの・・・悶々として新年を迎えるのだ。
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