私の辛かった思い あんたにぶつかっていくわ!

すんのはじめ

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第8章

8-2

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 桔梗の入学式の日。グレー系のチェックのプリーツスカートに濃紺のブレザー、襟元はえんじ色のスカーフとオーソドックスな女子高生だった。お母さんは薄いブルーの着物で一応紋付なのだ。

 私の学校も入学式で、新入生の勧誘をしなければと、早々に家を出てきた。一応、練習は休みなんだけど、式が終わるまで、グラウンドの整備と周りの草むしりをしていたのだ。3年生は勧誘用のポスターとか看板を作っていた。

「麗香 今年の入学の子の情報調べたの?」

「あのね 学生課に行ったんだけど・・・個人情報だから見せられないって言われて、駄目だったの」

「あっ そうかー 去年は璃々香先輩 ウチの名前 見たんだってー 厳しくなってんだねー」

 勧誘の場所は、去年と同じ、卓球部の隣りだったんだけど、式を終えて出て来る新入生は運動部にはあんまり感心が無いようで、どこのクラブにも立ち止まる女の子は少なかったのだ。京都府高校選手権 優勝と大袈裟に書いてあった張り紙もむなしかったのだ。その中でもダンス部だけは、いつも誰かが居たのだ。

 ようやく、2人 立ち止まったと思ったら、音女の中学部でテニス部の子だった。

「私達 岸森先輩にあこがれてたんです 一緒に出来るなんて 夢みたい よろしくお願いしま~す」と、璃々香先輩に駆け寄っていた。

「えぇ あなた達 テニス部 入ってくれるの?」と、少し、押されていたみたい。

「はい! 先輩 高校選手権の時 恰好良かったワ あのダブルスの決勝見ました すごかったですね ボレーで相手寄せ付けなかった」

「えっ うん 見てくれてたの?」

「もちろんです! 私達も先輩のようになりたい 音女のエースですもんね」

 あのさー ウチのあの時の活躍 見てへんのー ・・・ 璃々香先輩だけちゃうやろー ダブルスやでー 私のことは一言も無かったので、カチンと来ていたのだ。

「山葵 そーいうとこ 子供っぽいんや 今 おもろない気分なんやろー 傍からみててもわかるワー 世間ってそんなことあるんやでー 頑張っても見ててくれない人も居るんだよ! くされない!」と、みく美が耳元で囁いてくれていたのだ。

 その日の夕方は、桔梗の入学祝いでと、晩御飯はステーキだった。今晩は予約のお客様が居ないので、お父さんが揃っていたのだけど、先に、お父さんと桔梗にサーロインが・・・冷めないうちに食べ始めていて

「うー おいしいぃー ウチ この脂身と赤身の境目のとこが好き! トロッとして、少しコリッとするんよねー」と、桔梗が言っていて、私も、早くぅーと思っていたら、出てきたのは、赤身肉のステーキ。

「なんで ウチのは サーロインちゃうん?」それも、サーロインに比べて小さいのだ。

「あらっ 山葵は太るからって 脂身 食べないのと違います?」と、お母さんがつらぁーと言い返してきた。

「うぅー そーやけど・・」

「お姉ちゃん ウチ ダンス部入ったでー 10人ぐらい 入部申し込んでたみたい これから、体力つけなー なっ」と、

「そうなんやー がんばってネ」と、返すしか無かったのだが、私は、この場で言うことちゃうやろー と、そんなとこが みく美が言う子供っぽいのかなーと、思っていたら、お母さんが

「お母さんは こんなに要らないから、半分 食べてー」と、私のお皿にお肉を切って乗せてきてくれた。それも、半分以上なのだ。これが、大人? 親の対応なのかしら・・お母さん、ありがとう

 — — — * * * — — ー


「どうしょっか 2人だけやねー 新入部員の申し込み」と、麗香が相談してきた。

「まぁ そのうち 何人かくるよ どこも、運動部は少ないみたいよ」と、こころは気楽だった。

「提案! 模擬試合みたいに練習のとこ デモンシトレーションで見せるってのはどう? 女の子って テニスの恰好に憧れるヤン あの恰好でプレーしてるの見たら 自分もやりたいぃーって思うよ きっと!」と、私が言い出すと

「ウン 好いかもね でも デモンストレーションね!」と、みく美が冷たく言い直していた。

「もぅー ええヤン 細かいこと言うな!」

「やってみよーよ! そう 言いだしっぺで 山葵とみく美のラリー それと、璃々香先輩と織部先輩 私 頼み込むワ」

 3日後、実行され、プレーする以外の部員は呼び込みに回った。麗香は柑橘系のコロンを用意してて、皆にスプレーしていたのだ。

「いい匂いがすると あぁー テニスってかっこいいってなるでしょ 汗臭いのじゃあ 敬遠されちゃうからね」と、麗香も考えていたのだ。

「ダブルスも見せるからね ただし、ラリーを続けるのよ スマッシュは私がOK出すまで禁止よ あなた達 どっちかが決めるのよ」と、私とみく美を前に、璃々香先輩も全面的に協力してくれていた。

 効果あってか、30人位のギャラリーがあった。しばらくは、シングルでやっていたのだけど、頃合いを見て、ダブルスに・・・西田先輩が加わって、そして、璃々香先輩から合図があって、みく美が強烈なスマッシュを、次は私が[参の型]を決めていた。ギャラリーからも拍手があったのだ。

 次の日、中学の時の経験者なのだけど、上位には行ったことがないという子で、京都市外から通うと言う女子が入部希望で来た。そして、数日後、2人連れ添ってきた子等。中学の時はバレーボールをやってきたけど、背もそんなに大きくないから、高校に入ったら、別のことをやろうと話し合ってたのだと言う。

「ウチも中学はバレーボールで、テニスは高校になってからなのー ちゃんと教えてもらえるから、不安なことないわよ 璃々香先輩も高校から始めたのよ」と、みく美はその二人に丁寧に接していた。

 とりあえず、1年生が5人になったので、麗香もほっとしていたみたいだった。
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