私の辛かった思い あんたにぶつかっていくわ!

すんのはじめ

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第10章

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 やっぱり、仲間達は私のお祝いに集まってくれた。例のお好み焼き屋さん。お店に着くと表の古いガラス戸に [やったぜ! 優勝 山葵]の張り紙が・・・きっと、白木屋君の仕業だ。急いで、ガラス戸を開けて中に入って

「あのさー」って言ったものの、カウンターに母娘連れのお客様が‥居るだけで・・。奥でおばぁちゃんの姿だけ。仲間の連中の姿が無い。おばぁちゃんがこっちを見て「いらっしゃい」と・・・。「あっ あのー 表・・・」  ・・・

 すると、突然、クラッカーが鳴って・・・「キャー」と、しゃがみ込む私に「おめでとう」とみんなの声が・・奥に隠れていたのだ。「やられたー」 前も、桔梗にやられたなと思っていた。

 すると、キラちゃんが小さな花束を持ってきてくれた。

「ありがとう キラちゃん」

「山葵さん 私 ダブルスの試合、応援に行ってたの すごかったよ お母様と それでね すごく努力してるんだよ 見習いなさいって言われちゃったー」

「そう 応援にきてくれてたのー ありがとうネ お母様も・・・」

 そして、おばぁちゃんが「ほらっ 特製 山葵焼きだよ 今日は好きに焼きな!」って、アルミのカップでお好み焼きの具材の上にイカが山盛りで、一番上にわさびが・・ その時、初めて気が付いた。壁に [天神中テニス部OB山城山葵 近畿大会優勝 特製 山葵焼き 特別\650] [天神中学生は \500] そして、その下に、いかにも付け足したような[これを食べて 京都高校選手権も 優勝]の紙が・・

「おばあちゃん あれっ」

「あぁー みんなが宣伝してくれてね 生徒さんが来てくれるの増えたんだよ ありがとうネ あんたのお陰 さっきまでも、野球部だっていう連中が部活帰りだって、いっぱい居たんだよ これを食べて、勇気をもらうんだってー」と、嬉しそうに・・・私は、それ以上何にも言えなかった。

 そして、食べ終わった母娘連れが帰る時

「私 中学入って、初めてテニスやってるんです 1年生です 友達からここの話聞いて、お母さんに連れてきてもらったの 私 先輩のようにうまくなりたいです 今日は、ラッキー あこがれの先輩にお会いできて 今度、教えに来てくださいネ」と、私の手を無理やり取ってきた。

「あっ あっ そうなのー 後輩? 頑張ってね」私、突然だと気の利いたこと言えないんだ。

「山城山葵もついにスターの仲間入りかー」

「やめてよ 白木屋君 私 たまたま優勝できたんだからー」

「ウソだよ 試合の前の日 勝てなかったら、刈り上げにするから ゴメンネってライン来てたんだよ」って、山水が暴露していた。

「やだぁー なんでそんなことを・・」と、私は山水の脚を叩いたつもりだったんだけど、指先が違うものに当ってしまった。その時、山水は顔を歪めていたんだけど・・。

 私達は解散の後は、それぞれのパートナーと一緒になって別れるのが恒例になってしまっていた。山水と歩いていると

「山葵 本当に頑張ってるなー 小学校の時はあんなに泣き虫だったのにー」

「そんなことないワー 泣いてへんよー」

「そうかぁー 僕が髪の毛引っ張ったぐらいで泣いてたし 靴箱のとこで、山葵の靴を蹴とばしたら、泣いて、先生に言いつけに行ったやんかー あの時、担任の谷口先生に えろー怒られた でもな 村沢君 好きな女の子の気を引こうとして、意地悪するのは良くないよ 逆効果よ 優しくしないとねって、教えられた 先生はわかっていたんだ 僕が山葵のこと好きなんだって」

「えぇー そーやったん ウチ 山水のこと好きやったんやけどー いつも 意地悪してくるから、あん時、悲しくて 先生に・・」

 私は、わざと? 児童公園に・・夕方は人が居ないの知っていたから・・そして、管理倉庫の横に来た時

「山水・・・ 選手権終わったらって 前・・・ ウチ かめへんでー 山水のことが好き」と、山水の手を両手で握り締めていた。山水は私を建物の横に連れて行って、私を抱きしめて、唇を合わせてきてくれたのだ。

 ただ、抱かれて唇を合わせているだけなのに、この甘~い感じは何なんだろうと思いながら、私は夢の中に居るような・・・。

 その後は、二人とも黙ったまま歩いていて

「さっきは ごめんネ ウチ なんか 変なもの触ってしもたワ」

「あぁ いきなりだったし ちょっと痛かった 変なものってなんちゅう言い方やねー 使いもんにならんようになったらどうしょう」

「えっ えぇー そんなに痛かったのー? 使いもんってぇ?  ・・・あの時のこと?」

「ふふっ からかっただけだよ 大丈夫 あれくらいじゃー 山葵との時は大丈夫だよ」

「やだー なんちゅうことを‥ そんな 言い方 ウチ 一瞬 心配したんやからぁー」

「おぅおー 山葵もそんなこと心配するんや」

「アホ バカ山水」

 私は、もう あのウワサの時の辛かった気持ちも吹っ切れたような感じになっていた。頼むぞ! 山水 ウチのこと ず~っと 見守っててやー ウチの唇は山水のもんやねん からな!


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