私の辛かった思い あんたにぶつかっていくわ!

すんのはじめ

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第10章

10-9

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 12月になって、学期末テストが近づいてきた時、キラちゃんから連絡があって

「クリスマスのパーティ ウチでやりなさいって お母様が・・ 来てもらえます? 26日の3時から 生徒さんも帰って居ないからって」

「ウン 良いんだけどー キラちゃん 受験だし いいの?」

「ええ お母様も息抜きもしなきゃーって だから」

「わかった じゃぁ 今度は、ウチと亜里沙が早い目に行って、お料理作ろー いい?」

 当日、私と亜里沙は2時集合でキラちゃんの家に集まったのだが、キラちゃんはサンタの恰好の赤いミニスカート姿で、私達にはサンタ帽を被せてきていた。ダイニングルームには雪のふわふわした飾り付けと [Merry Christmas and Happy New year] の文字が、そして玄関にも大きなツリーにキラキラした電飾のものが飾られていたのだ。

 私達は打ち合わせしていた食材を持ち寄って、サンドイッチとローストビーフにフルーツサラダの予定だった。キラちゃんは四角いカップにカステラのスポンヂを入れたプリンを作っていて、私はサンドにする厚焼き玉子を焼いて、亜里沙はツナサラダとハムのサンドを手分けして作っていった。その間にも、キラちゃんは楽しそうにクリスマスの歌を口ずさみながら、下処理したのであろう肉の塊をフライパンで手際よく焼いてから、オーブンに入れていた。この子って・・・お料理も手馴れているんだと、感じさせられていたのだ。スーパー女の子なのかしら・・・

 そして、3時にピアノの生徒さんが帰られたみたいで、それを見計らってか男どもがやってきた。お母さんが迎えたようで、3人を案内してきたのだ。男どもはキラちゃんの姿と私達のサンタ帽に釘付けになっていたのだが・・・山水はあんなことがあったけど何にも無かったように・・・

「皆様 今日はありがとうございます 昨日はね さっきまで、ウチの生徒さんに集まってもらって、クリスマスをやったの でも 樹羅も今日は楽しみにしてたのよ」

 ちょうど、キラちゃんはローストビーフを取り出したところで、サンドイッチもまだ全部出来ていなかった状態で

「お母さん あの ツリー 立派ですね お店みたいです」と、白木屋君が場を繋いでくれた。

「ええ 大きすぎるかしらね でも 生徒さんが来ると あそこに、私からのクリスマスのプレゼントを下げておくの もう5年ぐらいしてるかしら とっても 喜んでくださるのよー」

「はぁー それは いいですねー 子供は喜ぶだろうなぁー」

「あらっ 大人の人にもよ 大人のほうが歓ぶみたいよ」

 と、言って全部お料理が並べられて、私達のクリスマスは始まった。

「うまいよー いやー サンドイッチがこんなにうまいってなー なっ 山水 それに 美女達に囲まれて」と、新藤君が言い過ぎたと思ったのか、口を押さえていると、お母さんがローストビーフを切ってきてくれて

「うっ うまい」「おいしいー」と、みんなが言う中で

「キラちゃん お料理も上手なのね どうして?」と、亜里沙が

「上手じゃーないですけど 私 お母様がレッスンしている時に、ご飯用意したり お母様が時々、食べに連れて行ってくださるので 真似したりしてー」

「そうなの 器用よねー なんでも 出来るもんねぇー 羨ましいー それで 高校は?」

「ええ 市立の音楽高校に 有名な先輩達も出てますからー」

「そうよねー キラちゃん だったらー そうよねー そうかー」と、亜里沙も勝手に納得していた。

 そして、中学時代の想い出話とかで盛り上がっていて、だけど、私のあの時の話、皆も気を使ってくれていたのか3年生の時の話は出なかった。そして、ある程度食べ終わったところで

「樹羅ちゃん そろそろ」と、お母さんが言って、キラちゃんが消えたかと思ったら、お母さんが皆を奥のレッスン室に案内して・・・長い廊下は途中に中庭とトイレがあって、その奥に50㎡近いだろうかグランドピアノに幾つかの椅子が置かれていた。そして、真っ赤なドレスに着替えたキラちゃんが姿を見せて、皆に向かってお辞儀をしたかと思うと

「今日は 私の演奏を聞いてください 一生懸命 弾きます」と、何とピアノに向かっていったのだ。そして  (サンタが街にやってくる)(ロマンスの神様)を立て続けに弾いたのだ。

「すごぉーい キラちゃん ピアノも上手なのね」皆の割れんばかりの拍手の中で

「私 高校の試験でも ピアノがあるんです 基本ですからー 次は、お母様の伴奏で・・」と、バイオリンに持ち替えて、なんと [情熱大陸] を・・

 すごいのだ。キラちゃんは髪の毛を振り乱すように・・すごい、手の動き・・。私達には、まるでプロの人が弾いているように聞こえていた。

「すごぉーい すごいわ」「そう プロの演奏会みたいだよ 圧倒された」

 キラちゃんは、黙ってお辞儀をしていたのだが

「少し 間違ったところもあったよネ! ここで、緊張するなんてー お仲間の前でしょ 心強いんでしょ!」と、お母さんは冷たく言い放っていた。

「すみません お母様 気をつけます」と、キラちゃんは、途端に萎縮するように頭を下げていたが、私は、やっぱり、このお母さんは厳しいほどにキラちゃんを教育しているんだと感じていた。

「いやー すごかったですよ 僕は引き込まれていくように感じて聞いていました」と、山水が言ったので

「そうですよー キラちゃんの見たこと無いような 迫力で 素晴らしかったわ」と、私も続いた。

「そうよぉー 5/1億2千5百万人 だけど、ここに居る 5/5 100%を感動させるんだから コンサート会場のみんなを感動させるに決まってるよ すごい 俺も感動って こーゆうことなんだって、初めてわかったよ」と、白木屋君が言うと

「匠さん・・ 樹羅が、あなたのことを・・・わかるような気するわ」と、お母さんが、白木屋君とキラちゃんのことを見ていた。

 そして、最後はキラちゃんのバイオリン ソロで ホワイトクリスマスを・・・私には、柔らかで心地よく、完璧に聞こえていた。

 その後、ダイニングに移って、キラちゃん特製のカッププリンをいただいていた。

「今日はありがとうございました 樹羅の演奏聞いていただいて」

「いゃー すごかったです 心に響いてきましたもん」と、白木屋君が言うと

「まだまだ なんですのよ 今日は皆さんが居るから まだ マシなほうですわ この子 引っ込み思案なとこあって 一人っ子のせいかしらー でも、皆さんと出会って変わってきたみたい 去年 山葵さんの試合をしている姿を見てから 頑張らなきゃーって 刺激受けたみたい あの子 部屋に、山葵さんのこの前の試合の時の写真貼って その横に努力って書いて 励みにしてるみたいですよー」

「お母様 やだー それは、秘密だよー」と、キラちゃんは顔を覆っていた。 
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