少女は 見えない糸だけをたよりに・・

すんのはじめ

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第7章

7-8

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 お盆明けの日、暁美さんは、彼氏のお休みに合わせてお休みだったので、私とすみれさんの二人だった。だけど、学生さんもお休みなので、午前中はお客さんも来なかった。お昼頃も数組しか来なかった。

「学校がお休みだとダメですね パンのほうはどうなんですか?」

「子供さんが、お休みじゃぁない だから、逆に売れ行きがいいのよ」

「そうなんですかー うちもキッチンカーとかで売る方がいいのかなー」

「そうねー 売れるかもね でも、店長のことだから、きっと、考えているわよ」

「そうですね あの人賢いから すみれさんは、いつからパン屋さんを?」

「私ね 短大に入った時にね 彼から、パンをいきなり、渡されてね 食べてみてくださいって・・初対面よ そして、2度目には、僕と一緒にパンを作って売ってくださいってね 突然よ 私もびっくりしたけど、彼もびっくりしたのよ 私が よろしくお願いしますって言ったもんだから 彼は、大学の近くでパンを売っていて、私を見かけて、ピンと来たんだって 私も、もらったパンを食べて こんな優しくておいしいパンを作る人って、きっと 心のやさしい人なんだろうなって思ってしまったからね だから、卒業して、すぐに一緒になったのよ 最初は売れ残ったパンばっかり食べていたけどね 親からも、借金してね でも、ようやく、去年ぐらいから、少し余裕できてきたのよ」

「すみれさん 見ていると 毎日が楽しそうで 幸せそう 旦那様が優しいんですよね きっと」

「うふっ それは どうだかね 香波ちゃんこそ 幸せそうよ 明るいし」

「はい 世界で一番 幸せかも だって 周りがみんな 良い人ばっかりなんだもの」

 その後も、ポチポチしかお客さんが来なかったので、すみれさんは2時を過ぎて、居ても悪いからと帰ってしまった。夕方になって、くるみちゃんが来て

「ゲンイチさんね 真っ黒に陽焼けして 元気だったわよ 香波に会えなくてさ残念がってたわよー」

「そう 私も会いたかったけどね」

「ウチなぁ そろそろ就活せんならんのやー」

「どんなとこに行くんですか?」

「そうね ホテルとか旅行社 希望」

「ふーん やっぱり お客さん相手なんだ」

「そうだねー やっぱり 楽しいからかなー」

「すごいねー くるみ がんばってね」

 ― ― ― * * * ― ― ―
 
 巧と会った時に、私は聞いてみた

「ねぇ 就活って始めているの?」

「うーん そろそろかなー でも 最終は 京都府庁になるかなー だけど、農政は採用ないかも知れない。いろいろと各地を回ってみてな それぞれ農業なりに取り組んでいるんだけど、影響力が弱すぎて、地域にまで至ってないんだよ 結局、ひとりの力なんてな そんなとこに飛び込んでいっても、僕なんか何にも出来やしない。だけど、最後に行った 沖縄の離れ島で、サンゴの海を守るために、地域の産業に取り組んでいる人が居た。素晴らしいと思ったんだ。そんなとこで、少しでも、働けたらな いろんなことを教えてもらえるから とも思っている」

「えー 沖縄? 遠いね 外国みたいなもんやんかー 私ね ようやく 京都のこいさんになろうと、お母さんからいろいろと教えてもらってるんやけどなーぁ あっ 違うねんで 巧の行くとこやったら、南極でもな 巧がええんやったら何処でも、付いて行くよ たから、好きなこととか、好きな場所に行ってくれて、ええんよ 私のことは、負担に思わないでね」

「ふふふー その水島さんって人も 奥さんがそんな調子で離れ島まで、追いかけてくれたんだって 幸せそうに語ってくれていた」

「そーなんだ 女は好きになった人には弱いからね まっしぐらなんだよ」

「それは 香波 自分のこと言って居るのか?」

「ううん 違うよ 私は 巧が全てなんだもの そんなのって 嫌?」

「むりやり 言わすなよー 世界中で香波を幸せにできるのは 僕だけだ いいかー これで」

「よーし 合格!」  
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