少女は 見えない糸だけをたよりに・・

すんのはじめ

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第8章

8-1

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 後期授業が始まる頃、学生さんも戻ってきていて、お店も忙しくなってきていた。だけど、くるみちゃんが就活が忙しくなってきたのか、すみれさんが入ったり、明美さんに延長してもらったり、燿さんも向こうを終えて入ったりして何とか、ローテーションを組んでやっていたのだ。

 そんな中、ひょっこりゲンさんが顔を出してくれた。陽に焼けて、真っ黒の顔が光っていた。私は、見るなり、寄って行ってごっつい手を取って、飛び跳ねていた。

「ゲンさん 元気そうで・・」

「えぇ自分も 香波ちゃんの顔を見たかったんです」

「どーしたの いきなり」

「後輩のね 学生選手権が始まるんで 見にきたんですよ」

「そうなの やっぱり まだ 面倒みてるんだね 食べる? あぁ ハムカツ無いけど、焼き豚サンド」

「あぁ いいっすよ 香波ちゃんが作ってくれるんなら なんでも」

 私が、焼いていると、すみれさんが寄ってきて

「ねぇ あの人が香波ちゃんの彼氏? んなわけないよねー でも、親しそうに、手なんか握っちゃってー」

「えぇ 私の大好きな人 お兄ちゃんみたいな人です」

「ふーん 彼氏じゃないのに あんなことするんだー 彼氏が見たら、気分悪くするんじゃぁない?」

「そーですかー そんなこと無いと思うけどなぁー ゲンさんは特別な人だから」

「そっ そーですよ 香波ちゃんは 自分の太陽みたいな人で 下心なんてないっす」と、ゲンさんに聞こえていたんだ。

「あっ そうだ 香波ちゃん 彼氏に逢えたんですよね 良かった いつも、幸せいっぱいの顔してるって、くるみさんが」

「そうなのよ 幸せ これも、ゲンさんが居てくれたから」

「いゃー 自分は何にもしてないっすよ」

「ううん ちがうのー ゲンさんが元気をくれたから 幸せを運んでくれたのよ」

「そんな風に言ってもらえるとー やっぱり 香波ちゃんは 自分にとって太陽なんだな」と、そして、二つ目のランチョンミートのを頼んでいた。

「今日は くるみさん居ないんだね だけど、ここは綺麗な人ばっかり揃えているんだね」

「うふふっ 店長の我儘でね ゲンさん 彼女は?」

「アハッ なかなか 香波ちゃんとかくるみさんみたいな天使のような人居なくてなー」

「だって お客さんとか ゲンさん 女の子にもてるでしょー」

「ハァー そんなに簡単にいかないですよ まして さえない民宿じゃぁなー」

 そのうちに、ランチョンミートのクレープも三口位で食べてしまって、

「じゃー 香波ちゃん 元気でな」と、帰る時、私は

「ゲンさん 私ね もしかしたら、ずーと前に ゲンさんと出会って居たとしたら・・民宿の・・」

「香波ちゃん もう、いいんだよ! そんなに気を使ってくれなくても・・ 香波ちゃんは、これからも、もっともっと幸せになるんだからー 一度、彼氏と一緒に来てくれ うまい魚出すからさー」

「ウン やっぱり ゲンさんは 私のお兄ちゃんなんだね きっと、行くよ 私の彼氏、自慢しに行くから、見てー」と、言って、お別れした。

 ― ― ― * * * ― ― ―
 
 ある日の夕方、巧と有沢さんが揃って顔を出してくれた。

「香波ちゃん 俺 就職先 決まった。バイオ野菜の会社でな 浜松やねんけどな」

「ありゃ 離れていっちゃうんだ」

「まぁな しょうがないよな 香波ちゃんも巧をしっかり掴まえておかないと、あちこちに行っちゃうぞ」

「よく 言いますね 自分は離れていくのにー」

「俺は まだ 彼女も居てないし フリーやんか」

「うーん 私もな 巧の負担になったら、あかんねやって 決めてるんやけどな」

「香波 なんも 負担なことないから それは、気にするなって」と、巧は言ってくれた。

「香波ちゃん いつもの威勢の良い娘 今日は居ないんだ」

「うん 就活が忙しいみたいよ こちら すみれさん」

「なんで こんなに美しいひとが・・」

「うふっ 美人でしよー うちはハニーエンジェルだからね でもね だめよ もうお相手いるんだから」

「オォー ここには、天使は居るけど 神様は居ないのか―」

「ふふっふー はじめ そりゃー 名言だなー でも、キューピットは居るぞ 香波が言って居た 有沢さんがキューピットになってくれたってな」

「そうかー 巧 俺 辛かったんだぞー お前がろくな便りよこさないから 二人に責められてな―」

「ああ そんなこともあったなー バイトあるから もう いくぞ」

「巧 身体だけ 壊さないでね」

「おう お互いな」
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