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第9章
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年が明けて、私は、この家で3度目のお正月を迎えていた。もう、元旦のお料理も要領が解っていたので、昨日からお母さんのお手伝いも手際よくこなしていた。
そして、揃って、お屠蘇で新年のお祝いをして、その後は、平安神宮にお詣りに行くことになっている。私はいつもの着物だったけど、お姉ちゃんは、小紋の着物を着ていた。もう、いつまでも振袖じゃぁ、香波と張り合っているみたいじゃぁないって言っていた。
「早いものだなー 香波が来て、3度目の正月だものな 香波 明日はデートだってな 着物姿見たら、びっくりするだろうなー 彼も」
「そんなー でも 喜んでくれるといいなぁー」
「こんなに綺麗なのに 喜ばない男がいるものかー どうだ一度 連れてこないか 会ってみたいものだが・・それに、寮生活で正月だって、ろくなもん喰ってないんだろ」
「だって まだ 紹介するなんてー」
「お父様 香波ちゃん 困っているじゃぁない その時になったら、香波のことだから、自分から言ってきますよ ねぇ 燿?」と、お母さんが助けてくれた。
「そう ねぇ 私も会ってみたいけど、我慢しているのよ 変に気を使わせないように」
「お母さん ありがとうございます 彼も まだ、就職も決まっていないし もう少し、待ってください」
次の日、私は少し歩くけれど、彼とは 地下鉄の駅で待ち合わせをしていた。着いた時には、もう巧が来てくれていて
「香波 ・・・いゃー きれいだよ 遠くに見えた時、まさかと思ってしまったよ まさかの美人なんだなー」
「ありがとう 巧に見せたかったんだー」
「うーん 嬉しいよ 海辺の岩を飛ぶようにしていた少年のような香波とは大違いだなー・・・ 歩いてくるのって遠かったんじゃぁないのか?」
「うん もう 歩くのも慣れたよ 京都に来て、お正月はいつも着物着せてもらってるから」
「そうか 幸せそうで良かったよ」
「それよりもね 私ね 今 巧が居るから、最高に幸せなんだよ」
私達は、地下鉄に乗って、下賀茂神社に参拝した。その間、ずーと私は巧の腕に摑まるようにして歩いた。だけど、人も多くって、私、キスして欲しくって、ずーとチャンスを考えていたんだけど・・
帰り、家の近くまで、送ってくれて、あの家を見られるのには抵抗があったから、もういいから、いいからって言うのに家の塀が見える所まできてしまって
「あそこ」と、私は小さな声で・・
「えぇー あそこ? あの木の扉があるとこ? お屋敷っていうんだろうなー」
「うん」
「香波がお世話になっているって・・ 古い家って聞いていたけど・・あそこの家? どんなとこなんやー 金持ちなんか?」
「うん 京都の老舗なんやって 店長のおうち」
「うっ なんか聞いたことあるなー 香波が僕らの先輩で美人だって言っていたよな うーん その人なんかー」
「うん 私ね お姉ちゃんのこと、賢くて、優しいし、尊敬しているんだー 私が京都に出てきたときの恩人」
「そうかー 香波 いい人に出会えたんだなー」
「うん お父さんもお母さんも 優しくしてくれて、可愛がってもらえてるの」
そして、裏口に周って行って、人がいないのを見て、私は巧の顔を見て、「巧」と言って眼を閉じていたら、抱き寄せられて、巧の唇が触れてくるのがわかった。そのまま 離れたくなかったんだけど・・・
― ― ― * * * ― ― ―
年が明けて最初の営業日、店にお姉ちゃんが暁美さんと一緒に、一人の女の子を連れてきた。
「有馬奈々ちゃん 暁美ちゃんの旦那さんの妹さん 暁美ちゃんに代わって今日からウチで働いてもらうの」
「よろしくお願いします お姉ちゃんみたいにいかないですけど・・一生懸命やります」と、ペコリと頭を下げていたけど、なかなか愛らしい人だった。
私とすみれさんも自己紹介したら
「ふたりともね、手際良くて、ついていくの最初大変だけど、どんどん叱られなさい。みんな親切だから、叱られても気にしないでいいから」と、暁美ちゃんが言ってきた。
「うふっ そうよ ウチのお店は笑顔も売り物だからね じゃぁ 香波ちゃん 責任もって教えてあげてね」と、私に押し付けていたんだ。
「相変わらず、一方的ね 香波ちゃん 午前中はウチも居るから、最初、要領教えておくから・・」すみれさんも言ってくれていた
「お願いします 助かります」と、私は準備に取り掛かり始めたら
「この子ね 年末まで、スーパー向けのサンドイッチとかおにぎりを作っている会社にいたんだけどね、そこの男連中がだらしないのばっかりで、卑猥なことばっかり言うんで嫌だったんだって だから、辞めたんだって」と、暁美さんは、すみれさんに話しかけていた。私は、奈々ちゃんを奥に連れて行って、タイムカードとか制服を用意してあげていた。
まだ、学校も始まっていないので、その日はパラパラとしかお客様も来なくて、私もゆっくりと焼き方なんかを奈々ちゃんに教えていた。私より、一つ年上で去年高校を卒業して勤め出したみたいだった。
夕方、くるみちゃんが来て、顔合わせしたら
「よかったー 見つかって ウチな 見つからへんから、店長にどう言ったらええんやろーって考えていたんや」と、安心していたみたい。
そして、揃って、お屠蘇で新年のお祝いをして、その後は、平安神宮にお詣りに行くことになっている。私はいつもの着物だったけど、お姉ちゃんは、小紋の着物を着ていた。もう、いつまでも振袖じゃぁ、香波と張り合っているみたいじゃぁないって言っていた。
「早いものだなー 香波が来て、3度目の正月だものな 香波 明日はデートだってな 着物姿見たら、びっくりするだろうなー 彼も」
「そんなー でも 喜んでくれるといいなぁー」
「こんなに綺麗なのに 喜ばない男がいるものかー どうだ一度 連れてこないか 会ってみたいものだが・・それに、寮生活で正月だって、ろくなもん喰ってないんだろ」
「だって まだ 紹介するなんてー」
「お父様 香波ちゃん 困っているじゃぁない その時になったら、香波のことだから、自分から言ってきますよ ねぇ 燿?」と、お母さんが助けてくれた。
「そう ねぇ 私も会ってみたいけど、我慢しているのよ 変に気を使わせないように」
「お母さん ありがとうございます 彼も まだ、就職も決まっていないし もう少し、待ってください」
次の日、私は少し歩くけれど、彼とは 地下鉄の駅で待ち合わせをしていた。着いた時には、もう巧が来てくれていて
「香波 ・・・いゃー きれいだよ 遠くに見えた時、まさかと思ってしまったよ まさかの美人なんだなー」
「ありがとう 巧に見せたかったんだー」
「うーん 嬉しいよ 海辺の岩を飛ぶようにしていた少年のような香波とは大違いだなー・・・ 歩いてくるのって遠かったんじゃぁないのか?」
「うん もう 歩くのも慣れたよ 京都に来て、お正月はいつも着物着せてもらってるから」
「そうか 幸せそうで良かったよ」
「それよりもね 私ね 今 巧が居るから、最高に幸せなんだよ」
私達は、地下鉄に乗って、下賀茂神社に参拝した。その間、ずーと私は巧の腕に摑まるようにして歩いた。だけど、人も多くって、私、キスして欲しくって、ずーとチャンスを考えていたんだけど・・
帰り、家の近くまで、送ってくれて、あの家を見られるのには抵抗があったから、もういいから、いいからって言うのに家の塀が見える所まできてしまって
「あそこ」と、私は小さな声で・・
「えぇー あそこ? あの木の扉があるとこ? お屋敷っていうんだろうなー」
「うん」
「香波がお世話になっているって・・ 古い家って聞いていたけど・・あそこの家? どんなとこなんやー 金持ちなんか?」
「うん 京都の老舗なんやって 店長のおうち」
「うっ なんか聞いたことあるなー 香波が僕らの先輩で美人だって言っていたよな うーん その人なんかー」
「うん 私ね お姉ちゃんのこと、賢くて、優しいし、尊敬しているんだー 私が京都に出てきたときの恩人」
「そうかー 香波 いい人に出会えたんだなー」
「うん お父さんもお母さんも 優しくしてくれて、可愛がってもらえてるの」
そして、裏口に周って行って、人がいないのを見て、私は巧の顔を見て、「巧」と言って眼を閉じていたら、抱き寄せられて、巧の唇が触れてくるのがわかった。そのまま 離れたくなかったんだけど・・・
― ― ― * * * ― ― ―
年が明けて最初の営業日、店にお姉ちゃんが暁美さんと一緒に、一人の女の子を連れてきた。
「有馬奈々ちゃん 暁美ちゃんの旦那さんの妹さん 暁美ちゃんに代わって今日からウチで働いてもらうの」
「よろしくお願いします お姉ちゃんみたいにいかないですけど・・一生懸命やります」と、ペコリと頭を下げていたけど、なかなか愛らしい人だった。
私とすみれさんも自己紹介したら
「ふたりともね、手際良くて、ついていくの最初大変だけど、どんどん叱られなさい。みんな親切だから、叱られても気にしないでいいから」と、暁美ちゃんが言ってきた。
「うふっ そうよ ウチのお店は笑顔も売り物だからね じゃぁ 香波ちゃん 責任もって教えてあげてね」と、私に押し付けていたんだ。
「相変わらず、一方的ね 香波ちゃん 午前中はウチも居るから、最初、要領教えておくから・・」すみれさんも言ってくれていた
「お願いします 助かります」と、私は準備に取り掛かり始めたら
「この子ね 年末まで、スーパー向けのサンドイッチとかおにぎりを作っている会社にいたんだけどね、そこの男連中がだらしないのばっかりで、卑猥なことばっかり言うんで嫌だったんだって だから、辞めたんだって」と、暁美さんは、すみれさんに話しかけていた。私は、奈々ちゃんを奥に連れて行って、タイムカードとか制服を用意してあげていた。
まだ、学校も始まっていないので、その日はパラパラとしかお客様も来なくて、私もゆっくりと焼き方なんかを奈々ちゃんに教えていた。私より、一つ年上で去年高校を卒業して勤め出したみたいだった。
夕方、くるみちゃんが来て、顔合わせしたら
「よかったー 見つかって ウチな 見つからへんから、店長にどう言ったらええんやろーって考えていたんや」と、安心していたみたい。
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