少女は 見えない糸だけをたよりに・・

すんのはじめ

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第12章

12-1

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 9月になって、お父さんが

「香波 式はどうするんだ もう、そろそろ予約しとかんとなー」

「えぇ でも、まだ、巧となんにも・・」

「あいつは そーいうところ 気が回らんからなー そーだなー 平安神宮で和装で式だけを挙げて、その後、ホテルで洋装にするってのはどうだ なぁ 聡」

「そうですね 香波ちゃんの一度のことですものねー 白無垢も見たいし、打掛姿も映えるでしょうし ドレスも素敵よねー」

「じゃぁー 全部 着ればいいじゃあないか」

「あのー お父さん 私 巧と相談しなきゃー それに そんな贅沢できませんし・・」

「あぁ 相談しろ でもな ワシの娘なんだから 少しは、ワシ等の夢も叶えさせてくれ 香波にも一生の思い出になるんだから・・香波がやりたいって思うこと 全部 ヤレ! 費用のことは心配するな! 帯屋の娘なんだからー」

「そうよ 香波 私はあてになんないんだから その分 お父様達に夢をあげてちょうだい 遠慮しなくていいわよ 香波のきれいなの見たいんだから お父様の我儘と思ってね」と、聞いていたお姉ちゃんも言ってくれていた。

 私が、巧に切り出した時

 「そーだなー 何にも考えてなかったなー そろそろだよなー 式のこと 新居のこと それと、子供はどうすんのかとか」

「うん お父さんから 早く 決めろって言われちゃった」

「そうかー あの人のことだから 質素にって言っても無駄だろうな だけど、そんなに金無いしなー」

「あのね 嫌かもしんないけど・・私 いくらか貯金あるよ それと、私があそこの家てお世話になるようになってから、幾らかお金を出してたの。それを、お母さんが貯めてくれていたのも 使いなさいって言ってくれた お父さんも、費用のことは心配しないで やりたいことは全部やれ! って」

「そんな訳にもいかんだろー それは、香波になんかあった時の為においておこうよ それに、僕も、この前、帰った時、お母さんが結婚するんで必要になるだろうからって、いくらか貯めていたお金を使いなさいって言ってくれた」

「あのね それこそ 私達が使ってしまう訳にいかないじゃぁない! もっと 話あおうよ 出来るだけ二人で納得することを 一緒になったっら、どれだけお金が必要になるのかもね」

「そうだな 香波 しっかりしているよなー 頼りになるよ」

「バカ 巧が こういうことになると ぼーっとしてるんだからー お金なんて贅沢しなきゃー必要ないと思ってるんだろうけど・・・もっと 厚かましくなってもいいんじゃぁない 私に・・ 君のお嫁さんだよ!」

 ― ― ― * * * — — —
 
 日曜日に巧のマンションに行くと、珍しく、彼は床を拭いて掃除をしていた。

「あーん 私が来るまで待ってたら、手伝ったのにー」

「いいんだ これっくらい それより 香波 話がある 座って」

 巧は急に、改まって、私、この前、ちょっときつい言い方してしまったから・・

「式のこと 今、感染騒ぎで大変だろう 簡単に集まりも出来ない 特に、僕は、公務員なんだ 私的にそんなことしたらダメだと思う 出席する人も躊躇するよ だから、様子見で延期しようと思う」

「えー 結婚も・・嫌だー そんなの 私、ずーと夢見て待っていたのに・・」

「いや 結婚式はする ちゃんと籍も入れる だけど・・披露宴は出来ない それは、様子見てな」

「だったら 式だけは挙げてよー 二人だけででも・・」

「わかった 披露宴だけは延期だよ わかってくれたな」

「うん でも良いよ お父さん達に話す でもね・・この前 お父さん達は平安神宮でって 私の白無垢姿 楽しみなんだって 打掛とドレスも・・・お父さん達の夢を叶えてくれって言われたの だから、巧 お願い 式だけで良いから、お父さん達の気持ちもわかってー」

「うーん しょうがないかなー 揉めたくないしなー じゃぁ ウチの実家の家族と香波の家族だけにして 挙げるかー」

「うん ありがとう じゃぁ それで話すね お父さん達に」

「それと、二人の新居 借りることになると思うけど、香波は仕事続けるだろー? 通勤はどれぐらい離れても、大丈夫かなー」

「うーん 夜7時までだから、電車、バスでも1時間が限界かなー 出来れば、自転車で通えるところがいいけど・・」

「そーだよね 僕だって 1時間が限界だよ 家賃との兼ね合いがあるけどな まぁ それで、探すよ あんまり、汚いところに香波を住まわすわけにいかないものなー 帯屋さんのお嬢様なんだから・・」

「巧! そーいう言い方 やめてよね 怒るよ! 私は、真っ黒になって岩場の間を飛び跳ねていた田舎の島の女の子なんだから・・」

 家に帰って、お父さん達に話すと、最初は渋っていたが、仕方がないなと、結局、式だけを平安神宮で挙げて、両方の家族だけの出席とした。だけど、お母さんが、ごねて、打掛姿も見たいというので、写真だけ、白無垢のと打掛のとドレスのを撮ることになったのだ。

 — — — * * * — — —
 
 一応、式の話が落ち着いたところで、お母さんが

「香波ちゃん 来年 成人式よね だけど 式があるかどうかもわかんないからね あのね 結婚式のこともあるから、前に着た 燿のものでいいかしら・・」

「おかあさん 私 一緒に行く友達も居ないし そんな成人式のために 特別なんて思っていませんから・・」

「なんだー そんな 香波だって 一生一度の成人式だぞー 考えてあげなさい」と、お父さんが言っていたけど

「本当にいいんです お父さん そんなのもったいないですし お母さんの言う通り 結婚式のこともありますから・・」

「そうよ だって お嫁にいってしまったら、振袖はちょっとね もう、着る機会もないのよ だったら、他にお金回したほうがいいわよ 成人式もあるかどうかわかんないのですから・・」と、お母さんは意見を押し通してしまった。

 お父さんと散歩に出ていた時

「香波 いいのか ワシは香波のことを燿と同じように思っている だから、せっかくの機会なのに 同じように晴れ着を・・」

「いいんです もう 私は、お姉ちゃんの妹なんですから、同じ着物を着れるだけでもうれしいんですから・・」

「そうか 香波が素直ないい娘で良かったって思うよ でも、式を挙げる時には、島のお父さんとお母さんにも 香波の幸せなとこをちゃんと見てもらおうな おばあさんだって見たいだろうし・・・」

「うん お父さん もう 言わないでー 想い出しちゃうから・・でも こんなに幸せなんだから 安心すると思うよ!」

 そして、その年も暮れていった。人が集まることのない静かな年の瀬を迎えた。だけど、私は、この家で過ごす最後の大晦日で、大掃除をした後、お母さんから、しっかりとお料理を教えてもらっていた。
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