35 / 89
35話 ユーナに芽生える、小さなヤキモチ
しおりを挟む魔王ヨーケス・ブーゲンビリアが勇者パーティーの大聖女、シャンプル・リンスルとデートをした。
……その姿を、魔王軍四天王の中で随一の盗撮魔【ノゾッキー・トサッツー】は闇に紛れてずっと監視、そして〝ドヤッター〟にその動向をアップしていた。
「…………くっくっく。黒ノゾッキー」
片手でサングラスの位置をクイッと直す彼は、不敵に笑う。
魔導水晶板でポチポチと文字を打つ……そんな彼のドヤ呟きは当然、神託の勇者ユーナ・ステラレコードの〝ドヤッター〟のタイムラインに流れてしまう。
【魔王様、勇者のこと世界一かわいいとか言ってるのに、コレはないわぁ~】
ドヤ呟きの下に貼られた画像は、魔王ヨーケスがシャンプルをお姫様抱っこしているものだった。
☆★
魔王ヨーケスと大聖女シャンプルがデートをしている一方で──。
ここはトゥースの街、ユーナが新しく寝泊まりしている宿。
いま、あたしは魔導水晶板でヨーケスの動向をチェックしていた。
というのも、最近ヨーケスを注視しだしたのは、私がせっかく仲間にした大聖女と大魔法使いを彼が誘惑しよったから。
しかも、無自覚に……!
そんなだからあたしは最近、ずっと彼の行動を監視し続けた。
だって、マッシュもシャンプルもユーナにはもったいないくらいに高レベルの仲間だし、できればパーティーを抜けてほしくない。
ちなみにあたしがチェックしているのは、毎日朝からヨーケスを監視しているアカウントのドヤ呟きだ。
その人はなぜか、魔王ヨーケス・ブーゲンビリアについてのコメントばかりを載せている。
黄色いくまさんにサングラスをかけた、かわいいアイコンの【ノゾッキー・トサッツー@魔王軍四天王! 魔王様の不幸はハチミツの味】さんは今日、ヨーケスとシャンプルのデート画像をたくさんアップしていた。
ノゾッキーさんのコメントはこんな感じだった。
【魔王様、四天王としてセッシャはその趣味にはついていけません】
そのコメントの下には、ヨーケスがシャンプルと顔を近づけて本を見ている画像が貼られている。
しかも、その本の表紙をチラッと見たけど……なんだかえっちい感じ。
細身で素っ裸の男性が、なんかチャラそうな男の人にいやらしい感じで胸を揉まれてるものだった。
しかも本の帯にデカデカと書かれたキャッチコピー? タイトルなのかな? がめっちゃひどい。
『俺のアレが巨根みたい! と言うアイツの股間が気になって夜も眠れない──待望の俺巨根、第二期舞台化決定!』
だって。
こんなえちい感じの本が舞台化するんだ……。
「……男同士でえちいことする舞台……じゃなくて!」
問題なのは、ヨーケスとシャンプルがえちい本を一緒に見てるってこと。
だって、シャンプルは大聖女だよ? えちいのとかをヨーケスは彼女に読ませて、闇堕ちさせる気なんちゃうの?
そう考えたあたしは、さらに〝ドヤッター〟を確認する。
すると、
【魔王様、人間の大聖女とデートなう。これも魔王軍の作戦? それとも勇者への恋をあきらめたかな? かな?】
【魔王様、まーた今日もコーデがダサくて草。穴あきデニムとか、どれだけ魔王軍びんぼーなのかと思われるんですが?】
ヨーケスをディスるコメントが並ぶ中で、ノゾッキーさんの最新のコメントに、あたしは目を丸くした。
【あちゃー、魔王様。大聖女をお姫様抱っことかお熱いですわぁ】
【でも、魔王様? 勇者のこと世界一かわいいとか言ってるくせに、コレはないわぁ~】
そのコメント下の画像には、ヨーケスがシャンプルをお姫様抱っこしているものだった。
…………イラッ。
あたしは魔導水晶板の操作をするのがなんだか嫌になってきた。
なんなん? ヨーケスったらいっつもユーナのこと『好き好き愛しとうよ』言っとるくせに……!
なんでシャンプルをお姫様抱っこしよるん?
そりゃマッシュとシャンプル、どっちか選べばと言ったのユーナだけど……。
そんなことを考えてしばらくの間、あたしが魔導水晶板とにらめっこをしていると……ピコッ! と音を立てて通知が入る。
〝ドヤッター〟でフォローしているシャンプルがコメントを入れたのだ。
『今日はマイダールンにプロポーズされちゃった! しかもみんなの見てる前で……キャピ♡ でもなー、わたくし最近勇者様のパーティーに入ったばかりだし、ちょっと困っちゃう』
「な!? ヨーケス……! ぐむむむ……」
あ、あなたって人は……!
開いた口がふさがらなかった。
つい最近知り合ったばかりで、しかもユーナの仲間になってくれよった女の子にさっそくプロポーズ!? そんなバカな話がある?
あたしはノゾッキーさんとシャンプルのコメントを見て、だんだんと腹が立ってくるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎
王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。
……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。
追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。
無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」
騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!
世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない
二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。
ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。
当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。
だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。
――君の××××、触らせてもらえないだろうか?
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
モブ転生とはこんなもの
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
あたしはナナ。貧乏伯爵令嬢で転生者です。
乙女ゲームのプロローグで死んじゃうモブに転生したけど、奇跡的に助かったおかげで現在元気で幸せです。
今ゲームのラスト近くの婚約破棄の現場にいるんだけど、なんだか様子がおかしいの。
いったいどうしたらいいのかしら……。
現在筆者の時間的かつ体力的に感想などを受け付けない設定にしております。
どうぞよろしくお願いいたします。
他サイトでも公開しています。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない
ラム猫
恋愛
幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。
その後、十年以上彼と再会することはなかった。
三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。
しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。
それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。
「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」
「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」
※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。
※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる