魔王様はレベル1の勇者に恋をする! 〜ヤンデレ系こじらせ魔王は愛する勇者のレベルを上げさせない〜

愛善楽笑

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64話 売られたケンカは買おうじゃないか 中編

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 そんな私の沸々と煮えたぎってくる怒りも知らず、アイドはユーナとキノコ、シャンプルに対して慈愛を浮かべた表情で笑いかける。

 エツィーには目もくれずにだ。

「君たち目を覚ませよ。この男は魔王、オレたちの敵……だからオレと一緒に、魔王を打ち倒そう!」

「アイド、だからユーナはあんたをパーティーに入れんよ?」

「いやいや、ユーナさん! 勇者パーティーにオレがいたら、見た目もバランス良くなるとは思わない? S級冒険者のイケメン俳優、大魔法使いと大聖女、そして神託の勇者。このメンバーの伝説を今から始めよう!」

 おい、エツィーを入れてやれよ。お前はゴリラを放し飼いにするつもりか? 野良ゴリラほど危険なものはないというのに。

 そんな強引に話しを進めるアイドの提案に、ユーナたち四人はヒソヒソ話しを始める。

 性格的にはキザでナルシストな感じのアイドだが、魔王ながら私も納得するところはある。

 アイドはたしかにイケメンだ。ユーナのパーティーにいたら映えるのは間違いない。

 それにだ。そもそも勇者パーティーにゴリラがいるのは絶対におかしいし、バランス崩壊だ。しかも元魔王軍四天王だし。

 とはいえ、私はユーナのパーティーにこの男の加入は絶対に反対だ。

 毎日ユーナに愛を告げるとかするんだろ? ふざけんな! その役目は私だけでいいのだ。

 と、そう思った私が、ユーナたちの背後の会話に聞き耳を立ててみると……。

「あんな? ユーナ、アイドみたいに強引な人苦手なん。ていうか、さすがのユーナもドン引きやよ? 勝手に話進めよるし、ナルってシスっとるし……」

「ほんとだよ! それにアイツ、ヨーケスおにいさんにいやらしく触れて、ボクはプンオコだよ?!」

「わたくしも、こーゆー自意識過剰系で自分のことイケメンとか言っちゃう人、生理的にムリなんですけど……!」

「ワガハイ、こんな無礼なおぼっちゃま冒険者は見たことない! まるで横暴なゴリラそのものゴリ……そのものだ!」

 キノコが怪しい発言をするのは置いとくいて、やはりというか、アイドはユーナたちから大不評だった。あとゴリラはてめーだエツィー。

 私はユーナの肩をトントンと叩く。

「なぁユーナ。そろそろ『トラッフグの泉周辺のモンスター駆除』の結果報告をしに行く方がいいんじゃないか? 結局、モンスターはいなかったし、盗賊団も壊滅したしな。こんなヤツほっとけ」

「うん、そうなんやけど……なんでモンスターが一匹もおらんかったんやろ? あんな? ユーナ、アイドのことよりそっちが気になるんよね」

「さ、さぁ!? それは私もわからないが……というか、そもそもトラッフグの泉にはモンスターの存在などなかったんじゃないか? たぶんザッコス盗賊団が流したデマにみんなが踊らされてたのだろう! うん、そうに違いない!」

「えぇー? そうなんかなぁ」

「き、きっとそうさ! トラッフグの泉もほら、毒気を放ってないし、もはや回復の泉ではないか!? そ、それも含めて報告したらどうだっ!?」

 私は必死にごまかしていた。

 泉が浄化されたのも、モンスターがいないのも、全て我が魔王軍による【ユーナのレベルを上げさせない作戦】の結果によるものだ。

 ……が、もちろんユーナたちには内緒だ。

「おい、アイドとやら。とにかくユーナたちは忙しい身だ。お前にかまってるヒマはない。だから今後はユーナに近づくな、わかったな?」

 私がアイドに向けて言い放ち、背を向けて立ち去ろうとした…………のだが。

「なんだお前。そこをどけ。命が惜しくないのか?」

 私の前に、憤然した顔つきで立ち塞がる。私はアイドを睨みつけて言った。

 コイツ……人の話を聞かない系だが、さっきの盗賊団みたいに浅ましく卑屈ではなさそうだ。

「悪いけど……オレはあんたが魔王だからって、臆病風に吹かれて身を引くほど軟弱じゃない。それに、なんでオレがあんたの言うこと聞かないといけないんだ」

「ほう? ならばどうするんだ? 勇敢なおぼっちゃま冒険者くん」

 この後の展開が、容易に想像できる。
 おそらくこの男は私に──!
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