魔王様はレベル1の勇者に恋をする! 〜ヤンデレ系こじらせ魔王は愛する勇者のレベルを上げさせない〜

愛善楽笑

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66話 アイドにユーナを持ち上げさせる

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「潔ぎよく負けを認めたらいかがかしら? アイドさん、あなたはダールンに負けたの、負けたのですよっ?」

「そうだよ! というか、キミが持ちかけたルールでヨーケスおにいさんは正々堂々と勝負したんだよ!? それを卑怯者呼ばわりするなんて……キミの方が卑怯者だ!」

 キノコとシャンプルがアイドへ刺し貫くようなキツい視線を送り、罵倒する。

 それをアイドはうぬぬぬ、口を噛みながら堪えて聞いていた。

「き、君らはなんで魔王の肩を持つんだ!? オレたちは同じ人間の仲間じゃないのか……っ!?」

 アイドは不満げな声を出し、キノコとシャンプルを見上げる。醜態というか、見るに耐えないビショ濡れのパンツを晒しながら。

 たしかにキノコもシャンプルも私たち魔族の敵対する種族、人間だ。

 しかし、大魔法使いと大聖女ともなると、種族の違い関係なく物事の分別がつくのだろう。実にフェアなジャッジと言える。

 ありがとうキノコ、シャンプル。

 私はうんうん、とうなずいて心の中で感謝の声を出していた。

 さて、そんなアイドはまだ納得いかない顔をしている様だった。まだ自分の判断が甘かったというのを認めてないのだろう。

 だが私はアイドに厳しい現実を突きつける。勝負は勝負、約束は守ってもらおう。男に二言はないのだから。

「そういうことだ。アイド、どうしたって私の勝利は覆らない。さて、約束だ、お前は何でも一つ言うことを聞くと言っていたな? では……」

「では……!? な、なんだよ!?」

「そうだな、『猛毒の泉トラッフグはユーナの聖なる力によって浄化され、モンスターもそのおかげで姿を消した。付近の盗賊も既にいないから安心してくれ』と街の者に伝えろ」

 仮にもこいつは人間たちの中では有名人らしいし、何よりS級冒険者だ。街の者たちも耳を傾けるだろう。

 そんな私の一言に、アイドは目をまるくした。

「なっ!? ……そ、そんなことでいいのか? オレはてっきり、『お前の命をもらう、今後ユーナの前に二度と現れないようにな!』と言われるものかとばかり……!」

 予想の斜め上の言葉だったのか、アイドは驚愕の表情で私に言う。

 まぁアイドの思ったことは当然、私も少しは考えた。
 しかし、私は快楽殺人鬼ではない。まったく、私を今までの魔王と一緒にされては困る。

 それにさっきユーナから『血を流して自然を汚すな』と言われたばかりではないか。話を聞いてなかったのかこいつ。

 そして、私はユーナの方を振り向いた。

「……ユーナ、君はどう思う? 私が勝ったということでいいだろうか? それからアイドへ告げた内容はどうだい?」

「うん、ユーナは二人に勝負の仕方の提案をしただけやし、いいと思うよ? アイドも先に対岸まで着いた方が勝ちって言いよったし。でもユーナ、泉を浄化したりモンスターを倒したりもせんかったよ? ユーナ、ウソはキライなん」

 知っている。君がウソを嫌いなことは……私がいちばん良く知ってるんだ。

 しかし、これは真実なのだ。

 なぜなら私は、ユーナの聖なる〝愛の〟力によって魔王軍を突き動かしたのだから。その結果として、トラッフグの泉は回復の泉へと生まれ変わり、モンスターもいなくなったのだ。

 つまり、これはユーナの功績と言っても過言ではない。

 私はユーナへ穏やかに語りかける。

「ユーナ、君の聖なる力があったから泉は浄化されたのは間違いない。それと、モンスターはおそらく君の〝伝説の剣・エクスカリバー〟に恐れをなしてどこかへ逃げたんだろう」

「えぇー? そんなことあるかなぁ? ていうか、ヨーケスはさっき、ザッコス盗賊団が流したデマにみんな騙されよったんちゃう? て言いよったよ?」

 きょとんとするユーナに、しかし私は平然と話し続ける。

「さっきはそう言った。しかし、私は思い出したんだ。この泉は初代魔王によって毒化した恐怖の場所で、魔物の巣窟だったことを」

「うん、ユーナもそう聞いとるよ?」

「だろう? じゃなきゃユーナにモンスター討伐の依頼がくるものか。それが一瞬にして美しい場所へと生まれ変わってしまうなんて……ユーナの存在が引き起こした、聖なる奇跡によるものと言わざるをえない」

「えぇー? うーん……そうなんかなぁ」

 釈然としないユーナは腕を組み、首を傾げる。
 するとユーナはしばらく考えてから言った。

「でもモンスターがいないのは事実やし、トラッフグの泉もめちゃキレイやし、街のみんなは喜んでくれよると思う。どのみちギルドには報告せんといけんしね!」

「そうですわ! 勇者様、前向きに考えましょう? 勇者様の奇跡の力が、平和をもたらしたのだと!」

「ねぇユーナちゃん、早速ギルドに報告に行こうよ! 盗賊団の件はヨーケスおにいさんの手柄だけどね、あはは」

 キノコがそう言うと、「そうだね!」とユーナはシャンプルと一緒にケラケラと笑う。

 そして、三人を微笑ましく見つめる私のすぐそばで、バカゴリラが「あ、たぶんそれ魔王軍の……」とユーナに言いかけたが、私が睨みつけるとエツィーは押し黙り、口を結ぶ。

 すると、そんなユーナたちのやりとりを無言でじっと見ていたアイドが「よっこらせ」と立ち上がり、私に話しかけた。

「ふん……! おい、魔王。今回はオレの負けってことにしとくぜ……! だがな、あんたは魔王で、オレたちの敵ってことに変わりはないんだ! 次は負けないから覚えておけよ!」

 アイドの真剣な眼差しとその言葉は、私との約束を守ろうという意志を告げていた。

 だけど……パンツいっちょで言われてもなぁ。しかも後ろが破れて尻丸出しじゃないか。

 股間隠して尻隠さずとはまさにこのことだ。ほんと、この男は最後までカッコのつかんヤツだ。

 捨て台詞はいいから早く服を着ろよ、このS級変態冒険者め。
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