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67話 黒猫の魔王
しおりを挟むトゥースの街に戻ったユーナたちは、冒険者ギルドに依頼の完了報告に訪れる。
そして私は、魔王城に帰ったとユーナたちに見せかけ、『変化』の魔法を使い、モフモフの黒猫へと姿を変えていた。
そう、全ては私のユーナの動向を見守るため……!
というのも、魔導水晶板の不具合でまーた『監視』の機能が上手く作動しなかったのだ。そんな理由から、私はこの作戦を思いついたのだ。
そしてもう一つ、私がニャンコになった理由はこうだ。前回私が人間に変装した際……シャンプルの時は人間たちにバレてしまうわ、キノコにも気づかれかけるわ……だったからだ。
だが、今はどこからどう見ても、違和感なく街に住み着く地域ニャンコ。私は、ちょこちょことユーナたちの後ろをついていく。
ふふ……! 今回の私はひと味違う……私がニャンコに姿を変えているなど、誰も気がつくまい……!
──さて、冒険者ギルドで依頼完了の報告をするユーナたちを私は見上げていた。
やがてカウンター越しの受け付け嬢の後ろから、恰幅のいいおっさんが姿を現す。
「あっ、ギルドマスターのモッチさん! 『トラッフグの泉のモンスター討伐』から、ユーナたちはただいま帰りました!」
「おお、勇者様よくぞご無事で! 皆さんもご苦労さまです!」
モッチと呼ばれたトゥースの街の冒険者ギルドのギルドマスターが、ユーナたちに頭を下げて礼を述べる。話を聞いていると、どうやら私のユーナに、わけのわからん依頼をしたのはこのおっさんのようだ。
ふーむ、ユーナが危険な目に合ったのはこいつのせいというわけか……この男、どうしてくれようか……!
……いや待て、ユーナも親しげに話しかけているし、少し様子を見ようか。
そう思いながら、私はギルドのカウンターに飛び乗り、少し離れて香箱座りをすると、ユーナたちのやりとりを眺め見ていた。
ギルドマスターがユーナ向けて口を開く。
「そうそう。さっき、アイドさんが帰って来ましてね。勇者様が無事に依頼を完了したことを触れて回っておりましたよ」
「そーなんだぁ。アイドずいぶん早く帰ってきよったんやね。うん、あんな? トラッフグの泉は──」
ユーナの言いかけようとした言葉を遮り、ギルドマスターはニヤッ……と笑みを浮かべると人差し指を立て、左右に振りながら「チッチッチ……!」と言うジェスチャーをする。
「大丈夫です勇者様。アイドさんから全て聞いておりますよ。なんでも猛毒の泉トラッフグを浄化し、付近のモンスターを討伐しただけでなく、【突如として現れた魔王を退けた】らしいじゃないですか! さっすが勇者様です!」
かっかっか! とギルドマスターが陽気に笑い、私はその内容に耳をピクリ! とさせていた。
は? 私がいつ退いたと? 私は退くどころかユーナのそばにずっといたんだが?
アイドめ……あいつ、約束は守ったようだが、余計なひと言を付け加えてくれたな……! 退いたのはザッコス盗賊団であり、そしてお前の方ではないか! おのれ……!
私の怒りなど気づくわけもなく、さらにギルドマスターは続ける。
「いや、ほんとにありがとうございます勇者様。街の者たちも、それはもう喜んでおりますよ? 特に行商人たちが言うには、トラッフグの泉を経由して、安心していろんな街に商売に行くことができる……と、胸を撫で下ろしてました」
「うんうん、それは良かったね! って、ところでモッチさん。ユーナたちは次の行き先を【サンドリッチ】の街にしようと思っとるんやけど……何か情報はないかな?」
「えっ!? 勇者様、皆さんも何も知らないのですか?」
うんうん、とユーナたちがうなずく。
と、ギルドマスターが話を続けようとしたその時だった。
「んん?! なにこのネコちゃんー! めちゃかわいいやん、モッチさんこのコ、ギルドで飼っとるの!? よちよち、こっちおいで!」
「んみゃ!?」
私はユーナに存在が気づかれてしまい、「よいしょ」と言ったユーナはカウンターから私を抱き上げていた。
「ねえ、見てー! この子、めちゃかわいくない?」
「ほんとですわね! 真っ黒なお顔からキラキラと輝く目がとってもチャーミングですわ!」
「なんだろ、ボクは猫が苦手なんだけど、なぜかこの猫はかわいいと思っちゃうなぁ。そうだ、ボクの従者として君どうかな? ……あ、こっち見た! オーケーってことかな? あはは、かわいいなぁ~」
「ウム、勇者殿! ワガハイも小さい動物は大好きゴリ……大好きですよ! 特にニャンコは大好物です!」
ユーナはギルドマスターの話はそっちのけで、私をシャンプルやキノコ、エツィーに見せていた。
エツィー、やめろ。お前に大好物と言われると恐怖でしかない。
とはいえ、今の私は魔王ではない。地域にゃんこだ。
にゃんこになりきらねば……!
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