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68話 サンドリッチの街とは?
しおりを挟む私を覗き込んでいるユーナたちに対して思う。
バレてはならない。とりあえず全力でかわいく振るまい、この場はニャンコとしてやり過ごさなければ、と。
私はユーナたちをぼんやりと眺めるようにして小首を傾げ、とりあえず「みゃーお」と鳴いてみる。
「うわぁ、かわいいね~! ほら、よちよち!」
そうすると、ユーナとシャンプル、キノコが交互に私の頭をナデナデしてくる。
……以外に気持ちいい。
ついでに言うと、私はユーナに抱っこされていて、もしかしてここは天国なんじゃないか? と思うほど幸せを感じていた。
と、ここでギルドマスターが言う。
「あ、あの~。勇者様? そのネコはギルドの飼い猫ではないです。おそらくどこかから入ってきた地域猫でしょう。っと、話しを続けていいですかな?」
「あっ! ごめんねモッチさん。で、【サンドリッチ】の街には何かあるの?」
「えぇ。あの街は今、二つの問題がありまして」
ギルドマスターが神妙な顔つきでユーナに答える。
「あの街は今、ドラゴンに苦しめられているんです。人間だけでなく家畜も襲われたり、時には農作物を根こそぎ燃やされたりと、状況は最悪なんですよ。それに加えて……」
「加えて……?」
「んみゃあ……?」
抱き抱えられたままの私と、ユーナが同時に首をかしげる。
「領主の【アクーダ・イッカン】という男がこれまたヒドイ奴でしてね。なんでも、『ドラゴンから領民を守る』という名目で税金をべらぼうに釣り上げ、領民の生活をひっ迫させてるらしく……民は貧困に喘いでるんだとか……」
「なあにそれ! ヒドイ奴やね!」
「ええ。そして、金が払えなければ農作物で補えと言い、それもできなきゃ奴隷のようにこき使う……逃げようにも街の外にはドラゴン。街には領主と挟まれて民は嘆いてると耳にしてます」
「「「はぁ……!?」」」
「ウホ……!?」
ユーナたちの表情が険しくなる。私も「んみゃ……!」とひと声鳴いて、ただユーナに抱きしめられていた。
「そんなんで、その街の冒険者たちは何もせんの? みんな苦しんどるのに!? かわいそうやないの!?」
「勇者様、あの街の冒険者なんかとっくに街を捨てて逃げましたよ。ギルドは崩壊、街に兵や騎士もいるにはいますが、【アクーダ・イッカン】と一緒になって領民を虐め散らしてるクズばかりだそうで。彼らは自分さえ良かったらそれでいいんでしょう」
「なんてことしよるん! ユーナそういう人たち大キライ! 許せない!」
ユーナのあまりの剣幕にギルドマスターは会話を続けるのをためらいつつも、再び話しを続けた。
そしてそんな中、私はいま危機的状況に陥っていた。
ユーナ、君の怒りはじゅうぶん伝わる。……だけど抱きしめる力が強いよ……苦しい。
わ、私はいまニャンコなんだが……。
「で、では勇者様。まさかあなた方が【サンドリッチ】の街をお救いになると……!?」
「もちろん! だって、困ってる人を助けてやれないなんてそんなん勇者ちゃうもん! ねぇみんな!」
チラ、とユーナがキノコとシャンプル、エツィーを見やると、彼らは力強くうなずいていた。
「もちろんさユーナちゃん! 魔王軍と戦うことばかりがボクらの使命じゃないし!」
「えぇ、みんなを助けましょう! 勇者様、ぜひやらせてくださいまし!」
「ウホ! 我が剣は魔王ヨーケス・ブーゲンビリアを倒すためのみにあらず……! 参りますゴリ……参りましょう勇者殿!」
「みんなありがとう! そー言ってくれるって、ユーナ信じちょった!」
仲間たちの言葉に、ユーナが嬉しそうな表情を浮かべ、微笑んだ。
そんな彼らを見ながら、私は一人考えていた。
なるほど、このままユーナたちが【サンドリッチ】の街に行くとドラゴンに遭遇することは目に見えてる。
しかしだ。
キノコもシャンプルも、もちろんエツィーでさえも重要なことを忘れてないか?
ユーナはレベル1だぞ? 伝説の剣・エクスカリバーを所有してるとはいえ、か弱い女の子なんだ。
となれば、私はいつまでもニャンコでいるわけにはいかない。
ほっておけば、私の大事なユーナがドラゴンの牙に襲われて……!
……ん? ちょっと待てよ? その前に……!
エツィー、お前私を倒すって言った? 言ったよね?
よし、お前はまたフルボッコにしてやる。覚悟しとけ……!
と、私がエツィーに対してイラオコのプンオコになっていると、バカゴリラがユーナに向けて言う。
「ところで勇者殿……ワガハイにもそのネコちゃん、抱っこさせてほしいゴリ……ほしいのですが!」
「ん? えぇよ? でも優しく抱っこしなきゃアカンよ? エツィーは力が強いんやから。ほら、クロスケ」
唐突にクロスケという名前をユーナにつけられてしまう中、ユーナは私を優しげな顔で、はいとゴリラに手渡した。
「ああ……癒されるゴリ……! なんてちっさくてモフモフで愛らしい生き物なのか……ウホッ」
ニャンコ化した私の顔を見たエツィーが、にんまりと気持ちの悪い表情をして瞳を閉じる。
そして……なんとこのバカは私にキスをしようと顔を近づけ……!
「シャーッッ! フーッ! フギャアァアアアアアッ!」
「ぐああああああああああ!!」
私はエツィーの両目を思い切り引っ掻いていた。
──こうして、私は魔王軍へ新たな命令を下すことにする。
その内容は……!
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