魔王様はレベル１の勇者に恋をする！ 〜ヤンデレ系こじらせ魔王は愛する勇者のレベルを上げさせない〜

７１話 魔王とノゾッキーの出会い（ノゾッキー視点）

　セッシャはかつて、魔族の間ではヤンチャで有名だった。【覗鬼ノゾッキー爆走愚連隊】というバカ丸出しの名前のチームのリーダーで、気性が荒い仲間を引き連れては、毎日バイコーンで暴走する迷惑なヤツだった。

　そんなセッシャがなぜ、魔王様の直属の配下たる四天王になってしまったのか。

　答えは簡単、セッシャたちは全員叩きのめされたのだ。

　しかも魔王様一人に。

　話はだいぶ前に遡るが、魔族たちはセッシャたちのせいで夜も眠れない、夜中に子どもが起きちゃうといった問題を抱えていたらしい。

　とはいえ、ツッパることがセッシャの生きがいだったから、そんなことは気にしていなかった。

　そんなある日の夜だ。

　一人、この問題を解決しようとセッシャたち【覗鬼ノゾッキー爆走愚連隊】を呼びつけて注意してきたのが、目の前の魔王ヨーケス・ブーゲンビリア様だった。

　１００はいるセッシャたちは殺気立ち、怒涛の罵声を魔王様に浴びせかける。

「なめてんのかコラ！　お前一人でセッシャたちを相手にできると思ってんのかぁ！？」

　イキり散らすセッシャに、魔王様はこう返事をする。

「お前たちのようなザコは私一人で十分だ。大人数だからといって強くなったつもりか？　ほんとうの強さを教えてやるから死ぬ気で来い！　戦ってやる！」

　そう言って、両手に魔力を込めた魔王様はセッシャをまっすぐに見据えた。

　そして始まる大乱闘……魔王様の魔法と格闘術にバタバタと倒れていくセッシャたち。

　そして、大人数相手にも関わらず無傷で立っている魔王様の姿を見たセッシャは、弱々しくこう言った。

「セ……セッシャの負けだ。あんたには勝てない」

　すると魔王様はこう言った。

「その割にはお前、何度も立ち上がり私に向かってきたな。カッコいいなお前。気に入った、私の下で働け。四天王の座をくれてやる」

「は？　あ、あんた一体何モンなんだ？」

　へたりこんでいるセッシャは魔王様を見上げて言う。すると魔王様は平然と言ってのけた。

「私か？　私はそのうち魔王になる男だ。私と一緒に来い、お前に覚めない夢を見させてやる」

　衝撃的で、クールだった。まるで雷に打たれたように……って、実際に雷属性魔法を喰らっていたのだけども。

　度胸があり、その強靭な覚悟と尋常ならざる肝の据わり方に、セッシャは男として一目惚れしてしまった。

　おっと、セッシャはビエルと違って、女好きなのだけは言っておく。

　とまぁ、事実『魔王になる』と言ってのけた彼は、ほんとうにあっという間に魔王と呼ばれる存在になったのは驚きだ。


　……──会議室の中、セッシャの配下と通話を終えると、魔導水晶板の画面をふと見る。

　待ち受け画面に設定してあるのは、『覗鬼ノゾッキー爆走愚連隊』改め、【魔王軍爆走愚連隊まおうぐんばくそうぐれんたい】のメンバー全員。

　中央にはイヤイヤそうな顔をして、セッシャが刺繍を入れた特攻服を見に纏う魔王ヨーケス・ブーゲンビリア様。

　そういえばこの時、まだヨーケス様は魔王じゃなかったのに、セッシャはさっそく名前を【魔王軍爆走愚連隊】にしたんだっけ。