性悪な期待はずれは悪党として死ぬよう言われたたけど、嫌です! 最悪な役回りをやめた僕は好きに行きたい場所を探すんだから抱き寄せないでください

迷路を跳ぶ狐

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4.それだけ?

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 僕は、砦の東の方に連れて行かれた。大きな扉の向こうは、ヴァトズフィウズ様たちが使っている寮になっている辺りだ。廊下に並んだ扉は、ほとんどが彼の護衛や彼に近い一族の人たちの部屋のはず。彼にしてみれば一番落ち着く空間だろう。

 だけど……僕にしてみれば、敵の本拠地……

 ヴァトズフィウズ様はずっと何にも話さないし、多分、さぞかし不快な思いをしているんだろう。

 一族から僕がフォルゲソスに手を上げたことを調べろって言われてるみたいだし……
 大事な御令息を傷つけた僕なんか、今にも殺したいくらい恨んでいるかもしれない。

 どうしよう…………
 この人もフォルゲソスに色々吹き込まれて、僕のことを悪党だと信じ込んでいるのかな……

 でも、さっきはフォルゲソスに「絶対に無理」って言ってたし、もしかして、ちゃんと調べてもらえたりしたら、僕がフォルゲソスに何もしてないことが明らかになるかも……

 婚約していた頃に僕に恥をかかされたと主張しているフォルゲソスは、僕が婚約者に酷いことをするクズだと言いふらしまくっているらしい。言ってることのほとんどは嘘だけど、フォルゲソスは名高い伯爵家の次期当主。そいつと家を追い出された僕となら、みんな、フォルゲソスの方を信じるらしい。取り巻きも引き連れて僕をゲスだと喚き散らすあいつのせいで、僕はすっかり悪役だ。

 僕……何もしてないのに。

 家族は家族で、お前みたいなクズはいらないと僕をぶって、フォルゲソスの肩を持つ。元々家族の中でも邪魔者扱いされていた僕だ。誰も僕の言うことなんか信じない。

 このまま寮の部屋に連れて行かれるのかと思いきや、ヴァトズフィウズ様は、奥にあった暗い階段を降りて行く。それについて、魔法の縄も僕を階下に連れて行く。

 縛られたままだと、階段なんて歩きにくい……足を踏み外しそうになりながら、なんとか彼についていく。
 階段の方ばかり見て歩いていたら、急に縄が、僕を引っ張るのをやめた。

 顔を上げれば、先に階段を降りていたヴァトズフィウズ様が、僕に振り向いている。彼はじっと、僕の方を見ていた。

 な、何…………?? 僕、何かした?! まだ何もしてないのに……やっぱり僕を疑っているのか??

 相手の視線が怖い。

 何をされるか分からない。

 もしかしたら、フォルゲソスの言うことを全部信じきって、僕をなぶりものにする気かも知れないんだ。

 相手はずっと大きなフードをかぶっていて、顔は全部見えない。ローブを着込んでいて、体型なんかもよく分からない。その鋭い視線を向けられるだけで、なんだか落ち着かない。

 気分が悪くなりそうだ……もう、今すぐにでも逃げ出したいのに、足はすくんで動かない。

 あれこれ考えないで、そのまま聞いてみるか? 僕をどうするつもりですか? って。

 だけどそんなこと聞いて、恐ろしい答えが返ってきたら……

 立ち尽くしている間、ヴァトズフィウズ様は無言。
 これからどうなるのか分からない恐怖に襲われ続けた僕は、ついに震えながら口を開いた。

「…………あっ……あの…………僕のことっ…………ど、どうするつもり、ですか……?」

 怯えながら聞く。

 すると、ヴァトズフィウズ様は、思ったより優しく、「話を聞くだけだ」って言って、また僕に背を向けて歩き出した。
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