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5.油断するとでも思っているのか?
しおりを挟む話を聞くだけ……?
聞くだけなら、そんなにひどいこと、しない?
そんな、小さな希望が湧いてくる。
そんな風に思わないと、恐怖で動けなくなりそう……
怯えながら縄に連れて行かれる僕は、ヴァトズフィウズ様について、奥にあった扉をくぐった。
その向こうは、暗い廊下だった。そしてどう考えても地下牢にしか思えないものが並んでいるように見えるのだが。
ヴァトズフィウズ様は廊下を歩いて、最後の扉を開けて、中に入っていく。
そこは、狭い部屋だった。地下だからか? 息苦しいくらいだ。
先にその部屋に入って行ったヴァトズフィウズ様が、壁にあった照明に魔法で明かりを灯す。
すると、まだ薄暗いけど、部屋の様子が露わになった。
壁にかけられているのは人を拘束ための鎖や枷で、近くの台のようなものは、椅子かベッドかと思いきや、人をそこに寝かせて縛り付けるための枷が付いている。
縄や鞭、剣や斧、槌なんかの不気味な凶器が並んでいて、壁の端に並ぶのは、人を痛めつけるための拷問器具…………もう明らかに拷問部屋じゃないか!!
僕は、落胆した。
なんだ……
少し期待なんかしたりして、僕って本当に馬鹿だな……少しくらい、話を聞いてもらえるんじゃないかって思ったりして……
この人だって、フォルゲソスの一族と懇意にしている一族の一人。しかも、フォルゲソスに手を上げた僕のことを調査しろって言われてるんだ。
彼らにしてみれば、いずれ領地を背負って立つフォルゲソスは重要人物。そのフォルゲソスに手を上げた僕は、許せない奴なんだろう。フォルゲソスに何かあったら、ヴァトズフィウズ様の一族だって困るんだから。
それで僕に、なんでフォルゲソスに手を上げたのか聞きにきたのか……
この、どれだけ泣き叫んでも誰も来ない地下の部屋で、たっぷり僕に報復をしながら聞き出すつもりなんだ。
よく考えてみたら、フォルゲソスの一族と仲がいい侯爵家の御令息が帰ってきたんだぞ。僕をなぶりものにしたい大貴族が一人増えたんだから、僕はもっと警戒しなきゃ。
そう思い直すけど、なんだか突然、疲労感が増す。疲れてる場合じゃないのに……
「おい」
声をかけられて、僕は飛び退いた。いつのまにか、僕を縛っていた魔法の縄は消えている。魔力も、封じられたかと思いきや、全くそんなことなった。
僕なんか、魔力があっても簡単に抑え込めると思っているのか?
舐めるなよ……確かに、体格差はある。相手は顔も体もフードとローブで隠しているけど、それでも、みれば分かる。体力でも腕力でも、僕はこの人に敵わない。
それでも、僕にはまだ魔力がある。
僕は、体を魔力で強化してそいつから離れると、そばにあった不気味な枷のついたベッドの上で、魔法で短剣を作って、構えた。
どこからでも来い!! 返り討ちにして逃げてやる!!
けれどヴァトズフィウズ様は、こっちに振り向いてキョトンとした顔をしている。
変な演技しやがって。そんな顔をして、僕をどうやって拷問するか、考えてるんだ。
どうせ、全部正直に話したところで無駄だろう。何を言っても何も聞いてもらえずに、ずっと痛めつけられてきたんだ。今さら、警戒なんて解くもんか!
けれど、ヴァトズフィウズ様はいきなり僕に背を向ける。
油断させる作戦か? そんなことで、僕が剣を下ろすと思うのか?
馬鹿にしやがって…………その背中を蹴り飛ばして、ここから逃げてやる!!
僕は短剣を構えたまま、そいつの背中に飛びかかった。
けれど短剣は突然消えてしまい、何か見えない力に押さえつけられるように、僕は床に伏してしまう。
「くっ……そっ…………!」
何かと思って振り向けば、足に何か絡みついていた。さっき僕を捕らえていた魔法の縄のようなものだ。なんなんだ……魔力の剣は何度やっても消されちゃうし、変な魔法使いやがって……
早く立たないとやられる。慌てる僕だけど、ヴァトズフィウズ様は、僕に振り向いて、そのまま魔法でも撃ってくるかと思いきや、部屋の扉を開けて外に出た。
「少し、そこで待っていてくれ」
「はっ……!?」
待ってろって、ここで!??
驚く僕を置いて、ヴァトズフィウズ様は、部屋を出て行ってしまった。
え……な、なんでこんなところで待たなきゃならないんだ? ていうか、どこ行くんだよ!!
慌てて扉に飛びつく僕だけど、そこにはすでに鍵がかかっていた。
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